監査基準委員会報告書第1号(中間報告)「分析的手続」
(平成4年10月1日)



「分析的手続」

 2 定義
 3 目的
 4 基礎的前提
 5 特徴
 8 種類
10 分析的手続において利用されるデータ
11 監査計画段階における分析的手続
14 監査の実施過程における分析的手続
16 監査の最終段階における総括的吟味に用いられる分析的手続
20 適用


監査基準委員会報告書第1号(中間報告)

「分析的手続」

1.本報告書は、分析的手続の意義を明らかにし、その適用に関する指針を提
 供するものである。

定義

2.分析的手続とは、財務データ相互間又は財務以外のデータと財務データ間
 の矛盾又は異常な変動の有無を検討し、財務情報の合理性を確かめる手続で
 ある。

目的

3.分析的手続は、次の目的のために用いられる。
 (1)監査計画策定に際し、適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の
   範囲の決定に役立たせるため
 (2)監査の実施過程で、監査の効率化を図るため
 (3)監査の最終段階で財務情報を総括的に吟味するため

基礎的前提

4.分析的手続の有効性は、関連するデータに異常な変動がなければ、当該デ
 ータ間に存在する合理的な関係は存続することが予測されるということを前
 提として成り立つ。データ間に存在する関係に影響を与える異常な変動とし
 ては、例えば、事業内容の変化、異常な取引又は事象の発生、会計処理の変
 更、虚偽記載等が挙げられる。

特徴

5.分析的手続は、財務諸表全体に適用する場合も、また取引記録又は財務諸
 表項目に適用する場合も、大局的に、適用対象に重大な矛盾又は異常な変動
 がないかどうかを確かめる手続である。

6.分析的手続は効率的な手続である。すなわち、この手続は相対的に実施が
 容易であり、かつ通常短時間で実施できる。数字を比較したり又は単純な除
 算を行うだけのような簡単な手続の場合もある。また、より複雑な場合でも
 コンピュータを用いることによって容易に迅速に実施できる。

7.分析的手続は、その目的を達成するため、その適用によって表われた結果
 を解釈する必要がある。したがって、分析的手続を適用した結果の判断は、
 被監査会社及び被監査会社が属する業界に深い知識を有し、かつ、監査の経
 験豊かな監査人によって実施されるべきものである。

種類

8.分析的手続は、財務情報の合理性を確かめるための趨勢分析等の手続であ
 るが、その手法としては次のようなものが挙げられる。
 (1)数期間にわたる金額の変化を分析すること。
 (2)財務諸表項目間の比率を算出して比較すること。用いられる比率は、
   経営分析で用いられる指標が中心である。
 (3)財務データ又は財務以外のデータを使って財務諸表に計上されている
   金額の推定値を算出し、その金額と財務諸表に計上されている金額を比
   較すること。

9.分析的手続には、記帳された金額又はそれをもとに算出した比率と監査人
 の算定した推定値との比較もある。推定値は、第10項に述べられているとお
 り種々の情報源をもとに算出される。

分析的手続において利用されるデータ

10.分析的手続において利用されるデータには、種々のものがあり、財務デー
 タのほか財務以外のデータも含まれる。データの例として次のものが挙げら
 れる。
 (1)会社の財務情報
 (2)会社の財務情報と密接な関係にある財務以外の情報(例えば、従業員
   数、平均賃金、労働時間、販売数量等)
 (3)業界又は同業者の情報

監査計画段階における分析的手続

11.監査計画段階における分析的手続適用の目的は、取引記録又は財務諸表項
 目に対する監査証拠を得るために適用すべき監査手続、その実施時期及び試
 査の範囲の立案に役立てるためである。このため、監査計画段階で実施され
 る分析的手続によって重点的に明確にすべき事項は次のとおりである。
 (1)被監査会社の事業内容及び前回監査終了時以降に発生した取引又は事
   象に含まれる問題点
 (2)危険性の高い項目又は領域

12.監査計画段階における分析的手続は、一般的に財務諸表等総括的に集約さ
 れたデータを用いて行われる。しかしながら、分析的手続の内容、適用時期
 及び範囲は、被監査会社の規模、事業の複雑さの程度によって異なる。分析
 的手続の適用方法は、監査人がそれらの点を勘案して決定する。

13.監査計画段階における分析的手続では、多くの場合、財務データのみが用
 いられるが、関連する財務以外のデータが用いられる場合もある。例えば、
 従業員数、売場面積、生産数量等が、分析的手続の目的達成に役立つことも
 ある。

監査の実施過程における分析的手続

14.監査は効率的に実施されなければならない。監査の実施過程において、分
 析的手続を適用することにより、証憑突合、帳簿突合、計算突合等の他の監
 査手続の適用範囲を縮小することができる。

15.分析的手続の結果のみによって、財務諸表項目に重要な虚偽記載がないと
 結論付けることには慎重であるべきであり、監査人の判断により他の監査手
 続の適用によって監査証拠を補強することが必要である。

監査の最終段階における総括的吟味に用いられる分析的手続

16.監査の最終段階における総括的吟味に用いられる分析的手続の目的は、財
 務諸表の適否に関する監査人の意見表明に合理的な基礎を与えるに足る十分
 な監査証拠を入手したかどうかについての監査人の検討に役立てることにあ
 る。

17.総括的吟味には、一般的に財務諸表及びその注記の詳細な検証並びに監査
 計画又は監査実施過程において明らかにされていた異常な項目又は関係に対
 して入手した証拠の十分性及び予め明らかにできなかった異常な項目又は関
 係の吟味も含まれる。

18.総括的吟味の結果、監査手続の追加が必要であると監査人が判断した場合
 は、監査手続を追加して実施することになる。

19.監査の最終段階における総括的吟味に用いられる分析的手続は、特に被監
 査会社について深い知識を有し、かつ、監査について広範な知識と豊かな経
 験を備えた監査人によって実施されるべきものである。

適用

20.本報告書は、平成四年四月一日以後開始する事業年度に係る監査から適用
 する。ただし、本報告書の発効前に実施した監査手続についてはこの限りで
 ない。

21.本報告書は、平成四年十一月一日に発効する。


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