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3.譲渡所得



3.1.譲渡所得課税

1.譲渡所得課税
2.みなし譲渡所得課税
3.みなし譲渡について論じなさい。


3.2.譲渡所得と他の所得の区別

1.事業所得と譲渡所得の区別について
2.譲渡所得と不動産所得の区別について
3.譲渡所得と不動産所得の区別について


3.3.負担付贈与.

1.負担付贈与はみなし譲渡となるか
2.負担付贈与はみなし譲渡にあたるか否か
3.負担付贈与はみなし譲渡となるか


3.4.固定資産の交換


1.固定資産の交換についての課税上の取扱について述べよ。
2.固定資産の交換についての課税上の扱い


1.譲渡所得課税



1.譲渡所得課税 

租税法 金子宏 197頁

譲渡所得の定義

資産の譲渡による所得を言う(所得税法33条1項)。

譲渡所得の趣旨

所有資産の価値の増加益たるキャピタルゲインに対する清算益課税である。譲渡所得に対する課税は、資産が譲渡によって所有者の手を放れるのを機会に、その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするもの

資産の意義

譲渡可能な財産権を全て含む概念
動産・不動産・借地権・無体財産権・許認可によって得た権利や地位
譲渡の意義
有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む概念
売買・交換・競売・購買・収用・物納・現物出資

譲渡所得の分類上の基準

所有者の意図によらない外部条件の変化に起因する資産価値の増加

譲渡所得の事例

(1)借地権の設定にあたって支払いを受ける権利金の額が土地の価額の2分の1を超える場合 は、借地権の譲渡性の有無にかかわりなく一律に譲渡所得とする(所得税法33条1項括 弧枠内、所得税施行令79条)。
(2)離婚にあたっての慰謝料としての財産の移転は、その財産の範囲内で慰謝料債務を消滅さ せるから、その財産の時価相当額の対価による資産の譲渡があったと解される(東京地判 平成3年2月28日判決)。
(3)財産分与としてなす財産の移転は、実質は夫婦共有財産の分割であって、資産の譲渡には 含まれないと解される(百選第三版66頁)。
(4)債務不履行による担保財産の競売又は債権者への帰属の時に資産の譲渡があった場合は、 売り主が取り戻し権を喪失したときに資産の譲渡があったものと解すべき
(5)保証債務を履行するために行う資産の譲渡も、資産の譲渡に含まれるが、その履行に伴う 求償権の一部または全部を行使することができない場合は、その行使できない金額はなかっ たものとみなされる(所得税法64条2項)。


資産の譲渡から除外される譲渡所得(所得税法33条2項)

(1)棚卸資産の譲渡による所得
(2)準棚卸資産の譲渡による所得税法
政令では、不動産所得・山林所得・雑所得を生ずべき業務に係る棚卸資産(所得税法施 行令81条)
ex.畳表など不動産所得の起因となる業務における補修用の貯蔵品
(3)営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得
(4)山林の伐採又は譲渡による所得



2.みなし譲渡所得課税 

租税法 金子宏 197 頁

譲渡所得の定義

資産の譲渡による所得を言う(所得税法33条1項)。資産とは譲渡可能な財産権を広く含む概念であり、譲渡とは有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む概念。

譲渡所得の趣旨

所有資産の価値の増加益たるキャピタルゲインに対する清算益課税である。譲渡所得に対する課税は、資産が譲渡によって所有者の手を放れるのを機会に、その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするもの

収益として未実現のキャピタルゲインに対する課税

譲渡所得課税は、原則として、収入として実現したキャピタルゲインに対してのみ課税するが、例外的に、一定の無償譲渡または著しく低い対価による法人への譲渡があった場合、時価による譲渡があったものとみなしている(所得税法59条1項)。
 著しく低い対価による法人への譲渡
資産の譲渡時における価額の2分の1に満たない金額

みなし譲渡所得課税

法人に対する贈与、限定承認にかかる相続、法人、個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係る遺贈、または、著しく低い価額の対価として法人に対して譲渡された資産について、その時における時価に相当する金額により、その資産の譲渡があったとみなし、譲渡所得を計算することにしている(所得税法59条1項)。
但し、本来ならば全てのみなし譲渡所得について、公平負担の観点からは同様の課税がなされるべきであるが、納税者の理解の状況に相俟って、その範囲は現行法上限定されている。

みなし譲渡所得課税の根拠

(1)包括的所得概念に基づく現代の所得税法において、租税公平主義の原則から、担税力を増 加させる経済的利益に対しては他の所得と同様に課税の対象とすべき。
(2)対価の受け入れがない場合にも課税するという実現主義の例外が認められるのも、利益が 実現されるまで課税が無制限に延期される恐れがあるから。



3.みなし譲渡について論じなさい。

まず、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得を言う(所得税法33条1項)。そしてその本質は、所有資産の価値の増加益たるキャピタルゲインである。譲渡所得に対する課税は、資産が譲渡によって所有者の手を放れるのを機会に、その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである。

ここに資産とは、譲渡可能な財産権を意味し、譲渡とは、有償であると無償であるとを問わず所有権を他人に移転することであると解される。

しかし、資産の譲渡において対価の受け入れがない場合、これに対する課税に対して、実際に対価がないのに課税ができるかどうかが問題となる。

このような譲渡所得に対する課税は、包括的所得概念に基づく現代の所得税法において、租税公平主義の原則から、担税力を増加させる経済的利益に対しては他の所得と同様に課税の対象とすべきであるからであり、また、対価の受け入れがない場合にも課税するという実現主義の例外が認められるのも、利益が実現されるまで課税が無制限に延期される恐れがあるからである。

そこで、法人に対する贈与、限定承認にかかる相続、法人、個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係る遺贈、または、著しく低い価額の対価として法人に対して譲渡された資産について、その時における時価に相当する金額により、その資産の譲渡があったとみなし、譲渡所得を計算することにしている(所得税法59条1項)。この譲渡所得に対する課税がみなし譲渡所得課税である。

但し、本来ならば全てのみなし譲渡所得について、公平負担の観点からは同様の課税がなされるべきであるが、納税者の理解の状況に相俟って、その範囲は現行法上限定されている。


2.譲渡所得と他の所得の区別


1.事業所得と譲渡所得の区別について

事業所得とは、諸事業によって生ずる、資産勤労結合所得である(所得税法27条1項)。ここにおいて事業とは、自己の計算と危険に基づき営利を目的として対価を継続的に得る経済的活動であるが、事業と非事業を区分する基準は必ずしも明確ではなく、諸般の事情に基づき社会的通念に従って判断する必要がある。
譲渡所得とは、資産の譲渡による所得を言う(所得税法33条1項)。その本質はキャピタル・ゲイン、即ち所有資産の価値の増加益であって、譲渡所得に対する課税は、資産が譲渡によって所有者の手を放れるのを機会に、その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである。ここにおいて資産とは、譲渡可能な財産権を全て含む概念であり、譲渡とは、有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を意味すると解する。

事業所得と譲渡所得との区別の基準は、前者が人的経営努力によって獲得された収益としての経済的性格を持つのに対し、後者が主として資産の需給関係によって生じた値上がり分としての性格を持ち、人的経営努力としての性格を持っていないこと、である。


2.譲渡所得と不動産所得の区別について 

 租税法 金子宏 194頁  百選第三版 50頁
不動産所得の定義

不動産、不動産の上に存在する権利、船舶又は航空機の貸付によって得られる資産性所得である(26条1項)。

譲渡所得の定義・趣旨

資産の譲渡によって得られる所得を言う(所得税法33条1項)。資産とは、譲渡性のある財産権を全て含む概念であり、譲渡とは有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む概念である。
その本質は所有資産の増加益たるキャピタル・ゲインに対し、資産が譲渡によって所有者の手を放れるのを機会に、その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである。

両者の区別にかかわる問題事例

借地権等の設定の対価として土地所有者が支払いを受ける権利金について、両者のいずれに属するかという範囲の問題(最高裁昭和四十五年10月二十三日第二小法廷判決)

権利金の性質
通常、借地権の設定の対価として得られる権利金は、不動産の上に存する権利の貸付にあたり不動産所得であると解される。
しかし借地権等の存在期間が長期で、その金額が土地の更地価額の極めて高い割合にあたり、それが契約上独立の財産権として譲渡性を認められている場合、所有権の権能の一部を譲渡するものとなるから、権利金は譲渡所得の性質を有すると解される。

権利金と賃料の関係
ただし、権利金がいかに高額であっても、賃料と権利金が相互補完関係にある場合、権利金が賃料の前払い的性質を有するならば、不動産所得の性質を失うものではない。

現行法上の取扱
借地権等の設定に伴い、通常の場合の金銭の貸付の条件に比し特に有利な条件による金銭の貸付その他経済的利益を受ける場合には、これは権利金に含まれ、権利金の額が土地の価額の10分の5を超える場合は、その権利金は譲渡所得とみなされる(所得税法33条1項、所得税法施行令79条1項、80条)。

2分の1に関する現行法上の解釈

(1)このような権利金が、その性質上全て譲渡所得に含まれると言うわけではなく、権利金が地価の2分の1を超えるような多額に上る場合、それを不動産所得として扱うと、高い税率が適用され、権利金の授受を行わず地代を高額とする場合に比較して、税負担が重くなるため、それを緩和する必要性があるためである(金子宏 租税法  P194)。
(2)土地の地価の2分の1を超える場合の権利金の性質は、資産性は充足し得たとしても譲渡性をかく(村井正 百選第二版 P63)
(3)譲渡所得とするに相応しい所有権の権能の一部を譲渡したと評価しうるものに限定したとみたれ、許容された立法裁量の範囲を超えないと解される(小松芳明 「借地権課税と租税法律主義」)



3.譲渡所得と不動産所得の区別について 

不動産所得とは、不動産、不動産の上に存在する権利、船舶又は航空機の貸付によって得られる資産性所得である(26条1項)。

譲渡所得とは、資産の譲渡によって得られる所得を言う(所得税法33条1項)。その本質は所有資産の増加益たるキャピタル・ゲインに対し、資産が譲渡によって所有者の手を放れるのを機会に、その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである。ここにおいて資産とは、譲渡性のある財産権を全て含む概念であり、譲渡とは有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む概念である。
例えば、借地権等の設定の対価として土地所有者が支払いを受ける権利金について、両者のいずれに属するかという範囲の問題が生ずる。

通常、借地権の設定の対価として得られる権利金は、不動産の上に存する権利の貸付にあたり不動産所得であると解されるが、借地権等の存在期間が長期で、その金額が土地の更地価額の極めて高い割合にあたり、それが契約上独立の財産権として譲渡性を認められている場合、所有権の権能の一部を譲渡するものとなるから、権利金は譲渡所得の性質を有すると解される。

ただし、権利金がいかに高額であっても、賃料と権利金が相互補完関係にある場合、権利金が賃料の前払い的性質を有するならば、不動産所得の性質を失うものではない。
但し、現行法上、借地権等の設定に伴い、通常の場合の金銭の貸付の条件に比し特に有利な条件による金銭の貸付その他経済的利益を受ける場合には、これは権利金に含まれ、権利金の額が土地の価額の10分の5を超える場合は、その権利金は譲渡所得とみなされる(所得税法33条1項、所得税法施行令79条1項、80条)。

このような現行法上の取扱は、このような権利金が、その性質上全て譲渡所得に含まれると言うわけではなく、権利金が地価の2分の1を超えるような多額に上る場合、それを不動産所得として扱うと、高い税率が適用され、権利金の授受を行わず地代を高額とする場合に比較して、税負担が重くなるため、それを緩和する必要性があるためである。


3.負担付贈与



1.負担付贈与はみなし譲渡となるか

租税法 金子宏 199頁  百選第三版 65頁 60頁
譲渡所得の意義・趣旨

資産の譲渡による所得を言う(所得税法33条1項)。資産とは譲渡可能な財産権を広く含み、譲渡とは有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利を移転することを広く含む概念であると解する(判例同旨)。
譲渡所得に対する課税の本質は、譲渡によって資産が所有者の手を放れるのを機会として、保有期間中の資産の値上がり益たるキャピタルゲインを清算して課税しようとするものである。

みなし譲渡

法人に対する贈与、限定承認に係る相続、法人に対する遺贈、個人に対する包括遺贈で限定承認に係るもの、法人に対する低額譲渡の場合において、その資産の時価をもって譲渡があったとみなし、譲渡所得を計算する規定(所得税法59条1項)。

現金等の収入のない場合のキャピタルゲインに対する課税

包括的所得概念において、人の担税力を増加させる経済的利益は所得を形成すると考えられ、他の所得と同じであれば、租税公平主義に基づき同様の負担を求めるのが適切である
所得は現金化を伴わない取引によっても実現されると解される

負担付贈与の定義

贈与契約の一部として受贈者に一定の給付義務を負担させる契約

負担付贈与はみなし譲渡であるか否か

所得税法上問題となるのは個人から個人への負担付贈与と個人から法人への負担付贈与の場合であるが、33条に言う「譲渡」の意義、60条1項に言う「贈与」の意義および収入すべき金額の測定原則が問題となる。

個人から法人への負担付贈与の場合

みなし譲渡にあたる
個人から法人への負担付贈与の場合、59条1項1号の言う「贈与」に該当し、所得税法59条1項(東京高裁判決昭和60年12月17日判決)により、負担の経済的利益によって譲渡の対価の額が測定されると解される。

根拠

所得税法59条1項の趣旨は、法人に対する無償譲渡又は低額譲渡について時価で譲渡があったものとして譲渡を擬制し、受贈者の受ける経済的利益によって収入金額を測定すべきとする趣旨である。

負担による経済的利益は、合理的経済人であれば目的物の時価と取得費の差額と一致すると考えられることから、負担による経済的利益を所得税法59条1項による対価の額とみなしてもよいと考えられる。

個人から個人への負担付贈与の場合

個人間で行われる負担付贈与が所得税法60条1項に言う「贈与」に含まれるか否か

借用概念についての解釈基準

借用概念について、租税法上、課税要件規定の中に取り込んでいる場合は、法的安定性ないし予測可能性の観点から同意義に解するのが望ましいが、別意に解するのが明文もしくはその趣旨から明らかな場合は、別意に解するのが適当である(租税法 金子宏 113頁)。

所得税法60条1項の制度趣旨

所得税法59条1項の規定により、みなし譲渡課税が行われない場合に、受贈者、相続人に前所有者のキャピタルゲインに対する課税を引き継がせる意味で、資産の取得価額および取得時期を引き継ぐ規定をおき、例外的に課税の繰り延べを認めたものである。

課税繰延の根拠

無償譲渡や低額譲渡の場合の譲渡所得課税に対する一般の理解が乏しい
一般に個人間の贈与は親族間で行われることが多く、課税の繰延を認めても問題が少ない

60条1項は受贈者に実際の収入がないような場合において例外的に課税の繰延を認めた措置であり、制度趣旨から受贈者に収入すべき金額などの経済的利益が発生する場合、60条1項にいう「贈与」にはあたらない解され、経済的利益の存する負担付贈与を含まないと解する(最高裁昭和六十三年七月十九日第三小法廷判決)。

個人間で行われる負担付贈与の譲渡対価の金額の測定

33条に言う「譲渡」とは有償であると無償であるとを問わず資産を移転させる一切の行為を言うから(判例同旨)、負担付贈与は33条に言う譲渡にあたる。
対価の測定は、法人に対するみなし譲渡の対価の測定基準である59条1項の適用はないのであるから、収入の金額を測定する一般原則たる33条によって測定され、経済的利益たる負担の額によって計算されることになる。従って、みなし譲渡にはあたらない


2.負担付贈与はみなし譲渡にあたるか否か

譲渡所得とは、資産の譲渡によって生ずる所得をいう(所得税法33条1項)。ここにおいて資産とは譲渡可能な財産権を広く含み、譲渡とは有償であると無償であるとを問わず、所有権その他の権利を他人に移転することを広く含む概念であると解する(判例同旨)。譲渡所得に対する課税の本質は、譲渡によって資産が所有者の手を放れるのを機会として、所有期間中の資産の増加益たるキャピタルゲインを清算して課税しようとするものである。

次にみなし譲渡とは、法人に対する贈与、限定承認にかかる相続、法人、個人に対する限定承認にかかる遺贈、法人に対して著しく低い対価で譲渡を行った場合、についてその時における価額に相当する金額によりその資産の譲渡があったものとみなし、譲渡所得を計算する規定である(所得税法59条)。これらの現金収入などがない場合のキャピタルゲイン課税について、その課税に対し争いがあるが、包括的所得概念を基礎とした場合、所得とは人の担税力を増加させる経済的利益を広く含む概念であり、現金収入がない場合においても所得を形成すると考えられる(所得税法36条1項2項)。従って、他の所得と同一であるならば、租税公平主義に基づき同様の負担を求めるのが適切であると考えられる。しかしながら、実際上、現金収入のない場合の譲渡所得課税に対する一般の理解が乏しいなどの理由から、現金収入などのない場合の譲渡所得課税は、59条に定める事例に限定されている。

次に、負担付贈与とは、贈与契約にあたり、受贈者に一定の給付義務を負担させる契約をいう。この負担付贈与がみなし譲渡とみなせるかどうかについて、所得税法上問題となるのは、個人から法人への負担付贈与の場合、および個人から個人への負担付贈与の場合である。

まず、個人から法人への負担付贈与の場合を考える。この場合、負担付贈与は59条1項にいう「贈与」に該当し、受贈者の受ける負担の経済的利益に対して、その負担の経済的利益によって譲渡資産の対価が測定されると解する(判例同旨)。なぜならば、59条1項の趣旨は、法人に対する無償譲渡または低額譲渡について、時価で譲渡があったものとして譲渡を擬制し、受贈者の受ける経済的利益によって収入金額を測定すべしとする趣旨であり、また、受贈者が受ける負担による経済的利益は、経済的に合理的な取引であれば、譲渡資産の時価と取得費の差額と一致すると考えられることから、負担による経済的利益を所得税法59条1項による譲渡資産の対価の額とみなしてもよいと解されるからである。従って、この場合の取引はみなし譲渡にあたるといえる。

次に、個人から個人への負担付贈与の場合を考える。この場合において、個人間で行われる負担付贈与が所得税法60条1項にいう贈与にあたるか否かが問題となる。まず、ここにいう贈与は借用概念であるが、借用概念の解釈の方法として、明文上または法の趣旨から課税要件規定が明確である場合は、法的安定性ないし予測可能性の観点から元の概念と同意義に解するのが望ましいが、別意に解するのが明文もしくはその趣旨から明らかである場合は、別意に解するのが適当であると解する。まず、所得税法60条1項の趣旨は、所得税法59条に定めるみなし譲渡による課税が行われない場合、贈与者、相続人等に前所有者のキャピタルゲインに対する課税を引き継がせる意味で、資産の取得価額および取得時期を引き継ぐ規定をおき、課税を繰り延べるということを認めた趣旨である。これは、無償譲渡や低額譲渡において現金収入がない等の場合における譲渡所得課税に対する理解が乏しいこと、および個人間の贈与は親族間で行われることが多く、課税の繰延を認めても問題が少ないことを根拠とする。

このような趣旨から、負担付贈与が60条1項に言う贈与にあたるかどうかを考えると、60条1項は、受贈者に実際の収入がないような場合において例外的に課税の繰延を認める措置であり、制度趣旨から受贈者に収入すべき金額などの経済的利益が生ずる場合、この適用は受けないと解される。従って、60条1項に言う贈与には負担付贈与を含まないと解する(判例同旨)。次に、33条に言う譲渡とは、有償であると無償であるとを問わず譲渡可能な資産を移転させる一切の行為を言うことから(判例同旨)、負担付贈与は33条に言う譲渡に含まれる。従って、対価の測定は33条によって受贈者の受ける負担の経済的利益に行われ、59条1項の適用はないのであるから、この場合はみなし譲渡にあたらないと解する。


3.負担付贈与はみなし譲渡となるか

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得を言う(所得税法33条1項)。ここにおいて資産とは譲渡可能な財産権を広く含み、譲渡とは有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利を移転することであると解する(判例同旨)。
そして、譲渡所得に対する課税の本質は、譲渡によって資産が所有者の手を放れるのを機会として、保有期間中の資産の値上がり益たるキャピタルゲインを清算して課税しようとするものである。

しかし、無償で資産を譲渡する場合のように、対価を受け入れていない場合に対しても課税することに対して議論がある。

このような譲渡所得に対して課税するのは、包括的所得概念において、人の担税力を増加させる経済的利益は所得を形成すると考えられ、他の所得と同じであれば、租税公平主義に基づき同様の負担を求めるのが適切であるからであり、また、利益が実現するまで課税しないとすると、利益が実現されるまで課税が無制限に繰り延べられるという可能性があることから、適切な課税機会に課税がなされるべきであると解する。

そこで、法人に対する贈与、限定承認に係る相続、法人に対する遺贈、個人に対する包括遺贈で限定承認に係るもの、法人に対する低額譲渡の場合において、その資産の時価をもって譲渡所得を計算する規定が設けられている(所得税法59条1項)。これがみなし譲渡である。

次に、負担付贈与とは、贈与契約の一部として受贈者に一定の給付義務を負担させる契約を言う。

この点に関して、負担付贈与が所得税法60条1項に言う「贈与」に含まれるか否かにつき争いがある。

民法上の贈与は負担付贈与を含む概念であることから、租税法上、これら借用概念は同意義に解した方が望ましく、租税法上もこれを含むと解する説がある。
しかし、借用概念について、租税法上、課税要件規定の中に取り込んでいる場合は、法的安定性ないし予測可能性の観点から同意義に解するのが望ましいが、別意に解するのが明文もしくはその趣旨から明らかな場合は、別意に解するのが適当であると解する。

次に、所得税法60条1項の制度趣旨はみなし譲渡課税が、無償譲渡や低額譲渡のように実際上担税力がない場合に対する一般的な理解が乏しいこと、また個人間の贈与は親族間で行われることが多いことから課税の繰り延べを認めても問題が少ないと考えられ、本条は個人間でみなし譲渡課税が行われない場合の課税の繰り延べを認めたものであると解されることから、ここにいう贈与とは受贈者に経済的利益が発生しない場合をいうと解され、経済的利益の存する負担付贈与を含まないと解する。

従って、負担付贈与の場合、負担は所得税法59条2項にいう対価に含まれると解され(判例同旨)、みなし譲渡とは、無償譲渡又は低額譲渡についても、譲渡があったものとみなし、受贈者の受ける経済的利益によって測定すべきとする趣旨であることから、みなし譲渡にあたると解される。けだし、負担による経済的利益は、合理的経済人であれば譲渡資産の時価と取得費の差額と一致すると考えられるからである。

4.固定資産の交換



1.固定資産の交換についての課税上の取扱について述べよ。

水野忠恒「土地税制の手法ー買換・交換の特例を中心に」租税法研究18号71頁 
租税法 金子宏 199頁
固定資産の交換の定義

固定資産の交換とは、土地、家屋、営業用財産など広い意味での固定資産を互いに交換することをいう。

譲渡所得の一般的な所得税法上の取扱

一般に資産を譲渡するとき譲渡所得が発生する(所得税法33条)。資産とは譲渡可能な財産権を広く含む概念であり、譲渡とは有償無償を問わず所有権その他の権利を移転する場合を広く含むと解される(判例同旨)。その趣旨は、所有期間中の所有資産の増加益たるキャピタル・ゲインに対し、当該資産が所有者の手を離れるのを機会としてその清算益に対し課税するものである。
従って、固定資産の交換においても原則として譲渡所得が発生すると解され、譲渡資産の対価は取得資産の時価相当額が総収入額であると解される(所得税法36条1項2号)。

固定資産の交換における譲渡所得の特例たる所得税法58条と租税特別措置法の関係

租税特別措置法における固定資産の交換における譲渡所得の特例

 土地税制の一環として政策目標を達成するための特別措置
    
目的

1.土地の供給と有効利用の促進
2.土地の仮需要の抑制
3.開発利益の吸収
    
規制
 
1.居住用財産の買換の特例(租税特別措置法36条の6)
2.大規模な住宅造成事業の施行区域内の土地などの造成のための交換等(租税特例法       37条の7)
3.特定の事業用資産の買換又は交換(租税特別措置法37条の4)
4.既成市街地等内の土地などの中高層耐火建築物等の建設のために買換及び交換 (租税特別措置法37条の5)





所得税法58条の固定資産の交換の譲渡所得の課税の特例

個人が一年以上有していた土地、建物等の固定資産を、他の者が一年以上有していた固定資産と交換し、その交換により取得した資産をその交換により譲渡した資産の譲渡の直前の用途と同一の用途に供した場合には資産の譲渡がなかったものとみなす

趣旨
現金化を伴わない取引によっても所得は実現されうると解されるが、財産の交換の場合は、物理的に資本と増加益たる所得は分離されない。従って評価上の困難が生ずるため、立法上の措置として同一種類の資産の交換ならびに同一の用途で使用される場合は、経済的にみて投資が形式的にのみ変化するものであり、投資が継続しているとみられるため、課税が繰り延べられるとしたものである。

所得税法58条の適用要件

譲渡及び取得される資産の種類の同一性
土地については所有権のみならず借地権も含む

同一の用途
交換の当事者それぞれについて認められればよい

所得税法58条の固定資産の交換の譲渡所得の課税の特例の問題点

「買換」と「交換」の区別

買換の場合、資産の増加益が一時的にも現金化されうる

問題となる事例

△個人が不動産業者に土地を売却するとともに不動産業者より別の土地を購入する場合、財 産を譲渡するものが希望する財産を同時に確定しうる取引であることから交換取引として 構成しうる
△不動産業者が適当な土地を第三者から購入し、それを個人の所有する土地を交換する場合、 58条「交換のため取得したものを除く」とする規定によりこれを排除するためには不動 産業者が土地を住宅建設のため取得したのか交換のため取得したのかという動機を明らか にする必要があり、実際上の困難がある。

租税特別措置法上の特例と58条の問題点

買換取引を固定資産の交換取引と構成することによる問題
居住用財産の買換の特例や適用範囲の限定された事業用資産の買換・交換の特例を58条の 固定資産の交換の譲渡所得の課税の特例に適用することが可能となる
58条の濫用により土地政策の目的を阻害する恐れがある。
従って、58条に言う「同用途」の要件を今後吟味する必要があると言える。



2.固定資産の交換についての課税上の扱い

所得税法58条において、居住者が各年において1年以上有していた建物・土地などの固定資産を他のものが1年以上有していた建物・土地等の固定資産と交換し、その交換により取得した資産を、譲渡した資産と同用途に供した場合には資産の譲渡がなかったものとみなし、固定資産の交換の場合における課税の繰延が認められている。

ここにおいて、固定資産の交換により譲渡所得が実現するか否かが問題となる。譲渡所得とは、資産の譲渡によって生じた所得(33条1項)。その本質は所有期間中の当該資産の増加益に対し、所有者の手を放れるのを機会に清算し、その清算益に対して課税することである。そして、包括的所得概念において、人の担税力を増加させるものは原則として全て所得を構成し、また他の所得と同様の所得であれば同様の課税を行うのが租税公平主義に妥当する。また、現金等の収入がない場合のキャピタルゲインについても、他の所得同様、人の担税力を増加させるのであるから、所得は実現すると解される。

固定資産の交換によっても所有期間中の増加益が発生しているのであれば所得は実現していると解されるが、交換の場合、物理的に資本と所得は分離されず、また評価の困難が生ずる。そこで立法上、財産が同種の財産と交換される場合には、投資の形態が形式的にのみ変化するものであり、投資が継続しているものと見て課税の繰延を認めたのである。従って、財産の投資形態の変化に対する障害を除去するために採用された規定であり、租税優遇措置ではないと解する。

次に、58条の適用を受けるための要件は、@同一の資産の交換であること、及びA資産の用途が同一であること、といった経済的実質から投資の継続が必要であると考えられる。

58条と近似する効果を与えるものとして、1.土地収用等の場合の特例、2.事業用資産の買換・交換の特例、3.居住用財産の買換・交換の特例という租税特例法上の買換・交換の特例がある。これらの特例は、@土地の供給と有効利用の促進、A土地需要、特に仮需要の抑制、B開発利益の吸収など、土地政策上の目標を推進するための措置である。

これらの土地政策上の一定の効果を狙った租税特別措置が、58条によってその政策上の効果を回避するように取引を構成するという恐れがあり、その関連性を考慮する必要がある。

土地収用等の場合は、個人の自由な意思に基づかない場合の財産の譲渡の場合もあり、租税特別措置上の優遇措置であるというよりも税制上の救済の性格を有すると解される。しかし、土地建物等の同種の資産への買換を要件とするのみであり、その用途は問わないし、事業用資産の場合には同種の資産であることも要求されていない。これは、土地政策の目的の関連から考えれば、税制上の救済措置であるとはいえ、58条と同様、投資の継続として必要であると考えられる@同種資産の交換A同種用途への使用という条件が必要であると解される。
次に、居住用財産の買換・交換の特例において、現行の制度では原則的に居住用財産の買換の特例は廃止されている。これは、住宅事情に対する政策的措置として始まったが、課税の公平上もしくは地価高騰の原因の一因となったため原則廃止されたものである。しかし、居住用財産について、取引を土地の買換から固定資産の交換へとプランニングを変更することにより58条の適用を受けようとする動きが見られる。

また、58条の適用要件としての「同一の用途」とは、交換の当事者それぞれについて認められればよいとされるため、例えば、個人については居住用として同一の用途を構成し、不動産業者としては事業用資産として同一の用途に供されている場合のように58条においては資産が居住用であると事業用であるとを問わず認められるため、58条の利益を享受することが可能となりえる場合がある。
ここにおいて買換という取引は、資産の増加益が一時的にも現金化されるという点で交換という取引と異なるのであるが、例えば、個人が不動産業者より土地を売却するとともに不動産業者から別の土地を購入する場合のように、財産を譲渡するものと希望する財産を同時に確定しうる取引について、交換として認められる場合がありえる。

また、58条の「交換のために取得したと認められる場合を除く」という規定は、不動産業者が実質的に仲介するに過ぎない取引を除外する規定であるが、この規定が不動産業者が、土地を住宅建設のため取得したのか、交換のため取得したのかという動機を要件とするものであり、認定上の困難がある。

次に、事業用資産の買換・交換の特例も、土地税制上の目的達成のために設けられたものであり、地域制限等の要件が限定されている。

しかし、居住用財産の買換・交換の場合と同様、事業用資産の買換・交換の取引を58条を適用させることによって、地域制限などの要件を回避することが可能である。

以上のように、所得税法58条は、土地収用等の場合、居住用財産、事業用財産の買換・交換の特例における制限を回避するために利用される恐れがある。
とくに、所得税法58条として構成するためには、投資の継続が認められられねばならないと解されるが、その場合において「同一の用途」の認定が問題となると解される。


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