
Saxton,The effects of partner and relationship characteristics on alliance
outcomes,Academy of Management Journal. 40:443-461 について
(1)内容の要約
企業提携の行動と成果に関する理論はパートナーと提携関係の性格を強調する傾向にあり、総体として二つの問題点があったと言える。一つは、従来の研究はパートナーか提携関係の性格のいずれかを取り上げるのみであって、統合したものがないという点であり、もう一つは、これらの性格が企業提携の成果にいかなる影響を与えたかという点に関する研究がないことである。そこで、この論文では二つの視点を統合し、企業提携の成果に対する要因について4つの仮説を立て仮説検定を行っている。仮説は以下の4つである。
仮説1:提携する会社の評判が提携関係による成果をよく説明しうる。
パートナーの評判とは、経営管理、製品品質、財務状況等に関する提携先の特徴である。資源このような無形の価値は提携先企業に継続的に利益を与えると考えられる。この変数としては、3つのカテゴリーに分けられ、第一として製品の品質(7項目)、経営者(9項目)、財務状況(3項目)に関する提携先パートナーの回答によって評価した。
仮説2:以前に提携関係が存在していたことは、提携関係による成果をよく説明しうる。
最近の実証研究によれば、企業提携のダイナミクスは、パートナー間の信頼、その企業と提携関係を保とうとする傾向、といったものをもたらす提携関係を以前企業が有していたかどうかということと関連があることを示している(Gulati,1995a;
Levinthal & Fichman, 1988; Parkhe, 1993a)。
以前に企業間に提携関係が存在していたことが、提携関係による成果の企業の満足度と明確に関連づけられた研究は未だないが、以前に企業に協力関係が存在していたことは提携関係の成功に影響を及ぼすのではないかと考えられる。広く市場において以前に取引関係があったこととして定義される提携関係は、まず、企業に提携先の企業をよりよく知る機会を与え、企業は企業自身の能力、企業が獲得できる資源、そしてパートナーの動向をよりよく知ることができるようになる。これに加えて、パートナーの信頼関係や相互理解を築くと考えられる。
測定項目としては、2つの企業が、顧客と供給業者、競争相手、又はこれ以外のパートナーとして以前に提携関係を持っていた程度を示す7項目によって測定された。
仮説3:意思決定への関与が、提携の成果をよく説明しうる。
ゲーム理論によれば、投資とは良好な信頼を含む、企業提携への関与を意味する(Parke,1993a)。意思決定の参加を通じた親密な相互関係によって(1)結果の利益は功利的な行動の可能性の認識を減少させること、(2)パートナーの功利的な行動を相手方が感づく可能性、を生み出す。
組織的学習理論によれば、企業は、成文化された知識同様、暗黙の知識を獲得することによって競争上の優位を獲得し、保持しようとする(Hedlund,1994)が、パートナーの知識を適用できる能力は、意思決定過程における緊密な関与を要請する。このような理由から、戦略的意思決定における緊密な相互関与は、それ自体が信頼を築き、知識の適用範囲を広げ、企業提携の成果に対し明確に影響を与えると考えられる。
仮説4:パートナー間の類似性が、提携関係の成果をよく説明しうる。
成功する提携関係は、その提携相手とその企業の能力及び過程が類似、又は関連する程度に比例するといわれる(Hull,Slovinsky,Wharton,&
Azimi, 1988; Westney,1988)。JemisonとSitkin(1986)は、「組織的適合」という概念、及び取引をする前に、それが企業と適合しているかどうか見込みをつけることの重要性を示唆した。即ち、シナジー効果を期待するには、組織は戦略的意思決定に対する類似の企業文化及びアプローチを持つ必要性がある。
組織的学習理論によれば、パートナー間の類似性は、非成文化もしくは成文化された知識を利用することを容易にするため、企業提携行動に影響を与えることを示唆する。提携関係から学習の可能性を獲得するには、知識を応用するための一般的枠組みを持つことが必要である。それ故、パートナー間の類似性が信頼関係を築く助けとなり、また知識の適用を拡張し、提携の成功の可能性を増加させると考えられる。
類似性に関する測定属性は、戦略内容に関するもの、経営管理過程に属するもの、及び企業文化に関するものに区分され、10項目を基礎とする。
以上4つの仮説検定を行った結果、以下のような結論が得られた。
相手企業の評判とその企業との提携による成果において期待される正の相関関係は、相手企業に対する利益があることによって支持される。相手企業の評判が提携の成功と相関しているという事は、相手企業の評判の価値が取引において無視されていないことを意味し、提携の初期の満足度とはあまり明確な相関関係はないということは、提携の利益は時間を経ることによって生じるであろうということを意味していると解される。
以前に提携関係が存在したということは、パートナーヘの長期的な業績とは関係していないが、企業提携の初期の満足度とは関係しているという調査結果が得られた。つまり、同一企業と継続的に提携することは、相互の信頼と相互関与を反映する反面、あまり意味のない提携になってしまい業績に対して悪い影響をあたえてしまう可能性が考えられる。この調査結果は、企業は過去のパートナーと提携し、最初はそれで満足しがちであるが、過去の提携関係は長期的には提携関係が成功することを期待できるわけではないということを意味していると考えられる。
意思決定への参加の程度及び企業提携の業績の間には有為な関係があるということが調査結果により確認できる。これらの変数は企業間の信頼と関与を反映していると推定され、最近の企業提携に関する文献においてかなり注目を受けてきているものである。企業間の信頼関係は現存する研究においては、未だ明確に研究対象とされたものがない。信頼関係を直接測定することの困難さがあるものの、意思決定への相互参加を円滑に行う能力が、企業間の信頼を代替するものであると考えられる。
企業文化や人的資源を含んだ特定の組織上の特徴に関する提携企業間の類似性は、提携の成果とあまり関連がなく、組織プロセスの類似性も提携の初期の満足度とはあまり関連がないという、調査結果が得られている。これらの調査結果は、買収に関する文献において解釈されるように組織的な適合性の重要性や「企業文化の衝突」が提携の可能性に否定的に影響するという一般的な考えが、提携の場合においては適合しないことを示している。これは、製造活動のような戦略的要因おける類似性は、提携自体をやりやすくするかも知れないが、提携の成果に対しては重要でないことを示唆している。つまり、ある程度の類似性は必要であり、パートナーの理解には好ましいが、行き週ぎた類似性は、斬新なものが提携関係にもたらされないため、企業提携の利益を限定してしまうと考えられる。
次に、調査結果を組み合わせてみることによって、企業提携のダイナミクスに関して総合的に考えてみたい。提携による取引を通じて得た知識は、企業にとって有益なものであると見なされるが、知識自体の価値は単なる一つの構成要素であり、その知識を解釈し応用する能力が必要である。経済的意思決定の静的モデルは二つめの構成要素を無視している。最も重要であるのは、資源の価値の組合せの最大化と資源の利用可能性の枠を広げることであると考えられる。
これらの調査結果は組織的学習理論の含意をも有しているかもしれない。企業は信頼しているあるいは彼等を理解していると考えられる、以前の提携相手先との関係を継続する。このような観察は、探求の理論に従っている。新たなアイディアを獲得し、資源の価値に焦点をあてるため、組織はよい評判と技術を有する新たなパートナーを捜さなければならない。この観察は、開発の論理に従っている。開発と探求のバランスを取るため、そして実りある提携戦略を達成するために、個々のパートナーと関係の特徴の構成要素に焦点を当てることは必要ではあるが、それは十分ではない。成功する関係の可能性を増すためには、その二つのバランスこそが重要なのである。
結論
調査結果は、企業提携の初期の満足度はパートナーとの以前の提携関係やパートナー間の類似性を含んだ提携関係の性格によって説明しうるかもしれないが、パートナーと提携関係の性格の要素の複合的要素が、企業提携の継続に対して強い説明力がある。パートナーの評判、意思決定の参加への程度、そしてパートナー間の戦略的類似性は、すべて提携に参加したパートナー企業へ利益をもたらす有為な関係があると判明した。
(2)論文に関する論評について
4つのモデルについて敷衍すると、第一のモデルは、提携先の特徴(即ち、市場での評判、ここでは財務状況、経営管理手腕、製品品質を変数としている)と提携先企業の業績に相関があるかどうかについて調べ、第二のモデルについては、提携先企業との類似性や意思決定への参加度合い、経営管理過程の類似性など提携関係の特徴と、提携先企業の業績に相関があるかどうかについて調べ、第三のモデルについては、提携先の特徴及び提携関係の特徴と、提携先企業の業績に相関があるかどうかについて調べており、最後の第四のモデルについては、提携先の特徴及び提携関係の特徴と、提携関係成立時の満足度との相関を調べている。
結論として、モデル3によれば、提携先企業の業績を説明するものとして、経営管理手腕と製品品質の双方を合わせた経営者-品質の評判の評判変数が説明力を有することが分かり、又モデル4によれば、企業提携の初期の満足度合いを説明するものとして、戦略的類似性が説明力を有しているということが分かる。
そして筆者は、以前提携関係があったか、戦略的に類似している企業とは提携をしやすいということが言えるが、これは長期的な利益に結びつくものではないため、長期的な利益を最大化するという観点から評判の良い新しい企業を探そうという動機が働くのではないか、として企業提携のダイナミクスを説明している。
企業提携について考えてみれば、複数の企業が結びついて単独の企業ではできないことをする企業結合のことを言うと考えられる。そして、提携先の相手企業の拘束性から考えてみると、技術提携、共同生産、OEM生産などのような資本関係を伴わないものから、合弁のように資本関係を伴うものもあり、最終的に合弁も広義には企業提携の一つであると考えられる。
この研究データは8カ国の企業からとった事が明記されており、我が国のケースも含められていると思われる。例えばわが国においては技術提携やOEM生産などの資本関係を伴わない企業提携は比較的よく行われており、その理由として長期的な利益の観点から評判の良い新しい企業を探そうとする動機が働き、又戦略的類似性がある企業とは結びつきやすいということは十分合理性があるのではないかと考えられる。
しかし、我が国において、資本関係を伴う企業提携についても、はたしてこのような相関関係があるのかどうかについては疑問がある。我が国の場合は、我が国固有の制度的な事情があり、これをうまく説明できなくしているのではないかと考える。
例えば、最近よく新聞紙上を賑わしている金融機関の合併にしても、長期的利益や戦略的類似性という観点や、パートナー企業の評判を重視するという観点での合併なのかどうか疑わしいケースが多く観察されるが、これには法制度や資本構造が大きく関与しているように思われる。例えば、純粋持株会社が原則自由であるような国では、資本関係のある提携関係は証券市場の株式売買を通じてより容易になされると思われ、提携関係についても、容易に結んだり、解消したりできると考えられるが、我が国のように純粋持株会社が少なく、市場を通じた関係よりも例えば持ち合い比率などのようにグループ内での関係を重視しなければならないような資本構造にある場合、資本提携に至るつよい提携関係を結びにくく、また解消もしにくくなるという傾向にあり、それが行政指導による分かりにくい合併を多くしているのではないかと思われる。
また、大企業と大企業の提携と大企業と中小企業との提携関係との提携理由が同一であるとは考えにくい。我が国の場合、中小企業との提携関係は大企業間での提携関係と比べるとよりフレキシブルなのではないかと思われる。大企業間での提携関係には法制度や資本構造による制約があると思われるが、中小企業に対してはそれが少ないと考えられるからである。従って、調査するデータにはこのような規模別にデータを考えてみることが必要ではなかったかと考える。
(参考文献)
森本 三男「経営学入門(三訂版)」同文館、1995年。
村松 司叙「現代経営学総論」中央経済社、1991年。