
SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメント別報告」、及び我が国セグメント会計基準の比較検討
提出日:1998年9月21日
提出者:市川 克也
序章 はじめに
我が国のセグメント情報の開示規定は、1988年5月「セグメント情報の開示に関する意見書」公表後、1993年3月の連結財務諸表規則改正により段階的に充実が図られることになり、そして1997年4月以降はセグメント情報が全面的に開示され、開示方法及び開示情報内容において、SFAS第14号及びIAS第14号と比較してもほぼ同等の水準に達することになった。
しかし、1997年6月、FASBはSFAS第14号に代わるSFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」を公表し、また同年8月、IASCもIAS第14号に代わる改訂IAS第14号「セグメント別報告」を公表したため、国際的にセグメント会計基準は大きく改訂されることになり、更に、我が国においても、1998年6月、セグメント会計基準に大きな影響を与える連結財務諸表原則及び注解が全面的に改正されることになった。
このように、国際的なセグメント会計基準改訂の動向及び改訂連結財務諸表原則及び注解との整合性の観点から、我が国セグメント会計基準はその影響を受ける可能性があると考えられる。
本稿は、SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメント別報告」、及び現行の我が国セグメント会計基準について、その概要及び比較検討を行い、三者の共通点及び相違点を明らかにすることを目的とする。
第1章 SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメント 別報告」、及び我が国セグメント会計基準の概要
第1節 SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」の概要
今回公表されたSFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」は、SFAS第14号に代わるものであり、1997年12月16日以降に開始する期間に係る財務諸表に対して適用される。
まず、SFAS第131号において開示対象となる企業は公開企業であり、開示すべきセグメント情報は、@各報告セグメントにおける製品及びサービスの種類、Aセグメント別損益及びセグメント別資産の測定方法、B報告セグメントを識別する要因、Cセグメント別損益及びセグメント別資産の開示、D報告セグメントの収益、損益及び資産の金額と連結財務諸表数値との調整表、E地域別情報の開示、F主要な顧客情報の例示等である(例示1参照)。
そして、SFAS第131号における最も大きな改正点はセグメント決定において「マネジメント・アプローチ」を採用したことにあると考えられる。マネジメント・アプローチとは、セグメント報告のためのセグメントの決定にあたって、管理目的の内部機構に基礎をおくアプローチであり、セグメント情報は企業の内部組織単位、すなわち課、部、子会社、最高意思決定者が事業上の意思決定や業績評価の目的で使用するその他の組織単位に関して提供される(注1)。そして、セグメントへの費用などの配賦は、最高意思決定者が業績評価に使用する内部報告の中で実際に配賦が行われている場合に限り行われ(注2)、セグメント情報の作成にあたっては、最高意思決定者に対する内部報告で用いられる会計方針と同一の会計方針が用いられる(注3)。
また、FASBは、マネジメント・アプローチの利点として@企業の内部組織は経営者が重要と考えるリスクや収益機会を反映しているので、内部組織に基づく情報はそれ自体として財務諸表の利用者に価値の高い情報を提供すると考えられること、A「経営者の目を通して企業を見る」ことになるため、将来キャッシュ・フローの見積に重要な影響を与えるような経営者の行動を予測することが容易になること、B内部報告を基礎とするため、外部報告のための追加的なコストを要しないこと、Cビジネス・セグメント・アプローチで用いられるビジネス・セグメントは、主観的要素が強いのに対し、内部組織に基づくセグメントにはより客観性があると考えられることをあげている(注4)。
次に、このマネジメント・アプローチに従って区分された報告対象セグメントは、オペレーティング・セグメントと呼ばれ、そして、オペレーティング・セグメントとは、経営者が事業上の意思決定や業績評価のために設定した構成要素であり、その識別要件として、@収益を獲得し、費用を発生させる事業活動に従事しているものであること(同一企業内の他の構成要素との取引に係る収益及び費用を含む)、Aセグメントに対する資源配分の決定、業績評価のために、最高意思決定者によって定期的に業績評価が査閲されるものであること、B区分された財務情報を入手できるものであることがある(注5)。
第2節 改訂IAS第14号「セグメント別報告」の概要
改訂IAS第14号は、IOSCOがIASを承認するための要件であるコア基準の完成のために改訂されたものであり、1998年7月1日以降開始する期間に係る財務諸表に対して適用される(例示2参照)。
改訂IAS第14号では、報告すべきセグメント情報として「事業別セグメント」及び「地域別セグメント」が要請されている。「事業別セグメント」とは、製品の性質、製造工程の性質、顧客層の種類、製品の流通方法、銀行業・保険事業・公益事業などにおけるような規制環境の性質等を考慮して、ある製品又はサービス、もしくは一連の関連する製品又はサービスの提供に従事し、かつ、他の事業別セグメントとは異なるリスクとリターンを有することにより、企業内で分別される構成要素であり(注6)、「地域別セグメント」とは、経済及び政治状況の類似性、異なる地域間の事業活動の関連性、事業活動の近似性、特定の地域の事業活動に関する固有のリスク、為替管理法令、為替リスクなどを考慮し、他の経営環境において事業を営んでいる構成要素とは異なるリスクとリターンを有するものである(注7)。
そして、この事業別セグメント及び地域別セグメントのうち、一方を基本的セグメント報告様式とし、他方を補助的セグメント報告様式とすることを要求している。補助的セグメント報告様式は基本的セグメント報告様式に比して簡略化されたものであり、その基本的セグメント、補助的セグメントの識別は、企業のリスクとリターンの主要な源泉及びその性質に基づいて行われ、企業のリスクとリターンに支配的な影響を与える方が基本的セグメント、他方が補助的セグメントとされる(注8)。そして、企業が直面するリスクとリターンの主たる源泉及びその性質を識別するに当たっては、企業の内部組織、経営機構、取締役会又は最高経営責任者に対する内部報告の制度が識別の基礎とされる(注9)。
また、改訂前IAS第14号と比較した場合の他の改正点として、報告すべきセグメント情報の重要性の判断基準がある。改訂前IAS第14号において、例えば連結収益、連結資産などの10%を開示対象とするという重要性基準は採用されていなかったが、改訂IAS第14号においては、数値的な指標によって重要性が判定されることになっている。すなわち、@セグメント別収益が全てのセグメント別収益合計額の10%以上であること、Aセグメント別損益が、利益の生じている全てのセグメント利益合計額、又は、損失が生じている全てのセグメントの損失合計の絶対値のいずれか大きい金額の10%以上であること、Bセグメント別資産がすべてのセグメント別資産合計額の10%以上であること、が要求されており前期に10%要件を満たし報告セグメントとされたセグメントは、当期において10%要件を満たしていなくても、経営者が継続的に重要であると判断した場合は、引き続き報告セグメントとされ、更に報告セグメントの外部収益合計が連結収益の75%未満である場合、上記の10%基準を満たさないセグメントであっても、報告セグメントの外部収益合計額が連結収益の少なくとも75%に達するまで、追加的に報告セグメントとして識別されることになっている(注10)。
第3節 我が国セグメント会計基準の概要
我が国セグメント会計基準は、1988年5月「セグメント情報の開示に関する意見書」が企業会計審議会により公表された後、段階的に充実が図られている。すなわち、1995年4月1日以後開始事業年度から事業別セグメントにおいて、売上高、営業損益、セグメント別資産、減価償却、及びセグメント別資本的支出の開示が全面実施され、1998年4月1日以後開始事業年度から所在地別セグメントにおいて本国における地域別セグメント情報、海外売上高において地域別セグメント情報が要求されることになり、1993年3月の連結財務諸表規則改正によるセグメント情報の開示が、1998年4月1日以降、全面実施されることになった。
1998年4月1日以降の我が国セグメント会計基準の概要は以下の通りである(例示3参照)。まず、第一に適用対象企業は連結財務諸表を作成している企業(セグメント情報の開示基準第一(1))であり、中間連結財務諸表を作成する場合も事業の種類別などのセグメント情報が注記される(中間連結財務諸表作成基準第四4(1))。但し、個別ベースでの中間財務諸表においてセグメント情報の記載は要求されない。
第二に、セグメント情報の開示範囲は、事業別セグメント、所在地別セグメント及び海外売上高であり、事業別セグメントとは売上高及び営業損益、セグメント別資産、減価償却費、並びに資本的支出額の事業別の開示である。但し、事業区分の方法、各区分に属する主要な製品の名称などの開示も要求されている(会計制度委員会報告第一号セグメント情報の開示に関する会計手法
事業の種類別セグメント情報(2)@)。所在地別セグメントとは、売上高及び営業損益、並びに資産残高の地域別の開示であり、海外売上高とは、地域別海外売上高の開示である。
そして、事業別セグメントにおいて事業区分の決定にあたっては、事業別セグメントの情報は製品系列の情報に合致するものであることが要求されており(セグメント情報の開示基準第三(一)1.事業区分の決定)、内部管理上の目的で設定している事業区分(利益センター)が利用可能であるかどうかを判断して、その利益センターが複数の製品系列にまたがっているときは、利益センターを分割しなければならない(会計制度委員会報告第一号セグメント情報の開示に関する会計手法
事業の種類別セグメント情報 (2)B事業区分の一般的方法ア)。すなわち、報告セグメントの決定方法は、内部管理上の利益センターにまず着目し、経営の多角化の現状とその将来の予測に基づき、製品系列別のセグメントに組み替えることである(会計制度委員会報告第一号セグメント情報の開示に関する会計手法
事業の種類別セグメント情報 (2))。
第三に、報告セグメントの重要性基準は、報告セグメントの収益合計が50%を超えるまで報告セグメントを識別することが要求されている(セグメント情報の開示基準第三(一)3.重要性の基準
(2))。但し、報告セグメントの収益、営業損益、資産残高がすべてのセグメントにおける対応する項目の合計額(営業損益については利益が生じている全てのセグメントの利益合計額、又は損失が生じている全てのセグメントの損失合計額のいずれか大きい金額)の90%超であり、かつ、そのセグメント以外に重要性を満たすセグメントがない場合には、その旨及び理由を開示することによって事業別セグメント情報を開示しないことができる(セグメント情報の開示基準第三(一)3.重要性の基準
(3))。
第四に、セグメント別損益の会計処理について、まず、セグメント別損益は基本的に営業損益とし、
また、セグメント別損益として経常損益が適当と認められる場合には、経常損益を開示セグメント別損益とすることができる(セグメント情報の開示基準第三(一)2.開示すべき情報
)。そして、営業費用は直課できるものと直課できないものに区分され、直課できる営業費用は、各セグメント別に把握され、直課できない費用はそれぞれの費用の性質に応じて各企業の実情に即した合理的な配賦基準に基づいて各セグメントに配賦されることになる(会計制度委員会報告第一号セグメント情報の開示に関する会計手法
事業の種類別セグメント情報 2.営業費用の配分 (1))。最後に、直課できない費用のうち配賦しなかったものは、配賦不能営業費用として、その金額及び主たる内容を注記によって開示することが要求される(会計制度委員会報告第一号セグメント情報の開示に関する会計手法
事業の種類別セグメント情報 2.営業費用の配分 (2))。
第五に、セグメント情報の測定にあたって採用すべき会計方針は、連結財務諸表の作成にあたって採用された会計方針と同一のものであることが要求されている。但し、セグメント相互間の振替価格の決定基準の開示は要求されていない。
第六に、セグメント損益及びセグメント別資産と連結財務諸表上の数値の整合性について、セグメント別損益及びセグメント別資産と連結財務諸表に記載された損益及び資産との整合性も要求されている(例示3参照)。
第4節 SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメント
別報告」、及び我が国セグメント会計基準の共通点
第1項 SFAS第131号及び改訂IAS第14号において共通して要求される開示情報
SFAS第131号及び改訂IAS第14号において共通して要求される開示情報として以下のものがあげられる。
まず第一に、各報告セグメント別の情報として、@外部収益、Aセグメント相互間の収益、Bセグメント別減価償却費、Cその他の減価償却費以外の重要な非資金費用、Dセグメント別持分法投資損益、Eセグメント別損益、Fセグメント別資産残高、Gセグメント別持分法投資額、Hセグメント別資本的支出額がある。
第二に、各事業別セグメントの収益源泉となっている製品の種類、地域別セグメントの外部収益及び資産残高の情報開示がある。
第三に、セグメント相互間の振替価格の決定基準の情報開示がある。
第四に、セグメント情報と対応する連結財務諸表計上額との調整表、すなわち、@報告セグメント別収益合計額に関する調整表、A損益合計額に関する調整表、B資産残高合計額に関する調整表がある。
第五に、中間財務諸表においてセグメント情報を開示することがあげられる。但し、IASについては、公開草案第57号「中間財務報告」パラグラフ17においてセグメント情報の開示が要求されている。
第2項 我が国セグメント会計基準とSFAS第131号及び改訂IAS第14号との共通点
我が国セグメント会計基準とSFAS第131号及び改訂IAS第14号との共通点として以下のものがあげられる。
第一に、セグメント情報の開示範囲について、我が国のセグメント会計基準の事業別セグメントについては、セグメント別売上高、営業損益(又は経常損益)、資産残高、減価償却費、資本的支出であり、所在地別セグメントでは、所在地別売上高、営業損益(又は経常損益)、資産残高の地域別開示、海外売上高では地域別の開示が要求されており、セグメント別負債残高及びその他の減価償却費以外の重要な非資金費用以外は、ほぼSFAS第131号及び改訂IAS第14号と共通する。
第二に、報告セグメントの決定方法は、我が国においては事業別セグメント情報は、製品系列別の情報と合致することが要求されており、事業区分の決定にあたっては、内部管理組織で設定されている利益センター等が利用可能かどうか判断し、その利益センターにおいてリスクとリターンの観点から、他の製品系列が含まれないと判断されるならば、当該利益センターが報告セグメントとなるが、これはリスクとリターンの観点から報告セグメントを決定する改訂IAS第14号と類似の報告セグメントの決定方法であると考えられる。
第三に、セグメント別損益に関する規定の内容は、基本的にセグメント別に売上高を分類し、セグメント別に直課できる営業費用はセグメント別に直課し、直課できない営業費用は合理的な基準に基づいて配賦し、セグメント別に配賦しなかった営業費用は配賦不能営業費用として注記により開示が求められているが、これは改訂IAS第14号と類似したものであると考えられる。
第5節 SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメン
ト別報告」、及び我が国セグメント会計基準の相違点
第1項 SFAS第131号では要求されているが、改訂IAS第14号では要求されていない情報
SFAS第131号では要求されているが、改訂IAS第14号では要求されていない情報として以下のものがあげられる。
第一に、例えば、製品別、地域別又は規制環境など報告すべきセグメントを識別するにあたって考慮した要因が要求される。
第二に、報告セグメント別損益の情報として、@利息収入及び利息費用(但し、改訂IAS14号では利息収入及び利息費用は金融業の場合のみ開示される)、A非経常損益、B異常損益が要求される。
第三に、セグメント情報と対応する連結財務諸表計上額との調整表では明らかにされない場合、@報告セグメント別損益合計額と、A異常損益、廃止事業損益、及び会計方針の変更による累積的影響額を考慮する以前の連結税引前損益との差異内容(但し、差異内容には、セグメント情報を理解するために必要な会計方針、本社費用の配分が含まれる)が要求される。
第四に、セグメント情報と対応する連結財務諸表計上額との調整表では明らかにされない場合、報告セグメント別資産残高合計と連結財務諸表上の資産残高との差異内容(差異内容には、セグメント情報の理解に必要な会計方針、共有資産の配分方針が含まれる)が要求される。
第五に、セグメント別損益の測定方法を変更した場合には、変更の内容、変更の影響額が要求される。なお、報告セグメントの変更をもたらすような内部組織の変更が行われた場合には、実施不可能でない限り、過年度セグメント情報(中間を含む)を修正再表示し、修正再表示したかどうかについても併せて開示することが要求され、過年度セグメント情報を修正再表示しない場合には、変更年度において、実施不可能でない限り変更前及び変更後の両方の基準に基づいてセグメント情報を開示することが求められる。
第六に、主要な顧客への依存に関する情報、すなわち、単一の外部顧客からの収益が企業収益合計額の10%以上である場合は、その事実、そのような顧客毎の収益合計額、その収益が計上されているセグメントをそれぞれ開示することが要求されている。ただし、具体的な顧客名及びセグメント別収益の開示は要求されていない。
第2項 改訂IAS第14号では要求されているが、SFAS第131号では要求されていない情報
改訂IAS第14号では要求されているが、SFAS第131号では要求されていない情報として、以下のものがあげられる。
まず第一に、セグメント情報に重要な影響を与える会計方針の変更に関する情報がある。すなわち、セグメント情報に重要な影響を与える会計方針の変更が行われた場合には、実施不可能でない限り、過年度セグメント情報(中間も含む)を修正、再表示し、変更の内容に関する記述、変更の理由、過年度セグメント情報が修正再表示されたかどうか、また修正再表示できない理由、合理的に算定できる場合は変更による影響額を開示することが要求されている。過年度セグメント情報を修正再表示しない場合には、変更年度において、変更前、変更後の両方の基準に基づいてセグメント情報を開示することが要求される。ただし、セグメント相互間の振替価格の決定基準の変更は、会計方針の変更には該当しない。
第二に、セグメント別負債残高の要求がある。改訂IAS第14号ではセグメント別負債残高が要求されているが、SFAS第131号ではその記載は任意である。
第3項 我が国セグメント会計基準とSFAS第131号及び改訂IAS第14号との相違点
我が国セグメント会計基準とSFAS第131号及び改訂IAS第14号との主要な相違点として以下のものがあげられる。
第一に、報告セグメントの決定方法として、我が国においてはリスクとリターンを表す事業区分によって決定されるが、SFAS第131号では、管理目的の内部組織単位に基づいて報告セグメントが決定されることから、この点において相違が見られる。
第二に、セグメント別負債残高について、改訂IAS第14号では、セグメント別キャッシュ・フロー計算書の作成を念頭に置き、セグメント別負債残高の開示を求めているが、我が国我が国セグメント会計基準ではその開示が求められていない。
第三に、セグメント相互間の振替価格の決定基準について、SFAS第131号及び改訂IAS第14号では開示が求められているが、我が国セグメント会計基準では開示が求められていない。
第四に、重要性基準について、我が国セグメント会計基準では、報告セグメントの収益合計が50%を超えるまで報告セグメントを識別することが要求されているが、SFAS第131号及び改訂IAS第14号では10%基準を満たさないセグメントであっても、報告セグメントの外部収益合計額が連結収益の少なくとも75%に達するまで、追加的に報告セグメントとして識別されることが要求されている。また、我が国セグメント会計基準では、報告セグメントの収益、営業損益、資産残高がすべてのセグメントにおける対応する項目の合計額等の90%超であり、かつ、そのセグメント以外に重要性を満たすセグメントがない場合には、その旨及び理由を開示することによって事業別セグメント情報を開示しないことができるが、SFAS第131号及び改訂IAS第14号ではこのような容認規定はない。
第五に、垂直的統合事業について、SFAS第131号において内部構造に基づきセグメント情報の開示が要求されているが、我が国セグメント会計基準では開示が要求されていない。
第六に、主要な顧客への依存に関する情報について、SFAS第131号において内部構造に基づきセグメント情報の開示が要求されているが、我が国セグメント会計基準では開示が要求されていない。
第2章 SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメント 別報告」、及び我が国セグメント会計基準の比較検討
第1節 財務情報の比較可能性と財務情報の目的適合性
SFAS第131号「企業のセグメント及び関連情報に関する開示」、改訂IAS第14号「セグメント別報告」、及び我が国セグメント会計基準は、大きく分けると重視する財務情報の質的特徴、及びセグメント会計の手法によって二つに分けることができると考えられる。
すなわち、財務情報の比較可能性を重視し、企業の内部管理組織に基づいた内部管理情報を一定の会計基準に厳格に当てはめて外部報告用に組み替える方法と、財務情報の目的適合性を重視し、企業の内部管理組織に基づいた内部管理情報をほぼそのまま外部報告用の情報として提供する方法である。
そして、前者には改訂IAS第14号及び我が国セグメント会計基準があてはまり、後者にはSFAS第131号があてはまると考えられる。すなわち、改訂IAS第14号及び我が国セグメント会計基準は、基本的には内部管理組織に着目するものの、リスクとリターンの関係から基本セグメント単位を分割し、連結財務諸表作成に用いた同一の会計方針を採用し、又セグメント別損益に関する詳細な規定を基礎として情報を組み替え、セグメント情報とすることが求められている。一方、SFAS第131号は、企業の内部管理組織に基づいた内部管理情報をそのままセグメント情報として開示することが要請されており、従って連結財務諸表作成に用いた同一の会計方針を採用する必要性はなく、又セグメント別損益に関する詳細な規定はない。
このように、改訂IAS第14号及び我が国セグメント会計基準は、比較可能性を重視するために場合によっては内部管理情報を組み替えることが要求され、SFAS第131号は、目的適合性を重視し、経営者の視点に基づく内部管理情報が利用者にとって有用であるとの判断から、内部管理情報を組み替えずにそのままセグメント情報とすることが要求されていると考えることができる。
第2節 セグメント会計基準の実際の適用における相違点
以上のように考えるならば、改訂IAS第14号及び我が国セグメント会計基準、並びにSFAS第131号において大きな差異があるかに見えるが、これらの会計基準を実際に適用した際にはセグメント情報に実質的な差異はないのではないかと考えられる。
すなわち、改訂IAS第14号及び我が国セグメント会計基準は、確かにリスクとリターンの関係から基本セグメントが決定されるのであるが、基本的に内部管理組織に着目することに変わりはないのであり、一般的な経営者であれば、リスクとリターンの関係に基づいて内部管理組織を形成している筈であるから、報告セグメントにおいて実質的な差異が生まれるとは考えにくい。
そして、実質的な差異が生まれるとすれば、経営者の恣意性が介入するかどうかということにあると考えられ、それは会計基準においてどのような安全基準が設けられているかに係っているのではないかと考えられる。すなわち、改訂IAS第14号及びSFAS第131号においては、10%基準及びこれを担保するために報告セグメントの外部収益合計が連結収益の75%未満である場合、上記の10%基準を満たさないセグメントであっても、報告セグメントの外部収益合計額が連結収益の少なくとも75%に達するまで、追加的に報告セグメントとして識別されることになっており、また、SFAS第131号は内部管理情報をそのまま開示することを要求することによって経営者の恣意性を排除する規定が用意されている。
これに対して、我が国のセグメント会計基準は、10%基準は同様であるものの、追加的に報告セグメントを識別する基準は連結収益の50%であり、また報告セグメントが対応項目の合計額の90%超であるならば、事業別セグメント情報を開示しないことができるとする容認規定が存在するために、例えば、大手電機機器メーカーのように事業区分を電気機器とし、これが対応項目の9割を超えることからセグメント情報の開示が容認されるということも可能である。この点において我が国のセグメント会計基準は改訂IAS第14号及びSFAS第131号と差異があると考えられる。
第3章 総括
我が国のセグメント会計基準は、国際的なセグメント会計基準改訂の動向及び改訂連結財務諸表原則及び注解との整合性の観点から、その影響を受ける可能性があると考えられる。
そして、我が国セグメント会計基準改訂の際には、我が国においてどのような情報利用者のニーズや利用者にとって有用な情報とは何であり、我が国の多角化及び国際化の実態はどのようであり、そしてセグメント会計の目的は何であるかについて明らかにすることが必要であると思われる。
しかし、我が国においては会計基準を設定するためのパラダイムである概念フレームワークが明示的に存在していないために(注11)、どのような視点に基づいて改訂が行われるべきか明らかでないという懸念がある。今後、セグメント会計基準の改定が行われる際には、一体どのような視点に基づくべきであるかについて、まず検討が必要であると考えられる。
(注)
(注1)Financial Accounting Standards Board, Statement of Financial Accounting
Standards No.131, Disclosures about Segments of Enterprise and Related Infomation
,June 1997, para.51.
(注2)Ibid., para.51.
(注3)Ibid., para.51.
(注4)Ibid., pars.59-60.
(注5)Ibid., para.10.
(注6)International Accounting Standards Committee, International Accounting
Standards No.14(revised 1997), Segment Reporting, August 1997, para.9.
(注7)Ibid., para.9.
(注8)Ibid., para.26.
(注9)Ibid., para.27.
(注10)Ibid., pars.35-42.
(注11)広瀬 義州「セグメント会計基準の論点」企業会計、第48巻第4号(1996年4月)、26頁。
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守山 誠二「セグメント情報の開示問題と企業側の対応」企業会計、第40巻第8号(1988年8月)。
服部 不二夫「「意見書」の評価と雑感」企業会計、第40巻第8号(1988年8月)。
佐土井 滋「セグメント情報の意見書についての私見」企業会計、第40巻第8号(1988年8月)。
久保 幸年「セグメント情報の有用性とセグメント情報として開示されるべき情報」企業会計、第40巻第8号(1988年8月)。
新井 清光・井坂 武彦・村山 徳五郎・久保 幸年「座談会 企業会計審議会「セグメント情報の開示に関する意見書」の公表にあたって」企業会計、第40巻8号(1988年8月)。