我が国の企業会計における負債概念         
                          発表日 1997年8月24日
                          発表者 市川克也


I. はじめに

   昨今、経済のボーダレス化、国際化の進展やデリバティブ取引等の拡大により我が国の経済社会環境の著 しい変化がみられ、企業会計においても従来の枠組みでは捉えられない経済事象が増加しつつあると言える が、我が国の会計規範において一般的な財務諸表の基礎概念についての定義を行った規定はほとんどないた め、この点について議論の余地があると思われる。そこで、以下では特に我が国における負債概念を取り上 げ、主として制定法の法解釈から負債概念の定義についてどのようなものであるのかを考察してみたい。

II. 我が国における負債概念の議論

 A. 法的債務説

  1. 商法の計算規定を会社清算時における債権者保護を目的であると解する立場から、財産と比較すべ きもの は弁済されなければならない法的債務であると考えるべきであることから、負債とは法的債務であると解     釈される(1) 。
  2. 法的債務(2)の範囲には、確定債務のみならず条件付債務が含まれる(計算書類規則33条(昭和49年改正     により削除)参照)。また一定の債務(3) については負債として計上しなくてもよいとするのが通説であ る。

III. 制定法等の会計規範による負債項目

 A. 制定法等の会計規範によって負債項目とされるもの

  1. 商法上の規整

  (1). 商法287条の2における引当金の規定
   (2). 株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則(法
     務省令)による規定
     第25条乃至第33の規定等

   2. 証券取引法上の規整( 証券取引法193条)

   (1) 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令59号 最終改訂平成
     9年2月27日大蔵省令第3号)
     第45条乃至56条の規定等
   (2) 財務諸表規則取扱要領
     第113条乃至第145条の2の規定等
(3) 中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和52年大蔵省令38号 最終改訂
     平成8年7月3日大蔵省令第40号)
  第26条乃至第30条の規定等
(4) 中間財務諸表規則取扱要領
   第19条乃至第20条の規定等
(5) 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令28号 最終改訂平
成8年4月18日大蔵省令第28号)
    第35条乃至第38条、第40条、第41条等
(6) 連結財務諸表取扱要領
     第55条乃至第60条、第62条等
(7)「企業会計原則」など会計基準(証券取引法193条、財務諸表等規則第1条1項、2項、連結
    財務諸表規則 第1条及び連結財務諸表規則取扱要領第1、財務諸表等監査証明省令第4条 3項1号2号並びに中間財務諸表規則 第1条、中間財務諸表規則取扱要領第5及び第6等)
  i. 「企業会計原則・同注解」
「企業会計原則」第三 貸借対照表原則(二)負債 及び注解18等の規定
ii. 連結財務諸表原則・同注解
     第四 連結貸借対照表の作成基準(四)少数株主持分 、同(五)税効果会計、同(九)      表示方法並びに注解11及び注解16等
iii. 中間財務諸表作成基準・同注解
第二 作成基準 二 営業費用 1、及び6(1)事業年度末までに棚卸資産原価
に吸収されて消滅する性質の原価差額の規定等
iv. 外貨建取引等会計処理基準・同注解
外貨建取引等会計処理基準 三 在外子会社等の財務諸表項目 4 為替差額の処
理における為替換算調整勘定の規定
v. リース取引に係る会計基準及びリース取引に係る会計基準注解
リース取引に係る会計基準 三 ファイナンス・リース取引に係る会計基準 1
及び注解2乃至4等

3. 特別法上の準備金

特定事業の公共性に鑑み、法がその計上を強制し、繰入及び取り崩しの条件を定めている等の事情を考慮 して計上を要求するものである。そして、企業会計原則注解18を満たさないものについては、特に固定負債 の次 に引当金の部を設けて、負債の部に計上することが強制されている(財務諸表等規則第54条、計算書類 規則第33条4項)。

ex. 渇水準備引当金(電気事業法第38条)、取引損失準備金(証券取引法第56条)、
証券取引責任準備金(証券取引法第57条の2)

4. 公正なる会計慣行として負債であると解することができるもの

  a. 商法32条2項「公正なる会計慣行を斟酌する」の解釈

i. 「公正」とは営業上の財産及び損益の状態を明らかにするという目的に照らして公正であるというこ とである。
ii. 「会計慣行」とは、広く実際慣行として実施されているもの及び実際慣行として実施されていないが       公正な会計基準(財務諸表規則1条1項参照)と考えられるものも含まれると解する (4)。
iii. 「斟酌」とは公正な会計慣行によらない特別の事情がない限り、これによらなければならないという       趣旨であって、「参酌」よりも接着しているが、「基づく」よりも接着せず、その中間を示す(5) 。       しかし、斟酌しなければならないということは、公正な会計慣行がある以上は特別な事情がないかぎ       りはこれに従わなければならないことを意味する(6) 。
iv. 公正なる会計慣行と「企業会計原則」の解釈
公正なる会計慣行とは、「企業会計原則」と必ずしも同一の概念ではなく、これ以外にも合理的な会       計慣行であると考えられる場合にはこれも含まれ、また「企業会計原則」に定められている事項に関 しても、従来の慣行と同じ程度またはそれ以上に財産及び損益の状況を明らかにする理論や取り扱い がある場合は、後者を公正なる会計慣行と考えることになる (7)。

b. 新株引受権の評価部分
日本公認会計士協会会計制度委員会「新株引受権付社債の発行体における会計処理及び表示」 の規定により実務上負債であるとして処理される。

IV. 制定法の趣旨から解釈した場合の負債概念

  A. 商法上の計算規定の趣旨 (8)

  1. 配当可能利益を適正に算定することを通じて、会社債権者と株主との利害調整を図る
    こと(資本維持)。
    2. 財産管理の受任者が、現在の株主に対して投資の意思決定に必要な情報を提供するこ
    と(状況報告、顛末報告)及び債権者に与信の意思決定に必要な情報を開示すること
    (状況開示)。

  B. 商法上の計算規定の趣旨から解釈される負債概念

   1. 資本維持の観点から解釈される負債概念

資本維持の理念をもっぱら清算時において会社債権者に対し、資本に見合う会社財産を確保すること であると解するならば、負債は弁済されなければならない法的債務であれば十分であると解され、また継     続企業を前提とすれば、会社財産を確保する観点から引当金等の計上が容認される。しかし、法的安定性、    予見可能性を考慮する必要があることから、負債とは法律上の債務及び商法287条の2等、特定項目が負債 であると商法上特に認められる項目であると解釈される。

   2. 状況報告・顛末報告及び状況開示の観点から解釈される負債概念

株主(又は債権者)が意思決定を行うために必要な情報を開示するという観点から、貸借対照表上に 認識計上される負債を狭く解するならば、いわゆるオフバランス項目が多数発生することになり、例え ば株主総会における議決権(商法241条1項)、少数株主権(商法232条の2)などの行使について株主 が十分な情報を獲得しえないとの説がある。しかし、オフバランス項目であったとしても、例えば、注 記や附属明細書に記載することによって十分な情報を提供することも可能であり、負債概念の定義を広 く解さなければならないという根拠にはあたらないと解する。従って、負債とは法的安定性、予測可能 性を考慮するならば、法律上の債務及び商法287条の2等、特定項目が負債であると商法上特に認められ る項目であると解釈される。

  C. 証券取引法上の開示規制の趣旨

   投資意思決定情報の提供(証券取引法1条)。

  D. 証券取引上の開示規制の趣旨から解釈される負債概念

近年における我が国の証券市場のグローバル化、経済のボーダレス化を前提(連結財務諸表制度の見 直しに関する意見書 平成9年6月6日 二 及び 四 参照)にすれば、投資意思決定情報について諸外国 と異なる解釈を採用すべきではないとの必要性に欠けることから、他の主要先進諸国や国際会計基準の 解釈(資料1参照)と同様に解釈してよいのではないかと考えられる。即ち、負債とは過去の取引また は事象の結果として、ある特定の実体が負った発生の可能性の高い経済的便益の犠牲であると解釈しう る。


V. 我が国における負債概念についての総括

  A. 制定法による現在の会計規範(特に商法)をより重視した場合の負債概念

   我が国の企業会計における負債とは、主として法的債務、及び、特定の実体の財産および損益の状態を公    正に表すために、必ずしも法的強制力を伴うものではないが、特定の実体が負担 することが確実な必要性    であり公正な会計慣行であると認められるもの(具体的には商法287条の2等一定の要件を満たす項目)であっ
   て、将来において出捐をともなう可能性が高いもの、並びに一定の政策目的を達成するために制定法によっ て特別に定められたものである。

VI. 問題点と課題

1. 我が国においては制定法(成文法)規範を重視せざるを得ないことから、特に商法における会計規範を
   重視して負債概念を考えざるをえない。しかし、日本経済の国際化・ボーダレス化にともない企業会計
   の国際化が更に進展することを考えるならば、将来において制定法、特に商法の調整が必要になってく
   ると考える (9)。

 ex.)我が国商法では資本の部に含められるものは商法に規定されているものに限られるため(資本          の部については資本金、法定準備金、剰余金(計算書類規則34条1項、35条1項、2項等))、          例えば新株引受権付社債のうち新株引受権の評価部分や為替換算調整勘定は我が国においては          負債(または資産)とすることになっている。しかし、国際会計基準ではこの項目は資産ない          し負債の定義を満たさないとして、資本の部の増減項目としている (10)。

2. 会計原則が激しく変動する社会経済に対応するためには、会計基準レベルでの迅速な対応が必要とな       ると考えられるが、そのためには商法上、公正なる会計慣行(慣習法又は慣習規範)として会計基準 が認められる必要がある。従って、「企業会計原則」自体の洗練化、及び、多様な会計基準が首尾一 貫して設定されるための概念フレームワークの形成が求められると考える。

(注)
1 田中耕太郎「貸借対照表法の論理」日本出版配給株式会社、1944年、77頁、法務省民事局「株式会社の計 算の内容に関する商法改正要綱法務省民事局試案」九等。
2 新井 清光「財務会計論(第二版)」中央経済社、1996年、117頁。
3 弥永 真生「負債の会計と企業会計法(氈j」商事法務 No.1426 (1996年4月)3頁。
4 矢澤 惇「企業会計法講義(改訂版)」有斐閣、1973年、11頁。
5 鈴木 竹雄・竹内 昭夫「会社法(第三版)」有斐閣、1994年、330頁。
6 矢澤 惇「企業会計法講義(改訂版)」有斐閣、1973年、12頁。
7 鈴木 竹雄・竹内 昭夫「会社法(第三版)」有斐閣、1994年、330頁、矢澤 惇「企業会計法講義(改訂版)」  有斐閣、1973年、12頁、 武田昌輔「税務会計と商法」税務研究会出版局、1977年、9頁。
8 矢澤 惇「企業会計法の理論」1981年115頁、広瀬 義州「会計基準論」中央経済社、1995年,320頁、安藤  英義「商法会計制度論」国元書房、1985年、3頁。
9 1997年7月23日日本経済新聞第1面、ドイツにおけるコンツェルン計算書の改正参照。
10 白鳥 栄一「国際会計基準と我が国の会社法」商事法務、No.1432号(1996年8月)。

参考文献
Financial Accounting Standards Board, Statement of Financial Accounting Concepts No.6: Element of Financial Statements, December 1985, Par.35
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黒澤 清・大住 達雄・井上 達雄・味村 治「商法の考え方 会計の考え方(座談会)」企業会計、第13 巻12号(1961年10月).
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吉原 和志・岸田 雅雄・伊藤 邦雄「企業会計法の新たな方向を求めてー規範と実態の融合(シンポジウム)」 企業会計、38巻1号(1986年1月).
白鳥 栄一「国際会計基準と我が国の会社法」商事法務、第1432号(1996年8月).
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浦野 晴夫「税法におけるトライアングル体制を考える」企業会計、第48巻9号(1996年9月).
広瀬 義州「会計基準設定のための日本版概念フレームワーク」商事法務、No.1455号(1997年4月).
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岸田 雅雄「わが国企業会計法の基本問題」商事法務、第1443号(1996年12月).
江頭 憲治郎・岸田 雅雄・伊藤 邦雄・中里 実・加藤 厚「会計・租税法との接点(座談会)」商事法務、 第.1411号(1996年1月).
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1994年5月.
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弥永 真生「現在価値計算と商法計算規定」企業会計、第47巻第1号(1995年1月)。
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安藤 英義「商法会計制度論」国元書房、1985年.
鈴木 竹雄・竹内 昭夫「会社法(第三版)」有斐閣、1994年.
広瀬 義州「会計基準論」中央経済社、1995年.
新井 清光「財務会計論(第二版)」中央経済社.
矢澤 惇「企業会計法講義(改訂版)」有斐閣、1973年.
新井 清光編著「企業会計法の基礎知識」中央経済社、1982年.
鈴木義夫「現代ドイツ会計学」森山書店、1994年.
広瀬義州・平松一夫訳「FASB財務会計の諸概念(改訳新版)」中央経済社、1994年.
田中英夫「英米法総論 上・下」東京大学出版社、1994年.

江頭 憲治郎・岸田 雅雄・伊藤 邦雄・中里 実・加藤 厚「会計・租税法との接点(座談会)」商事法務、No.1411号(1996年1月)

3 商法と税法
岸田発言13頁

1計算規定以外の規定に対する影響力

中小株式会社の設立目的が節税目的
(日本の株式会社は100万社、一方ドイツの株式会社は2、500社で日本の上場会社程度)

公開会社選択において、非公開会社の会社を公開することによってキャピタルゲインを取得した場合には、税金が非常に安くなる。

事業持株会社の設立目的の一つは節税のため

株式の評価
小会社 純資産価額方式
大会社 類似業種比準方式
計算方法の変更のために持株会社が設立されている。

ex)
小会社の株式を取得させるために、持株会社を設立して、それを大会社とすれば株式評価について大会社としての評価を受けることができる。大会社に収益力の低い駐車場経営などを行わせることにより、類似業種比準方式から株式の評価を下げさせて、節税ができる。

純粋持株会社については、税金の問題で損益通算制度が認められない限りは余りメリットがないという指摘がある。

みなし配当課税が商法にゆがみを生んでいるといわれる。利益準備金の資本組入れは、源泉徴収を行わなければならないため、源泉徴収の財源と源泉徴収を行うための株主の確定という手続を必要とする。従って、株主総会後でないとできない。

自己株式の利益消却の問題としては、平成7年に租税特別措置法が改正され、3年間に限ってみなし配当をしないということになった。

会社分割について、営業譲渡などについて、譲渡益の問題が生ずるため、法人税法51条など圧縮記帳の規定の適用を受けるためには、譲受会社が95%以上の株式を取得しなければならない。

江頭発言15頁

子会社株式の公開が外国より盛んであるという原因の一つに、親会社の受取配当が100%非課税になるかどうかという基準が、日本の場合、25%の株式を持っているか否かによって決まる(法人税法23条1、4項)。アメリカでは子会社株式の80%を持っていないと受取配当が100%非課税にはならないので、租税面から子会社株式の公開が制限される。

連結納税制度が導入された場合、例えば、アメリカの場合、子会社株式を80%保有していないと連結納税ができないため、企業形態に及ぼす影響は大きい

みなし配当について 17頁
江頭発言
商法学者の見解
株式の消却、利益積立金の資本組み入れ等が行われた時課税する理由はないのであって、株主が株式を譲渡したときに譲渡益に課税すればよい
租税法学者の見解
転換対処規定
日本では個人の株式譲渡益にほとんど課税できないシステムになっているから、いろいろな機会に課税しなければならない
配当所得とすることにより二重課税を防ぐことに意義がある(武田昌輔 )

岸田発言
会社が将来配当をなすことみなして課税する。例えば、株式の利益消却において、残存株主に対する課税など、その分だけ自分の資本分が増えたとするのは一般株主からは理解できないのでは?

中里発言

全てはシャウプ勧告に遡る。個人株主レベルで包括的な所得税を課税するという理想が正しい、公平であるという立場に立てば、繰延防止や、非課税防止のバックアップのために課税することが正しくなる。
ただし、配当ルートに乗せた場合と、キャピタルゲインルートに乗せた場合では片方では課税されないのに、片方は課税されるという問題はある(繰延の問題はあるが、キャピタルゲインは後から課税される)、みなし配当課税は個人株主を考えた場合は必要。又、法人株主を考えた場合には、配当ルートに乗せてあげた方が、益金不算入がでてくるので意味がある。

岸田発言
みなし配当課税は経済学者がまったく理解できない(199512月14日やさしい経済学)

中里発言

日本の税制上、所得の定義は、消費プラス純資産増加ということになっている。みなし配当課税をやめることは体系の破壊につながる。

江頭
租税法の所得概念からは、株式分割があったときは、所得があると見るのが正しい。現に時価ベースでは株主の財産が増えるのが通常だと言えば、そうでもないのではないかと思われるが、所得税に関する限り、評価は額面基準。その意味では商法とずれている。

岸田
みなし課税で問題となるのは、源泉徴収。会社が払うために、利益配当に関してその分を利益処分するとか、利益配当するために株主総会を開かなければならないから、株主総会を開くときにしかできないという問題がある。

加藤
ストックオプションについて、売却するまで課税をしないで売却した時点で26%申告分離課税するということになった。しかし、みなし配当課税の理論で考えると、本来ストックオプションを行使したときにベネフィットを受けているからその時点で課税すべきではないか(優遇措置と考えられる)。

中里

生命保険会社なども含めて機関投資家の株式保有能力が落ちている。株式の相互持ち合いも難しくなってきている。従って受け皿が必要となり、自社株なり、ストックオプションなり、従業員持株といった政策判断で保有させている。

中里

確定決算主義は課税理論の要請ではなく、手続の簡略化のため。法人税法の別表を変えれば日本でもできないわけではないだろう。そうすれば逆基準性の問題も小さくなるはず。

江頭

会社分割について。100%子会社を設立してその会社に現物出資なり営業譲渡することは非課税にできる。あとは、その子会社株式を株主にたいして税金がかからずに分配できればそれで会社分割になり、子会社株式を現物配当または実質上の減資の対象として株主に配ることは商法上は可能と法務省は言うが、子会社株式を時価評価して税金がかかるであろう。アメリカの場合にはせいぜい簿価評価でキャピタルゲインには別個課税のため、会社分割がやりやすい。

中里
アメリカの場合、投資の一貫性ということで親会社が子会社に資産をうつしただけで、内部取引であるから実現と考えなくてよい、簿価で移ったと考えればよいと考えている。内部取引を実現とみないならば、持株会社の関連で必要では?

岸田 雅雄「わが国企業会計法の基本問題」商事法務、No.1443号(1996年12月)

1 企業会計法の具体的問題点

@貸借対照表能力

計算書類規則で対応化

A貸借対照表上の資産評価ー国際会計基準との調和

時価主義導入の方法

i)商法を改正
 配当可能利益の枠を広げるべきか?
 開示規制と配当規制
 強制とするか任意とするか
ii)証券取引法のみ時価評価

2 商法と証券取引法ートライアングル体制の問題点

1国際会計基準との調和

i)証券取引法上の開示規制としてのみ取り入れる

-1- 商法の規制も改正する
 Aと同様の問題が生ずる
-2- 商法の規定と異なるものは商法上は開示規制としてのみ認める
 証券取引法、商法上の情報開示に際しては評価益を計上
 商法上の配当可能利益の算定については評価益は控除する
 
 しかし、一般事業会社のデリバティブ等取引については商法そのものの改正が必要

2連結財務諸表との関係

 上場会社の被連結関係会社の多くは証券取引法適用会社ではないため、証券取引法上において規定したとしても、これが適用されないため、親会社と被連結関係会社とでは適用される会計基準が異なる可能性

3監査役監査と証券取引法

 親会社の監査役の監査権限が関連会社に及ばないこと
 実質基準による連結の範囲の決定によれば、監査役の責任が過大になる可能性


3 商法と税法

1確定決算主義

 確定決算主義は主流
 アメリカにおいても内国歳入法典446条(b)項で「課税所得計算は会計基準にしたがう」と規定があり、税務上後入先出法を採用する場合には、企業会計でもその方法を採用しなければならないなど税務会計と財務会計は密接な関係を有する
 また、確定決算主義の「課税・徴税の便宜あるいは所得操作の防止」という機能を阻害する
 
2確定決算主義と評価損益

 税法上評価損益の計上を認めるためには、商法を改正して評価損益の計上を認めるか
 税法に特別の規定が必要(法人税法は原則として評価益(法人税法25条)、評価損(33条)の計上を認めない)

3連結納税制度

白鳥 栄一「国際会計基準の基本理念」企業会計、第49巻7号(1997年7月)

1 投資家の意思決定のための会計ー変化に順応する会計

企業会計の究極的な目的はそれぞれの時代が要請する財務諸表を作成すること
しかし、利害関係者が財務諸表に寄せる期待は「経済的意思決定に資する情報の提供」にあり、不変であろう。

国際会計基準
「財務諸表の目的は、広範な利用者が経済的意思決定を行うに当たり、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの変動に関する有用な情報を提供することにある」

利害関係者のなかで一番大きなリスクを負っているのは投資家であり、投資家の必要とする情報を提供するのが財務諸表の現代的な役割である。

国際会計基準と日本基準の一番大きな違いは、分配可能利益算定を会計の最重要機能として我が国が位置づけているところに起因している。

2 広い経常取引の概念と税引後損益の重視

IAS8
期間純損益、重大な誤謬及び会計方針の変更
10項
期間純損益は経常的な事業活動からの損益と異常損益項目から成っており、損益計算上区別して開示しなければならない。

我が国の会計基準と比較すると「経常的」と「異常」の概念が大きく異なるため、実質的に大きく異なる。

経常的事業活動には本来の事業活動の他にそれに付随するあらゆる事業活動も含まれる(6項)
従って、固定資産の購入を未払金として別処理することもないし、固定資産の処分損益を異常な臨時的取引とすることもない。
そして、臨時損益として例示列挙されている項目は国際会計基準では災害損失を除き、すべて経常的な事業活動に属することになる。
また、国際会計基準では前期損益修正項目という用語はなく、重大な誤謬という項目しかない。
企業会計原則が前期損益修正としている項目は、国際会計基準では全て経常的な事業活動に属するものとして処理される(23、24項)
国際会計基準は、経済事象が異常損益に属するか否かは、その性格によって判断されるべきであって、発生頻度に関わらすべきではない(13項)としている。そして、通常、異常損益とみなされる項目として、資産の没収と地震その他の自然災害の2つの事象を挙げているに過ぎない(14項)。このように経営者の管理能力以外の事象によって生じる損益だけが国際会計基準では異常損益とされていると解される。

「法人所得税」(改訂IAS12号)
「経済的な事業活動からの損益に関する税金費用は損益計算書に表示しなければならない(77項)」
「当期中に認識された異常損益項目に関わる税金費用は個別に開示しなければならない(81項b)」
により、税引き前経常損益と経常損益に関わる税金、それと税引後経常損益が独立表示される。

我が国では当期業績主義尊重の会計慣行が広く浸透しているが、近年ROEなどが重要な指針として取り上げられるようになってきた。しかし、ここでの利益は、法人税等控除後の利益であって、税引き前の経常利益ではなく、我が国でも別の損益を重視する社会慣行が徐々に生まれつつある。

IASでは、純損益だけでなく、経常損益についても税引後の金額を求めるなど、税引後の金額を重視する姿勢を打ち出している。税効果会計も強制。

3 貸借対照表アプローチによる損益算定

商法は債権者保護を目的としているからストックを重視している。
企業会計原則はフローを重視する会計と認められているようである。

ところが、新聞、経営者の言動から判断すると、損益法の思考が広く浸透。正常な当期業績を極端に重視。また、含み損益を特別損益に計上することによって純損益を調整する含み経営を容認する社会風土がある。つまり、損益法が財産法を完全に駆逐している。

国際会計基準では、「収益とは一事業年度の資産の流入もしくは増価または負債の減少をとる経済的便益の増加であり、株主間の増減資、配当などの取引以外によって生じる株主資本の増加をもたらすものを言う」と定義されるように、貸借対照表を重視するアプローチ

損益法を重視する日本では貸借対照表の中身が軽んじられてしまう。

4 資産、負債評価は時価に限りなく接近

非貨幣性資産(費用性資産)の収益の実現には第三者との取引の終結が前提。
取引が実行されるかどうかを予想することは困難(実行可能性)
収益の金額も取引が実行されるまで的確に予想する(測定可能性)も困難
従って、費用性資産を原価で評価し、資産評価益の計上を認めないとする取得原価主義の適用根拠がある。
一方、貨幣性資産は、決済手段に用いられる現金預金と将来確定金額(ないしこれに近い額)で回収が予想される将来の現金収入項目だから、第三者に対して財貨ないし用役の提供を必要としない。それ故、貨幣性資産について実行可能性と測定可能性に特別な問題は認められない。
このことから、貨幣性資産は全て回収可能額で貸借対照表に計上されるという理論になる。回収可能額で評価する以上、貨幣性資産の価値が上昇する場合には、評価益が計上されるのは当然である。

資産の属性分類で我が国で問題とされてきたのは有価証券。
企業会計原則では有価証券を原則として取得原価評価及び換金には第三者との取引が必要であるから、有価証券は費用性資産に属すると解釈するのが多数派。

これに対して「金融商品ー開示と表示」(IAS32)金融資産に対して、
a.他の企業から現金あるいは他の金融資産を受け取ることができる契約上の権利
b.他の企業の持分金融商品が含まれると規定(5項)
していることから、全ての有価証券(関係会社株式は除く)は、売掛金、貸付金、デリバティブと同様の金融資産に属する(9項)と明示。

「金融資産及び金融負債の会計処理」(ディスカッションペーパー(国際会計基準委員会、1997年3月公表)は、金融資産および金融負債はすべて公正価値測定(5章の3、1項)としているから、貨幣性資産は回収可能額で評価するという会計の基礎理論を尊重する形になっている。
ここでは、経営者が個々の金融商品を長期または満期まで保有することを意図しているかどうかによって金融商品を区分し、原価又は時価で評価するというE48とは異なり、理論的に大きく前進したと評価できる。

我が国企業の統計資料によれば、総資産に占める貨幣性資産の割合は60%程度(連結、単体及び全産業、製造業とも大差ない)、負債の割合は70%(単体の製造業は60%)とそれぞれ非常に大きな割合を占めている。

その上、棚卸資産が低価法による先入先出法(又は移動平均法)で評価するのが国際会計基準であり、また、企業統計によると我が国企業の棚卸資産の在庫保有期間は2カ月未満であるから、棚卸資産も実質的には購入(生産)時価で評価されているとみなされる。棚卸資産は全資産の15%を占め、これら全てが時価評価であるとすれば、貸借対照表は全体として限りなく時価に近い時価で評価されているといっても過言ではないのではないだろうか。

「有形固定資産」(IAS16)では、費用性資産である有形固定資産についても時価で評価替えすることを許容代替処理として認めている(30項)。有形固定資産を評価替えした場合、実施方法、時期、会計処理等のディスクロージャーを求めている上、評価替えした場合、原価法で評価し続けていたとした場合の情報を開示することも別に求めている(70項)。これより、有形固定資産の時価による評価替えは、あくまでも例外。

「無形固定資産」についても活発な市場が存在する場合には無形固定資産についても時価による評価替えを求めようとしている(E52の62項)。

国際会計基準は、棚卸資産の低価法適用が洗替法であること、棚卸資産以外のあらゆる資産について過去に計上した評価損をその後当該資産の時価が回復した場合には、原始取得原価(償却後の原価)を上限に評価益を計上することにしているのは、直接にはEU指令を考慮に入れた産物であるが、時価会計思想にも大きく影響しているとも考えられる。

5 市場価値と割引現在価値が時価評価の主流

(1)棚卸資産

棚卸資産(IAS2)は、低価法の適用を強制している(6項)。
この場合の時価は基本的には正味実現可能価格である。資産の保有目的を尊重し、最終販売製品の正味実現可能価格に時価を求める方法を基本としている。

(2)有形固定資産、無形固定資産

「有形固定資産」(IAS16)は、有形固定資産の有用性が損傷や技術的陳腐化その他の経済的要因で損なわれた場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額しなければならないとしている(56、57項)。
他に相当期間遊休状態にある有形固定資産も評価減が必要になる場合があるとも述べている(57)。
ここでの回収可能価額は、資産の使用による回収予定価額に除却時の残存価額を加えたものとしている。

このように有形固定資産の時価は資産の使用価値によって求める評価方法のみを認めているだけで一切市場価格には言及していない上、使用価値を割引現在価値で求めることが自由選択規定となっている。

(3)減損

有形固定資産、無形資産などで一般的に言及されている資産価値の減損について価値減損の識別、回収可能価格の特定について具体的取扱が、減損プロジェクト(E55)。

「減損」では資産の回収可能価格が帳簿価格を下回った場合、減損を認識することとしている。これは「有形固定資産」の規定と同じだが、この場合の回収可能価格は、資産の正味売却価格と使用価値のどちらか高い金額を指すと定め(E55 41項、5項)、「有形固定資産」とは異なった定義となっている。

正味売却価格は独立第三者間の資産の売却取引から得られる金額から資産処分原価を差し引いた金額であると定められている。この定義によると市場取引だけでなく相対取引も含まれるので、正味売却価格は市場価値よりも広い概念であると解される。公正価値を売り手側から定義した用語と解される。

使用価値とは資産を将来も継続的に使用することによって得られるキャッシュフローと耐用年数終了時のキャッシュインフローの現在価値の合計。使用価値が現在価値概念であるとしている。

(4)廃止事業

(5)引当金
債務などの支払義務が長期に渡る場合、引当金の額は決済金額の現在価値で計上するとしている。もし、支払義務に市場価値があれば、時価測定に市場価値が優先する(35、36項)。市場価値は決済に必要な支出の現在価値を最も端的に表すと解されるからである。

(6)金融商品

1997年3月に公表されたディスカッションペーパーでは、
「企業は金融資産、負債を公正価値で測定しなければならない」とすべての金融商品について全面時価評価方式を提案している(5章の3、1項)。

この場合の公正価値は「取引の知識がある自発的な当事者間で、独立第三者間取引条件で資産が交換され、もしくは負債が決済される金額をいう」というIAS32の定義を継承する予定である。

公正価値は、正味売却価格と同じく、市場価値よりも広い概念。市場価値とは、商品など売買対象者の取引が活発に行われる市場で、入手可能な価格のこと。

活発な市場が存在する場合には、その取引所の市場価値(現在価値で評価されているはず)が公正価値になるが、取引所の市場価格がない場合には、他の合理的な方法で求められる価格が、公正価値になるとしている。

その方法として、類似商品の相場価格や内在するリスクを反映する割引率による将来の見積もりキャッシュフローの現在価値、オプション・プライシングモデル、マトリックス・プライシング等が挙げられている(5章の5など)。

(7)リース資産、負債

リース資産、負債は、リース資産の公正価値か、または最低リース料総額の現在価値のどちらか低い額で測定。

(8)年金資産、負債

(9)繰延税金資産、負債

おわりに

基本的に市場価値が時価とのスタンスを国際会計基準はとっている。
市場価値は客観的に形成される現在価値価格である上、その価格で取引を実行することも可能であると認められるからである。

市場価値が存在しないものについては、国際会計基準が採用しようとしているのは、資産・負債の継続使用を前提とする使用価値であって、しかもこの場合の使用価値は名目的な価値ではなく、長期決済が予定されている資産・負債については、それを現在価値に置き換えた割引現在価値であるとまとめられる。

中村 忠・安藤 英義・伊藤 邦雄・森川 八洲男「商法会計の問題点(シンポジウム/制度会計の重要課題と展望)」企業会計、第38巻1号(1986年1月)

森川発言131頁
商法32条2項の公正なる会計慣行の斟酌規定

包括規定のタイプ
(1)個別の計算規定、開示規定が設けられずに全部包括規定に委ねる
   カリフォルニア会社法
(2)個別の計算規定、開示規定を前提とした包括規定
   EC第4号指令

企業会計審議会からの意見書において、解釈上のみにおいて公正な会計慣行を斟酌すべきことになっているため、これを明文化すべきであること、経済環境の変化に迅速に対応すること、の二つの点から、株式会社の計算書類作成の基本原則を導入することを提案

其の効力として、

@商法に規定のない事項について公正なる会計慣行に委ねる
A会社の経営内容の適正な開示と個々の規定が両立しないときにその規定から離反する(EC第4号指令で強調されている点)
B適正な経営内容の開示のために必要な場合には、追加的情報の開示を要請する

しかし、基本原則の趣旨は現行商法の商法32条2項の趣旨に含まれること、また、株式会社だけにこれを導入することの意義が見いだせないことから受け入れられなかった。

伊藤発言136頁
カリフォルニア会社法
基本的には当期利益の計算はGAAPに従い、配当可能利益の計算については資産からのれんと研究開発費及び繰延費用を除く旨を規定している。このように、カリフォルニア会社法は配当のための利益計算と、業績表示のための利益計算を明確に分離している。

継続性の原則を商法に明文化することの問題138頁
安藤発言
継続性の原則が明定されていないことから、例えば今までとっていた方法でやると配当可能利益はこれだけだ、でも、これを変えることによって配当可能利益を少なくする方向へ持っていく可能性はまだ残されているということが言える。
しかし、継続性を持ち込むとこのような操作はできなくなる。
伊藤
変更の理由は間接開示(商法は継続性に抵抗を示したといえる)
商法は、基本的には債権者保護を基本理念とし、そのために利益概念として分配可能利益を採用してきたが、継続性を明定すると、利益の性質が変わり、基本的に業績表示利益の方に移行することになる。現行の商法のフレームワークを前提にすると商法が計算できる利益は一つであるから、トレードオフが生じる。
継続性を明定するかどうかという問題は、商法が分配可能利益から業績表示利益への移行まで踏み切れるか、という問題である。
森川
日本の商法はドイツの株式法等と非常に似ている。ドイツの株式法においては継続性が明定される方向にあり、この理由として、理論と実務の発展の中で公正な会計慣行として確立している、と述べられている。
中村
継続性については56年改正で手当済。
変更の理由を直接開示しなかったのは経済界がいやがったから。詳しく書ける付属明細書で書くようにしてくれという要請があった。

白鳥 栄一「国際会計基準と我が国の会社法」商事法務、No.1432号(1996年8月)

1 商法会計の現状

 損益計算書項目については特に定めた規定が商法にはない
 フローよりもストック重視
 「企業会計原則」ではストックよりもフロー重視
 両者は明らかに根本的に矛盾していると言える。

2 国際会計基準の基本的理念

 わが国会計は損益法を軸にしているのに対し、国際会計基準は現代的な財産法(会計帳簿と実地調査の併合)に基づいて損益を計算するアプローチ(貸借対照表アプローチ)

 企業の将来の収益性の動向は、企業が保有している経営資源の豊富さ、中身などによって大きく左右され、企業の将来性を占うには、企業の所有する経営資源情報がはるかに重要であると考えられる。
 英米諸国の会計基準が損益確定の方法として貸借対照表アプローチをとる理由はこれである。

3 国際会計基準導入に対するわが国会社法の対応

@国際会計基準導入のシナリオ

1995年7月国際会計基準委員会とIOSCOとが国際会計基準として規定すべき事項について合意
     国際会計基準委員会はここで合意した規定すべき事項を99年6月には全て完成し、
     それをIOSCOが承認する用意があると表明
1996年3月国際会計基準委員会は主に欧州の強い要請を受けて作業計画練り直し、
     1年3カ月早め、98年3月にすべてを完成するとの予定変更を表明
     SECは国際会計基準委員会の会計基準設定を支持するとの特別声明

しかし、国際会計基準が具体的にどのように導入されるかについては、IOSCOは各国企業が他国において資金調達ないし他国において資金調達ないし他国の資本市場に上場する際に、IOSCO加盟国は国際会計基準による財務諸表を受理する用意があるとの立場を表明するに過ぎない。

ただし、IOSCOの加盟団体は政府機関であり、会計の国内基準導入などにも強制力を有しているため、インパクトは強烈になると期待されている。

シナリオ

a 国内会計基準と国際会計基準とを調和、統一

理論的には最も合理的
しかし、各国の自立性を重んじなければならないことから統一は困難

b 国内会計基準のうち連結財務諸表のみ調和

ヨーロッパ大陸諸国とEUはこれを採用

c 国際会計基準による財務諸表は国内の報告目的には使用せず、国際的な報告目的のみ使用

ダブルスタンダードとなり、利用者が混乱するおそれ
この時点では日本はこれを採用すべしという意見が多数派

2商法に直接規定ある項目の国際会計基準に対する対応

(1)国際会計基準では棚卸資産に対して洗替法を採用。
   法人税法で切り放し法を採用している

(2)金銭債権の評価については、国際会計基準ではキャッシュインフロー潜在能力を現在価値で評価する基本的考え方。わが国商法では名目価値での評価が原則
また、他の資産、負債についても名目価値で評価するのではなく、資金の流入、流出が相当の期間を有する場合は、それまでの期間の金利(タイム・バリュー)を考慮に入れた実質価値(現在価値)で評価する会計方法をわが国にも導入する必要がでるだろう

(3)有価証券、デリバティブを含む金融商品全般の会計処理はこの時点では審議中。ただし、有価証券は全て時価で評価する方法が採用されることになると予想される(時価評価することが国際会計基準の定める資産の定義に最もよく合致し、企業の経済資源をもっとも正確に示すと考えられるから)。
わが国の会計では銘柄別に時価と原価を比較する銘柄別低価法を採用し、持ち合い株式など長期保有有価証券についても切り放し法による銘柄別低価法の適用を認めており、超保守主義的な会計処理を行っている。そして、多量の有価証券を保有する日本企業にとっては多量の含み益を生む温床となっている。

包括利益については(注8)近年国際的な関心事項となっており、第5回会計基準設定機関世界会議でも主要議題であった。資産の再評価益、在外子会社等の財務諸表の換算から生ずる換算損益などの取扱に焦点。

(4)国際会計基準では基本的には取得原価主義、減価償却を認めるが、固定資産の定期的評価替えも認めている点では異なる(旧イギリス連邦のほとんどの国では評価替えが一般的会計慣行)。

(5)国際会計基準では資金を将来企業に流入させることが確実と予想される支出しか資産とみなさないため、創立費、開業費、試験研究費などはこの定義を満たさないため繰り延べることは困難。
新株発行費、社債発行差金など財務関連費用は通常資金調達の控除項目とみなされる。また、基礎研究が終わって商品化が確実であり、資金流入が確実な段階にはいった開発費については必ず繰延資産とすべきことになっている。

(7)我が国商法では資本の部に含められるものは商法に規定されているものに限られるため、例えば新株引受権付き社債のうち新株引受権の評価部分や為替換算調整勘定は我が国においては負債または資産とすることになっている。
しかし、国際会計基準ではこの項目は資産ないし負債の定義を満たさないとして、資本の部の増減項目としている。また、金融商品等の評価損益の一部は、損益計算を通さずに直接資本の部で加減することが予想される。

3商法の斟酌規定による項目のIASに対する対応

(1)我が国では繰延税金資産または負債は、商法の規定する資産、負債とはなじまないとの意見が多数を占め、税効果会計自体、個別決算では適用できないとの理解が定着している。
IASでは税効果会計の適用が強制。企業買収、企業分割、合併、リストラにはすべて税金が関連しており、IASCは貸借対照表アプローチによって税効果会計を適用する方向で審議中。

(2)我が国における合併の規定では選択肢が多数ありすぎる。IASでは、企業結合会計として、合併と株式を取得することで子会社化することは経済的実質は同一であると考える。そして、この経済現象を包括的な人格の融合なのか、消滅会社の株主による現物出資なのか、というその実体を捉えることが先決となる。

(3)割賦販売の割賦基準、工事進行基準について、IASでは割賦販売については販売基準および利息部分は期間配分。工事進行基準が原則。

債務とは

そもそも「債務」とは、商法上の概念ではなく、民法上の概念です。ただし法律に直接規定があるのではなく、「債権に応ずる義務」というかたちでの位置づけがなされています。

債権とは「特定人(債権者)が特定の義務者をして一定の行為(給付)をなさしめ、その行為(給付)の結果を当該債務者に対する関係において適法に保持しうる権利」です(奥田昌道「債権総論(上)」筑摩書房4頁)。そしてこの債権の存在を前提として、一定の給付をなす(もしくはなさない)義務のこと
を債務、というわけですね。

(1). 法的債務
一般に金銭債務、物品の給付債務、役務の提供(作為)債務等を指す(新井 清光「財務会計論(第二版)」中央経済社、1996年、117頁)。
 (2). 条件付債務
法律上の債務であって、債務の確定が将来の不確実な事実の成否にかかっている債務をいい、金額及び履行期の双方が不確定の債務であって、民法上の条件を付された債務のみならず、不確定期限付債務を含む(田中誠二・久保欣哉「新株式会社会計法」1975年、321頁)。
 (3). 一定の債務とは、履行のために出捐を要しない債務。例えば、倉庫業社が寄託者に対し負担する寄託物保管・返済義務、運送人が荷送人に対して負担する運送契約上の債務、不作為債務など(弥永 真生「負債の会計と企業会計法(氈j」商事法務 No.1426 (1996年4月)3頁)。
3. 消極財産説、債権者持分説、他人資本説については法的債務説と本質的に同一であると解される(新井 清光「財務会計論(第二版)」中央経済社、1996年、118頁)。

4. しかし、日本の企業会計上における負債には、法的債務以外にも負債であるとされる項目があるとの指摘がある(矢澤 惇「企業会計法講義(改訂版)」有斐閣、1973年、4頁、新井 清光「財務会計論(第二版)」中央経済社、1996年、118頁)。

 (1). 期間損益計算の適正化の観点から負債とされるもの
 修繕引当金、特別修繕引当金等
 (2). 経済的実質優先主義の立場から負債とされるもの
  リース債務

(資料1)

主要諸国等における負債概念

A. アメリカ
負債とは、過去の取引または事象の結果として、ある特定の実体に対して、将来、資産を譲渡しまたは用役を提供しなければならない現在の債務から生じる発生の可能性の高い将来の経済的便益の犠牲である 。

B. イギリス
 負債とは、過去の取引又は事象の結果として経済的便益を移転する、ある主体の責務 。

C. 国際会計基準
 負債とは、過去の事象から発生した特定の企業の現在の責務であり、当該責務を履行するためには経済的便益を有する資源が当該企業から流出すると予想されるもの 。

D. ドイツ
負債とは、法的または経済的義務であって、その義務は将来の資産の減少につながるような経済的負担を表すものでなければならず、又、義務とは給付義務であり、数量化可能なものでなければならない 。


為替換算調整勘定が資産または負債とされる理由

外貨建取引等会計処理基準 前文 3(4)

(1)現地通貨による財務諸表そのものを重視する立場(独立事業体としての立場を重視)からは、現地通貨による子会社等の財務諸表上で資本の増減が認識された時のみに換算後の当該子会社等の資本の増減を認識すべきであり、為替換算調整勘定は、子会社等の財務諸表項目の換算過程で生ずるものであるため。

(2)為替換算調整勘定を資本の部に記載すれば、事実上、留保利益の増減を損益計算書を経由することなく認識することになり、我が国の基本的な現行制度との考えとは相容れない。

(3)為替換算調整勘定は、決算時の為替により換算した子会社等の資産・負債の差額を取得時または発生時の為替相場により換算した資本項目に一致するための、資産・負債全体に対する包括的な調整項目であると解すべきであり、資産性または負債性をもつ独立の項目を意味すべき者ではない。

  「企業会計原則」、中間財務諸表作成基準、連結財務諸表原則の法的根拠

証券取引法193条

「この法律の規定により提出される貸借対照表、損益計算書その他財務計算に関する書類は、大蔵大臣が一般に公正妥当であると認められるところにしたがって大蔵省令で定める用語、様式及び作成方法により、これを作成しなければならない。」

 財務諸表等規則第1条1項

規則に定めなきものは「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」(財務諸表等規則取扱要領第1参照)

 財務諸表等規則第1条2項

大蔵大臣が、法の規定により提出される財務諸表に関する特定の事項について、その作成方法の基準として特に公表したものがある場合には、当該基準は、この規則の規定に準ずるものとして、前項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に優先して適用されるものとする。」
 従って、企業会計原則は、間接的には「一般に公正妥当と認められる基準」として、また直接的には「大蔵大臣が特に公表した基準」として、証券取引法上の地位を与えられている。

連結財務諸表原則

連結財務諸表規則 第1条 及び連結財務諸表規則取扱要領第1並びに財務諸表等監査証明省令第4条3項1号2号により、連結財務諸表原則は法的効力を認められている。

中間財務諸表作成基準

 中間財務諸表規則 第1条、中間財務諸表規則取扱要領第5及び第6により、中間財務諸表作成基準は法的効力を与えられている。

少数株主持分

第二部連結財務諸表原則の改訂について 一 基本的考え方 2

「この度の連結原則の改訂に当たり、いずれの考え方によるべきかを検討した結
 果、本改訂連結原則では、従来どおり親会社説の考え方によることとしている。」

第二部連結財務諸表原則の改訂について  二 改訂連結原則の要点及び考え方  2.少数株主持分の表示方法

「親会社説をとる場合でも、少数株主持分については、これを負債の部に表示す
る方法と、負債の部と資本の部の中間に表示する方法とが考えられる。
現行の連結原則では、少数株主持分は負債の部に表示することとされているが、
少数株主持分は、返済義務のある負債ではなく、連結固有の項目であることを考
慮して、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとする。」

連結財務諸表原則 第四 連結貸借対照表の作成基準 四 1 

四 少数株主持分
1 子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は、少数株主持分とする。
(注解11)

連結財務諸表原則 注解11
 
注解11 少数株主持分について(第四の四の1)

1 株式の取得日又は支配獲得日の当該子会社の資本は、当該取得日又は支配
獲得日において、親会社に帰属する部分と少数株主に帰属する部分とに分け、
前者は親会社の投資と相殺消去し、後者は少数株主持分として処理するもの
とする。
2 株式の取得日後又は支配獲得日後に生じた子会社の剰余金のうち少数株主
に帰属する部分は、少数株主持分として処理するものとする。









連結調整勘定

第二部連結財務諸表原則の改訂について 二 改訂連結原則の要点及び考え方 5.資本連結の手続の明確化

連結調整勘定の計上

上記の処理を行った結果生ずる投資と資本の消去差額は、連結調整勘定と
して計上される。改訂原則では、子会社の資産及び負債を時価評価した後に
投資と資本の相殺消去を行うため、消去差額である連結調整勘定は、事実上、
のれんの性格を有する。なお、相殺消去の対象となる投資に持分法を適用し
ていた場合には、持分法評価額に含まれていた連結調整勘定も含めて、連結
調整勘定が新たに計算されることになる。
連結調整勘定の計上に関しては、少数株主持分に相当する部分についても、
親会社の持分について計上した額から推定した額を計上すべきであるとする
考え方もあるが、推定計算により少数株主持分について連結調整勘定を計上
することにはなお問題が残されているため、改訂原則では、のれんの計上は
有償取得に限るべきであるという立場から、この考え方は採用していない。

注解21 連結貸借対照表の表示方法について(第四の九)

2 連結調整勘定は、無形固定資産又は固定負債の区分に表示するものとする。
なお、連結調整勘定が借方及び貸方の双方に生ずる場合には、これを相殺し
て記載することができる。

注解23 連結損益計算書及び連結剰余金計算書の表示方法について(第五の四及び第六の二の2)

3 資産の部に計上された連結調整勘定の当期償却額は、販売費及び一般管理
費の区分に表示し、負債の部に計上された連結調整勘定の当期償却額は、営
業外収益の区分に表示するものとする。

繰延税金負債

第二部連結財務諸表原則の改訂について  二 改訂連結原則の要点及び考え方 3.税効果会計の適用

(1) 税効果会計は、会計上と税務上の収益又は費用(益金又は損金)の認識時点
の相違や、会計上と税務上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法
人税等を適切に期間配分するための会計処理であり、国際的にも広く採用され
ている。
税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が費
用として計上され、会計上の利益と課税所得とに差異があるときは、その差異
の影響が財務諸表に反映されない。このため、法人税等の額が税引前当期純利
益と期間的に対応せず、その影響が重要な場合には財務諸表の比較性を損なう
ことになる。

連結財務諸表原則 第四 連結貸借対照表の作成基準 七 3

七 税効果会計

1 連結会社の法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金については、
一時差異に係る税金の額を期間配分しなければならない。

2 一時差異とは、連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所
得の計算の結果算定された資産及び負債の金額との差額をいう。(注解15)

3 一時差異に係る税金の額は、将来の連結会計期間において回収又は支払が見込
まれない税金の額を除き、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければ
ならない。(注解16)
異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、原則として相殺してはなら
ない。
連結財務諸表原則注解15、16

注解15 一時差異について(第四の七の2)
1 一時差異には、例えば、次のものがある。
(1) 収益又は費用の帰属年度の相違により生ずる各連結会社の課税所得の合
計額と連結財務諸表上の税金等調整前当期純利益との差額
(2) 子会社の資産及び負債の時価評価により生じた評価差額のうち、課税所
得の計算に含まれていないもの
2 将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等については、一時差異と同様に
取り扱うものとする。

注解16 繰延税金について(第四の七の3)
1 繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は、回収又は支払が行われると見込
まれる期の税率に基づいて計算するものとし、繰延税金資産については、将
来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない。
2 重要性が乏しい一時差異については、繰延税金資産又は繰延税金負債を計
上しないことができる。

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