
商法と企業会計原則
発表日 1997年12月8日
発表者 市川 克也
I. はじめに
我が国商法の計算規定は、明治23年設定時以降、昭和初期に至るまで商業帳簿等に関する若干の規定が設けられていたにすぎなかった。しかし、昭和24年経済安定本部・企業会計制度対策調査会「企業会計原則」の公表以降、企業会計原則は商法計算規定の理論的拡充に大きく貢献してきた。本稿では、企業会計原則と商法の改正経緯、商法計算規定に包括規定が設けられなかった理由、商法計算規定の解釈指針等としての企業会計原則の意義、企業会計原則の商法上の位置づけ等を考察していきたい。
II. 企業会計原則と商法の主要な修正経緯(資料1参照)
III. 商法計算規定の趣旨と商法計算規定の変遷
A. 商法計算規定の趣旨 (注1)
1. 配当可能利益を適正に算定することを通じて、会社債権者と株主との利害調整を図ること(資本維持)。
2. 財産管理の受任者が、現在の株主に対して投資の意思決定に必要な情報を提供すること(状況報告、顛末
報告)及び債権者に与信の意思決定に必要な情報を開示すること。
B. 商法計算規定の変遷
1. 明治23年〜昭和37年
資産は時価(もしくは時価以下)によって評価され(商法32条2項、商法26条2項)、財産目録(商法281
条)は棚卸法によって作成されていた(貸借対照表は財産目録の要約表として作成)。
2. 昭和38年〜昭和49年
昭和37年に「企業会計原則」における提言内容を大幅に取り入れた商法改正が行われた。資産は原価によっ
て評価され(商法285条の2〔流動資産の評価〕、商法285条の3〔固定資産の評価〕、商法285条の4〔金
銭債権の評価〕、商法285条の5〔社債等の評価〕、商法285条の6〔株式の評価〕)、繰延資産(商法286
条の2、商法286条の3、商法286条の5)、引当金(商法287条の2)の計上が容認され、貸借対照表は会
計帳簿を基礎として誘導法により作成されることとなり、財産目録は株主総会に提出しなくてよいことと
なった。しかし、例えば商法34条2項のように(「営業用の固定資産に付いては前項の規定に拘わらず其
の取得原価又は製作価額より相当の減損額を控除したる価額を附することを得」)、固定資産の「相当の
減損額」とは費用配分の原則に基づく正規の減価償却とは異なり、有形固定資産の物理的減耗が現実に認
められた場合にのみ、その減損の程度を測定して評価するという解釈がとられており、公正な会計慣行か
らは認められない会計処理も容認されていた(注2)。
3. 昭和49年以降
会計帳簿から貸借対照表が作成される誘導法が採用され(商法33条2項)、財産目録は廃止される(商法
281条)。公正なる会計慣行の斟酌規定(商法32条2項)が新設され、証券取引法に基づいて作成される財
務諸表の構成要素の金額と原則として一致することになる(注3)。
IV. 企業会計原則の商法上の位置づけの変遷、及び商法計算規定の解釈指針等としての企業会計原則の 意義(資料2参照)
A. 商法計算規定の解釈指針等としての企業会計原則の意義
昭和49年「企業会計原則」の修正において前文に「企業会計原則」の位置づけが商法の解釈指針となることが
明記された(「公正なる会計慣行を要約したものとしての、「企業会計原則」は、商法の計算規定の解釈指針
として、また、監査制度の円滑な実施を確保するための基準として、重要な役割を果たすことになったのであ
る。」)。ここにおける商法の計算規定の解釈指針等としての企業会計原則の意義としては、企業会計原則が 商法及び計算書類規則に規定されている事項についての解釈指針となるのみならず、商法及び計算書類規則に 規定されていない部分に関しても商慣習法及び商慣習として援用されるということを意味すると解される。
B. 商法計算規定の解釈指針等としての企業会計原則の具体例
1. 企業会計原則は商慣習法又は商慣習として、商法及び計算書類規則に規定されていない事項について、
援用される(商法1条)。
ex.)
費用・収益の意義、及び、資産の計上・評価基準及び引当金の計上基準以外の費用・収益の認識・測定基準
継続性の原則
外貨建金銭債権の評価基準など
2. 企業会計原則は商法及び計算書類規則に規定されている事項について、公正なる会計慣行としてその解
釈指針となる(商法32条2項)。
ex.)
「取得原価・製作価額」(商法285条の2第1項、商法285条の6、商法34条)の意義
「毎決算期の相当な償却」(商法34条1項2号)の意義
「引当金」(商法287条の2)に含まれる範囲など
V. 総括と問題点
A. 商法計算規定に包括規定が設けられなかった理由
我が国においては、昭和26年以来企業会計審議会から商法の中に包括規定を設けるべしとの提言がなされ、特 に昭和37年と昭和49年の商法改正において商法計算規定において包括規定を設け、「企業会計原則」に計算規定
について包括的委任をすべきとの議論が高まった。
会計サイドにおいては、「企業会計原則」を早期に普及させ維持させるために制定法に法的根拠を求めたいと
する意見が強かったが(昭和26年「商法と企業会計原則との調整に関する意見書」等)、しかし商法サイドにお
いては、「企業会計原則」を公正なる商慣習と位置づけ包括委任するには慣習の集積が不十分ではないかとの意 見や、包括規定を置いた場合、「企業会計原則」に違反する配当が行われた場合の法的効力が大きな問題となり、 配当規制を強く要請する商法の立場から、完全な包括委任は困難との意見が根強かったため、商法計算規定に包 括規定が設けられるということは見送られ、これらの妥協として「企業会計原則」の重要な部分が個別に条文に 盛り込まれることになった。
企業会計の手続、方法は、企業活動の質的変化や量的増大に応じて、又社会経済環境の変化に応じて弾力的に
変化するものである。しかし、このような企業会計の可変性にたいして法律は弾力性を欠いているといえ、逆に 法律において会計基準をすべて明文化するという方法は困難であるといえる。このように商法計算規定に明文を もって計算規定を総て盛り込むという方法は適切とはいいがたいと考えられる。
現在では企業会計に関する公正なる商慣習が十分に集積してきたと言え、又企業活動の質的変化や量的増大が 著しい現在の環境において弾力的に対応するには、商法が「企業会計原則」に対し包括委任をなすことが適切で あると思われる。しかし、そのためには「企業会計原則」そのものが理論的に首尾一貫した体系を構築し、相応 しい内容と形式を備えるように再編成、再整備される必要があると考えられる。
(注)
(注1) 矢澤 惇「企業会計法の理論」1981年、115頁、広瀬 義州「会計基準論」中央経済社、1995年、320頁、
安藤 英義「商法会計制度論」国元書房、1985年、3頁。
(注2)鈴木 竹雄・竹内 昭夫「会社法(第三版)」有斐閣、1994年、333頁。
(注3)新井 清光・白鳥 栄一「会計基準設定機関国際会議の概要と「日本における会計の法律的及び概念的フ
レームワーク」」JICPAジャーナル、第3巻第10号(1991年10月)、29頁。
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黒澤 清・大住 達雄・井上 達雄・味村 治「商法の考え方 会計の考え方(座談会)」企業会計、第13巻12 号(1961年10月)。
黒澤 清・番場 嘉一郎・矢澤 惇・江村 稔・浅地 芳年・武田 昌輔・新井 清光「企業会計制度の基盤ーわ が国会計法制の30年」企業会計、第30巻第12号(1978年11月)。
味村 治「商法の改正がもたらしたものー関連諸法規との調和」企業会計、第14巻第12号(1962年10月)。
江村 稔・中村 忠・森川 八洲男「企業会計法の研究ー包括規定について(1)」企業会計、第28巻第1号( 1976年1月)。
中村 忠・安藤 英義・伊藤 邦雄・森川 八洲男「商法会計の問題点(シンポジウム)」企業会計、第38巻1号 (1986年1月)。
江村 稔「「企業会計原則」とその命題」産業経理、第35巻第12号(1975年11月)。
大住 達雄「「企業会計原則」への提案」産業経理、第23巻第2号(1963年2月)。
河本 一郎「商法計算規定の概要」企業会計、第30巻第12号(1978年11月)。
吉田 昴「商法計算規定の拡充」企業会計、第21巻1号(1969年1月)。
岸田 雅雄「わが国企業会計法の基本問題」商事法務、第1443号(1996年12月)。
企業会計原則、商法及び関連法令改正の主な沿革(資料1)
明治23年(1890年) 制定当初から商業帳簿の作成を規定する(商法31条)(注1)とともに、財産評価には市 場価格を付すことを規定(商法32条2項)(注2)。
明治44年(1911年) 評価規定はそれまでの時価主義から時価以下主義(商法26条2項)(注3)も容認。
昭和13年(1938年) 営業用の固定資産に原価主義、取引所の相場ある有価証券についてはその決算期1月の平 均価格を超ゆる価額を付することを得ずとする時価主義(又は時価以下主義)の採用(商法285条)(注3)。創業 費(商法286条)、社債発行差金(商法287条)、建設利息(商法291条)の繰延を容認。
昭和24年(1949年) 経済安定本部・企業会計制度対策調査会「企業会計原則」の公表(昭和24年7月9日)。
昭和25年(1950年) 商法の改正(昭和25年5月15日 法律第167号):会計規定については、法定準備金を利益準 備金(商法288条)と資本準備金(商法288条の2)の分離、新株発行費(商法286条ノ4)の繰延処理規定の新設。
昭和26年(1951年) 経済安定本部・企業会計基準審議会「商法と企業会計原則との調整に関する意見書」の公 表:財産目録の廃止(第六)、貸借対照表、損益計算書等の計算書類は正規の会計原則に従って作成すべき旨の規 定の新設すること(第六)、固定資産の評価基準は原価主義、流動資産は原価主義または低価主義を原則とするこ と(第八)、固定資産について減価償却をなすこと(第八)開業費・社債発行費・開発費・試験研究費の繰延資産 計上を認めること(第十)、資本準備金として国庫補助金・工事負担金・保険差益の追加を認めること(第十二)、 臨時巨額の損失の計上を容認すること(第十三)など。
昭和29年(1954年) 「企業会計原則」の修正:用語、字句の整備及び注解の公表。
昭和35年(1960年) 大蔵省・企業会計審議会「連続意見書第一、第二、第三」の公表(昭和35年6月22日):財 産目録の廃止(連続意見書第一)、附属明細表の作成(連続意見書第一)、計算書類の様式(連続意見書第二)、 費用配分による正規の減価償却(連続意見書第三)など。
昭和37年(1962年) 大蔵省・企業会計審議会「連続意見書第四、第五」の公表(昭和37年8月7日):棚卸資産 に対する原価主義または低価主義の適用(連続意見書第四)、開業費・社債発行費・開発費・試験研究費の繰延資 産計上(連続意見書第五)など。
昭和37年(1962年) 商法の改正(昭和37年4月20日法律第82号):資産評価原則として原価主義を採用(商法 285条の2、商法285条の3、商法285条の5、商法285条の6)。買入暖簾の計上(商法287条の7)。開業費(商法 286条ノ2)、試験研究費(商法286条ノ3)、開発費(商法286条ノ3)、社債発行費(商法286条の5)の繰延及 び引当金の計上(商法287条の2)(注4)を容認。
昭和38年(1963年) 「株式会社の貸借対照表及び損益計算書に関する規則」(法務省令三一号。現在の「株式 会杜の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」)制定。
昭和38年(1963年) 大蔵省・企業会計審議会「企業会計原則」の修正(昭和38年11月5日):商法との調整を図 るため、損益計算書の区分、資本の部の区分、有価証券の評価規定など修正。
昭和39年(1964年) 大蔵省「監査証明省令」取扱通達(蔵証第578号):証券取引法上の財務計算書類作成にあ たって商法の計算規定に反する会計処理を行った場合には、証券取引法監査上適正としない旨の通達が出された。
昭和49年(1974年) 商法の改正(昭和49年4月2日法律第21号):商業帳簿の作成に関する公正な会計慣行の斟酌 規定の新設(商法32条2項)(注6)、誘導法の明示(商法33条2項)(注7)、財産目録の作成義務の廃止(商法 281条)など。
昭和49年(1974年) 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の制定(昭和49年4月2日法律第22号): 大会社に対する会計監査人による監査の強制。
昭和49年(1974年) 大蔵省・企業会計審議会「企業会計原則」の修正(昭和49年8月30日):前文に企業会計原則」 の位置づけが商法の解釈指針となることが明記(注8)。重要性の原則の修正(注解1)、資本と利益の区分の原則 の注解修正(注解2)、包括主義損益計算書の採用(損益計算書原則二C、D)、有価証券(貸借対照表原則五B) 及び棚卸資産の評価規定の修正など。
昭和50年(1975年)「連結財務諸表原則・注解」(昭和50年6月24日)公表。
昭和50年(1975年) 計算書類規則の改正(昭和50年7月24日法務省令第41号):附属明細書に関する規定の追 加など。
昭和52年(1977年)「中間財務諸表作成基準」(昭和52年3月29日)公表。
昭和54年(1979年)「外貨建取引等会計処理基準」(昭和54年6月26日)公表。
昭和56年(1981年) 商法の改正(昭和56年6月9日法律第74号):引当金規定の改正、資本金規定の改正など。
昭和57年(1982年) 計算書類規則の改正(昭和56年6月9日法務省令第25号):会計方針等の注記事項、引当金 の部の記載方法、附属明細表の記載事項の内容の整備などのほか営業報告書に関する規定の追加など。
昭和57年(1982年)大蔵省・企業会計審議会「企業会計原則」の修正(昭和57年4月20日):引当金概念の修正 (注解18)、重要な会計方針(注解1-2)、重要な後発事象(注解1-3)の新設など。
(注)
(注1)商法31条
各商人ハ其営業部類ノ慣例ニ従ヒ完全ナル商業帳簿ヲ備フル責アリ殊ニ帳簿ニ日日其取扱ヒタル取引、他人トノ間 ニ成立チタル自己ノ権利義務、受取リ又ハ引渡シタル商品、支払ヒ又ハ受取リタル金額ヲ整斉且明瞭ニ記入シ又月 月其家事費用及ヒ商業費用ノ総額ヲ記入ス
(注2)商法32条2項
財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ルニハ総テノ商品、債券及ヒ其ノ他総テノ財産ニ当時ノ相場又ハ市場価値ヲ付ス
(注3)商法26条2項
財産目録ニハ動産、不動産、債権其他ノ財産ニ価額ヲ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要ス其ノ価額ハ財産目録調製ノ時 ニ於ケル価額ニ超ユルコトヲ得ス
(注4)商法285条
財産目録ニ記載スル営業用ノ固定財産ニツイテハ其ノ取得価額又ハ製作価額ヲ超ユル価額、取引所ノ相場アル有価 証券ニツイテハ其の決算期約一月ノ平均価格ヲ超ユル価額ヲ附スコトヲ得ズ
(注5)商法287条の2第1項
特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為ニ引当金ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルトキハ其ノ目的ヲ貸借対照表ニ於イテ 明ラカニスルコトヲ要ス
(注6)商法32条2項
商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ
(注7)商法33条2項
貸借対照表ハ開業ノ時及ビ毎年一回一定ノ時期、会社ニ存リテハ成立ノ時及毎決算期ニ於イテ会計帳簿ニ基キ之ヲ 作ルコトヲ要ス
(注8)
「公正なる会計慣行を要約したものとしての、「企業会計原則」は、商法の計算規定の解釈指針として、また、監 査制度の円滑な実施を確保するための基準として、重要な役割を果たすことになったのである。」
1974年(昭49)の「企業会計原則」修正
1974年(昭49)の第3次修正は,商法監査の導入にともなう商法監査と証取法監査からなる監査制度の一本化を前提としたものであり、その要点を示せばつぎのとおりである。
@一般原則
正規の簿記の原則および明瞭性の原則の注解として重要性の原則(注解1)を修正するとともに,資本と利益の区別の原則に注解(注解2)を付して商法規定との調整がはかられた。また保守主義の原則(注解4)、継続性の原則(注解3)に対して新たに注解を付して補足説明がはかられている。
A損益計算書原則
当期業績主義損益計算書から包括主義損益計算書に変更するとともに,法人税等の当期純利益算出前控除,特定引当金繰入・取崩額との関連における税引前当期純利益と税引前当期利益の区別,末処分利益算出過程の表示等が指示された。このうち,特定引当全の計に関する指示は1982年(昭57)の第4次修正で削除された。
B貸借対照表原則
有価証券および棚卸資産の評価基準の整備,長期前払費用の表示区分の修正等がはかられた。また負債性引当金以外の引当金の表示が指示されたが,これは第4次修正で削除された。債権の貸借対照表価額(注解23)、営業権(注解25)が新設され商法との調整が図られた。
1982年(昭57)の修正
1982年(昭57)の第4次修正は,1981年(昭56)の商法改正との関連で修正されたものであるが,商法改正そのものが会計理論に合致した改正であったところから,理論的整備に重点がおかれた修正であった。その要点を示せばつぎのとおりである。
@引当金概念の明確化
注解の注18で引当金の計上要件を明示し,引当金概念を明確化するとともに,具体的な科目例示がなされている。
A株式払込剰余全の内容変更
1981年(昭56)の改正商法が資本金について額面価額主義から発行価額主義に改めたことにより,株式発行差金を削除し,発行価額と資本組入額の差額をすべて株式払込剰余金として示すことにした。
Bディスクロージャーの拡充
重要な会計方針の開示(注解1-2)、後発事象の開示(注解1-3)等を内容としたディスクロージャ一の拡充がはかられた。
有価証券の評価の変遷
(1)昭和38年以前
(企業会計原則の立場)
・一時所有の有価証券は時価評価
・投資有価証券は原価評価
・売却を目的としない長期保有の投資有価証券は固定資産であり低価法適用は否定。
(商法の立場)
・流動資産、固定資産区別せずに時価以下主義
昭和13年 商法(商法285条)
取引所の相場ある有価証券についてはその決算期1月の平均価格を超ゆる価額を付することを得ずとする時価主義(又は時価以下主義)の採用
昭和29年「企業会計原則」B/S原則五B
市場性ある有価証券で一時所有のものは、原則として、時価によって評価する。但し、市場の状況などを勘案し、適当な減価を考慮して評価することができる。
昭和29年当初「企業会計原則」B/S原則五F
投資は、市場価格の変動にかかわらず、原則として取得原価又は投資価値で記載する。
(2)昭和38年〜昭和49年
(企業会計原則の立場)
・一時保有の有価証券は原価評価を原則とし、低価法も容認。
・投資有価証券は原価評価。
・「商法と企業会計原則との調整」(大蔵省・企業会計審議会、昭和44年)第三において投資有価証券に対する低価法適用を否定。
(商法の立場)
・保有目的により低価法適用を決定することは恣意性が介入するため、取引所の相場の有無により低価法の適用を決定すべき。そのため、取引所の相場のある投資有価証券にも低価法が適用される。
商法第285条ノ5〔社債等の評価〕
「社債ニ付テハ其ノ取得価額ヲ附スルコトヲ要ス但シ其ノ取得価額ガ社債ノ金額ト異ナルトキハ相当ノ増額又ハ減額ヲ為スコトヲ得
第二百八十五条ノ二第一項但書及第二項〔流動資産に時価を付す場合〕ノ規定ハ取引所ノ相場アル社債ニ、前条第二項〔取立不能見込額の控除〕ノ規定ハ取引所ノ相場ナキ社債ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ハ国債、地方債其ノ他ノ債券ニ之ヲ準用ス」
第285条ノ6〔株式・持分の評価〕
株式ニ付テハ其ノ取得価額ヲ附スルコトヲ要ス
第二百八十五条ノ二第一項但書〔流動資産の時価評価〕ノ規定ハ取引所ノ相場アル株式ニ、同条第二項ノ規定ハ取引所ノ相場アル株式ニシテ子会社ノ株式以外ノモノニ之ヲ準用ス
取引所ノ相場ナキ株式ニ付テハ其ノ発行会社ノ資産状態ガ著シク悪化シタルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ要ス
第一項及前項ノ規定ハ有限会社ノ社員ノ持分其ノ他出資ニ因ル持分ニ之ヲ準用ス」
昭和38年修正「企業会計原則」B/S原則五B
市場性ある有価証券で一時所有のものは、原則として取得原価で評価する。但し、有価証券の市場価格が著しく下落し回復不能でないと認められるときは、時価まで価額を引き下げなければならない。市場性ある有価証券で一時所有のものの時価が取得原価よりも下落した場合は時価によって評価する方法を採用することができる。
昭和38年修正「企業会計原則」B/S原則五F
投資は原則として、取得原価で記載する。
(3)昭和49年以降
・一時所有か長期保有かに関係なく、原価評価を原則とし例外として取引所の相場があれば、低価法の適用を認める(但し、子会社株式を除く)。
昭和49年修正後「企業会計原則」B/S原則五B
有価証券については、原則として購入代価に手数料等の付随費用を加算し、これに平均原価法等の方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、取引所の相場のある有価証券については、時価が著しく下落した時には回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。取引所の相場のない有価証券のうち株式については、当該会社の財政状態を反映する株式の実質価額が著しく低下したときには、相当の減額をしなければならない。
資本の部の変遷
(1)「企業会計原則・注解」の変遷
1 昭和49年以前
(貸借対照表原則四(三)B、注解2、旧注解7)
剰余金とは会社の純資産額が法定資本の額を超える部分をいい、剰余金は利益剰余金と資本剰余金に区分される。
資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、株式発行差金(額面超過金)、減資差益、合併差益、再評価積立金、資本的支出に充てられた国庫補助金及び工事負担金、資本補填を目的とする贈与剰余金又は債務免除益、貨幣価値の変動に基づき生じた保険差益等による(注解7)。
利益剰余金は、利益の留保額からなる剰余金であって、利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益剰余金に区分。
2 昭和49年以降(注解19)
剰余金は利益準備金、資本準備金及びその他の剰余金に区分。
資本準備金として認められる資本剰余金は商法上限定されており、株式払込剰余金、減資差益、合併差益等に限定される。
利益剰余金は利益を源泉とする剰余金である。
(2)「企業会計原則」における資本分類について
昭和49年改正前まで「企業会計原則」は取引発生源泉別分類を基礎とし、資本的支出にあてられた国庫補助金及び工事負担金、資本補填を目的とする贈与剰余金又は債務免除益、貨幣価値の変動に基づき生じた保険差益等を資本剰余金と考えていた。昭和49年の改正により、商法との調整が図られた。
(2)商法の資本分類
商法上、資本とは株主が債権者のために設定した債務に対する担保物をいう。従って、資本の分類は法的維持・拘束性の観点から行われ、自己資本をまず配当不能なものとして資本金と法定準備金に分類し、配当可能なものとして純資産から資本金及び法定準備金を控除した剰余金として区分している。
引当金
(1)昭和57年の商法、企業会計原則の修正
第287条ノ2〔昭三七法八二本)
特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為ノ引当金ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルトキハ其ノ目的ヲ貸借対照表ニ於イテ明ラカニスルコトヲ要ス
「企業会計原則注解14」(昭和49年)
負債性引当金以外の引当金を計上することが法令によって認められているときは、当該引当金の繰入額又は取崩額を税引前当期利益の次に特別の項目を設けて記載し、税引前当期利益を表示する。この場合には、当期の負担に属する法人税額、住民税額等を税引前当期利益から控除して当期利益を表示する。なお、負債性引当金以外の引当金の残高については、貸借対照表の負債の部に特定引当金の部を設けて記載する。
・租税特別措置法上の引当金及び特別法上の引当金は、特定引当金として、F/S計上(利益留保性引当金の計上を容認していた)。
ex.)P/Lのフォーム
税引前当期純利益
ヲ 特定引当金取崩額
ァ 特定引当金繰入額
税引前当期利益
法人税・住民税
当期利益
「企業会計原則注解18」(昭和49年)
将来において特定の費用(又は収益の控除)たる支出が確実に起こると予想され、当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており、当該支出の金額を合理的に見積もることができる場合には、その年度の収益の負担に属する金額を負債性引当金として計上し、特定引当金と区別しなければならない。
第287条ノ2〔昭五六法七四本条改正)
特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為ノ引当金ハ其ノ営業年度ノ費用又ハ損失ト為スコトヲ相当トスル額ニ限リ之ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルコトヲ得
・利益留保性引当金を排除
「企業会計原則注解18」
将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部に記載するものとする。
負債性引当金等に係る企業会計原則注解の修正に関する解釈指針(昭和57年4月20日)
・商法改正を受けた引当金概念の改正
・評価性引当金と負債性引当金を同一の会計的性格(将来の費用又は損失)と考え一本化。
・減価償却引当金から減価償却累計額へ変更(引当金は将来の見積支出額を支出よりも前の年度に費用として配分したもの、減価償却累計額は過去の確定支出額を支出よりも後の年度に費用として配分したもの)。
・期間損益計算を重視する立場から、債務性の有無は無意味だが、債権者保護の立場からは、債権者の持分に属するかどうかは重要である。しかし、企業会計原則の立場を尊重して商法は引当金の部を設けることを例外とした。
(2)商法上の引当金
商法287条の2
「特定の支出又は損失に備ふる為の引当金は其の営業年度の費用又は損失と為すことを相当とする額に限り之を貸借対照表の負債の部に計上することを得」
・債務性のない引当金を指すと解釈される(修繕引当金、特別修繕引当金)。
・利益留保性引当金を排除。
・引当金の計上は処分可能利益を控えめに計上し、債権者の担保となる会社財産の充実を図ることになり好ましい。
(3)計算書類規則における表示
流動負債又は固定負債として表示(原則)
但し、商法287条の2にあたる引当金は商法287条の2の引当金であることを注記するか、又は引当金の部を設けて表示。
特別法上の引当金は4要件を満たさない場合は引当金の部に表示し、法令の条項を注記(強制)。
(4)企業会計原則上の引当金
条件付債務 債務性のある引当金は商法上負債として必ず計上しなければならない
(退職給与引当金、製品保証引当金など)
条件付債務以外 287条の2の引当金
貸倒引当金 285条の4第2項 金銭債権の取立不能見込額
(5)租税特別法上の準備金
意義 税法上の恩典により特別に損金算入が認められる準備金
種類 価格変動準備金、海外投資等損失準備金、電子計算機買戻損失準備金
昭和57年以前
特定引当金とする
昭和57年以後
4要件を満たすもの 引当金
4要件を満たさない 利益処分形式により積立金として資本の部に掲載する
(6)特別法上の準備金
昭和57年以前
特定引当金
昭和57年以後
4要件を満たすもの 引当金(法令を注記)
4要件を満たさない 引当金の部を設け法令を注記(強制)(計規33条4項、財規54条)
企業会計原則 黒澤清 137頁
昭和37年商法改正(昭和37年4月20日法律第82号)
株式会社の計算に関する規定は妥当性を欠くところが多かったので、資産評価、繰延資産、引当金等について改正が行われた。計算書類の表示方法については、翌昭和三八年に「株式会社の貸借対照表及び損益計算書に関する規則」(法務省令三一号。現在の「株式会杜の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」)が制定された。
@流動資産評価の原則(商法285条の2)の新設
第285条ノ2〔流動資産の評価〕
「流動資産ニ付テハ其ノ取得価額又ハ製作価額ヲ附スルコトヲ要ス但シ時価ガ取得価額又ハ製作価額ヨリ著シク低キトキハ其ノ価格ガ取得価額又ハ製作価額迄回復スルト認メラルル場合ヲ除クノ外時価ヲ附スルコトヲ要ス前項ノ規定ハ時価ガ取得価額又ハ製作価額ヨリ低キトキハ時価ヲ附スルモノトスルコトヲ妨ゲズ」
A固定資産評価の原則(商法285条の3)の新設
第285条ノ3〔固定資産の評価〕
「固定資産ニ付イテハ其ノ取得価額又ハ製作価額ヲ附シ毎決算期ニ相当ノ償却ヲ為スコトヲ要ス固定資産ニ付キ予測スルコト能ハザル減損ガ生ジタルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ要ス」(昭和49年に34条1項2号に移行)
B金銭債権評価の原則(商法285条の4)の新設
第285条ノ4〔金銭債権の評価〕
「金銭債権ニ付テハ其ノ債権金額ヲ附スルコトヲ要ス但シ債権金額ヨリ低キ代金ニテ買入レタルトキ其ノ他相当ノ理由アルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ得金銭債権ニ付取立不能ノ虞アルトキハ取立ツルコト能ハザル見込額ヲ控除スルコトヲ要ス」
C社債等の評価の原則(商法285条の5)の新設
第285条ノ5〔社債等の評価〕
「社債ニ付テハ其ノ取得価額ヲ附スルコトヲ要ス但シ其ノ取得価額ガ社債ノ金額ト異ナルトキハ相当ノ増額又ハ減額ヲ為スコトヲ得第二百八十五条ノ二第一項但書及第二項〔流動資産に時価を付す場合〕ノ規定ハ取引所ノ相場アル社債ニ、前条第二項〔取立不能見込額の控除〕ノ規定ハ取引所ノ相場ナキ社債ニ之ヲ準用ス前二項ノ規定ハ国債、地方債其ノ他ノ債券ニ之ヲ準用ス」
D株式などの評価の原則(商法285条の6)の新設
第285条ノ6〔株式・持分の評価〕
「株式ニ付テハ其ノ取得価額ヲ附スルコトヲ要ス第二百八十五条ノ二第一項但書〔流動資産の時価評価〕ノ規定ハ取引所ノ相場アル株式ニ之ヲ準用ス取引所ノ相場ナキ株式ニ付テハ其ノ発行会社ノ資産状態ガ著シク悪化シタルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ要ス」(昭和49年に子会社株式に低価法適用を認めないことに改正)
Eのれん評価の原則(商法285条の7)の新設
第285条ノ7〔のれんの評価〕
「暖簾ハ有償ニテ譲受ケ又ハ合併ニ因リ取得シタル場合ニ限リ貸借対照表ノ資産ノ部ニ計上スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ取得価額ヲ附シ其ノ取得ノ後五年内ニ毎決算期ニ於テ均等額以上ノ償却ヲ為スコトヲ要ス」
F開業費の貸借対照表能力に関する原則(商法286条の2)の新設
第286条ノ2〔開業準備費の繰延〕
「開業準備ノ為ニ支出シタル金額ハ之ヲ貸借対照表ノ資産ノ部ニ計上スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ開業ノ後五年内ニ毎決算期ニ於テ均等額以上ノ償却ヲ為スコトヲ要ス」
G試験研究費及び開発費の貸借対照表能力に関する原則(商法286条の3)の新設
第286条ノ3〔試験研究費・開発費の繰延〕
「左ノ目的ノ為ニ特別ニ支出シタル金額ハ之ヲ貸借対照表ノ資産ノ部ニ計上スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ支出ノ後五年内ニ毎決算期ニ於テ均等額以上ノ償却ヲ為スコトヲ要ス
一新製品又ハ新技術ノ研究
二新技術又ハ新経営組織ノ採用
三資源ノ開発
四市場ノ開拓」
H社債発行費の貸借対照表能力に関する原則(商法286条の5)の新設
第286条ノ5〔社債発行費用の繰延〕
「社債ヲ発行シタルトキハ其ノ発行ノ為ニ必要ナル費用ノ額ハ之ヲ貸借対照表ノ資産ノ部ニ計上スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ社債発行ノ後三年内ニ、若シ三年内ニ社債償還ノ期限ガ到来スルトキハ其ノ期限内ニ毎決算期ニ於テ均等額以上ノ償却ヲ為スコトヲ要ス」
I引当金の貸借対照表能力に関する原則(商法287条の2)の新設
第287条ノ2〔引当金〕
「特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為ノ引当金ハ其ノ営業年度ノ費用又ハ損失ト為スコトヲ相当トスル額ニ限リ之ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルコトヲ得」
商法会計 野坂テキスト54頁
制度趣旨
(債権者保護に重点を置いた)株主と債権者の利害調整
現行商法の債権者保護について
いわゆる物的会社(有限会社、株式会社)は、間接有限責任(商法200条1項)を本質とするため、会社債権者保護が必要となり、特に債権者の唯一の担保としての会社財産の充実を図るとともに資本維持を図ることが必要となる(資本充実・維持の原則)。
そこで、資本金・法定準備金(商法288条、288条の2)や配当制限に関する厳格な規定(商法290条)を設けることにより維持すべき資本を明確にし、また資産評価に関して取得原価より低い価額による評価の規定(商法34条、285条、285条の2、285条の4、285条の5、285条の6)を設けたり、さらに資産認識については換金価値のない繰延資産や営業権の早期償却を求める規定(商法285条の7乃至287条)を設け、これらにより会社財産の充実を図り、資本維持の強化を図っている。
会計の目的
@間接有限責任制度(商法200条1項)を前提とした債権者のための資本維持計算
A株主のために委託した資金に対する受託責任の解明
B配当可能利益の財源とその算出過程の適法な算定による両者の利害調整
保護すべき利害関係者
現在株主、現在債権者中心。
財務諸表の作成目的
計算書類(損益計算書、貸借対照表、営業報告書、利益の処分又は損失の処理に関する議案)及び附属明細書。計算書類は株主総会提出、本店などに備置し、株主、債権者に閲覧。一般株主、債権者への公告。
会計処理基準
商法の計算に関する規定
表示基準
計算書類規則
開示方法
直接開示 株主(株主総会召集通知状に含めて送付。商法283条2項)
間接開示 株主・債権者(本支店に置き、閲覧。商法282条)
3/100以上を保有する株主には会計帳簿の閲覧(商法293条の6)
一般株主・債権者に対し中・小会社はB/S又はその要旨(商法283条)、
大会社はP/L、B/S又はその要旨(商法特例法16条2項)