4.国際課税


1.国際課税の基本

1.国際課税(所得課税)の基本的仕組み
2.国際課税(所得課税)の基本的仕組み
3.海外進出に対する日本法人の所得に対する我が国における課税、及び日本における外国法人の所得に対する課税について論じなさい。


2.国際的租税回避に対する国際租税法

1.タックス・ヘイブン対策税制について
2.移転価格税制について
3.過少資本税制について
4.親子会社間取引の課税上の問題点について論じなさい。



1.国際課税の基本

1.国際課税(所得課税)の基本的仕組み

国際課税とは、国際的経済活動に対する課税を意味する。また、国際租税法とは、国際課税に関する法である。

今日、経済活動は一国の範囲にとどまらず、国際的な取引が盛んとなっている。このような国際取引に対し、国外における課税問題を考慮しなければならなくなるので、国際取引上の課税の仕組みたる国際課税が必要となってくるのである。
そして、国際課税の特色は、基本的には国家主権に基づく課税権によって課される租税であるが、同時に国家間の租税条約による定めがあることである。租税条約の特徴は、国家の課税権を制約し、その国内法を協調させているという特色をもつ。このように、国際課税に関する国際租税法は、各国の国内法及び租税条約により構成される。

まず、国家の課税権をどのように考えるかについて、国家の課税権を属人的に捉えて、自国の国民や法人の所得につき、その源泉の場所を問わず、全てを課税の対象とする全世界所得課税主義と、国家の課税権を属地的に捉えて、領域内に源泉のある所得を課税の対象とする領土内所得課税主義があるが、各国は2つの内のいずれか、もしくはその折衷方式を用いている。

今日においては、居住者もしくは内国法人についてはその全世界の所得に対して課税され、非居住者および外国法人についてはその国内に源泉のある所得について課税されるという原則が一般的である。

そして、そのように課税しうる根拠は、企業が投資家が国家から利益やサービスを受けているという経済的結び付きの存在があげられる。また、公平負担の原則を考えるとき、非居住者の所得の把握は国内法の枠内では困難であることから、能力説を考えることは困難であり、非居住者に対して能力説を適用することは限界があるといえる。

次に、国際租税法の目的は、国際取引において経済的中立性を維持する課税がなされるか、国家主権の課税権をどのように調整するか、国際的脱税や国際的租税回避にどのように対処するか、ということ等である。特に、国際的二重課税の排除は最も重要な問題として議論されてきたが、国際租税法の原則が成立した背景は、各国が協議したというよりも、各国における企業等の投資活動への影響、すなわち資本の国際的移動という配慮から形成されてきたと言え、国際的競争力を維持するための措置たる国際的二重課税を排除することが必要であったからである。

このような経済的中立性として、資本輸出中立性、資本輸入中立性、国家的中立性の3種類がある。

資本輸出中立性とは、国内企業もしくは居住者がその投資を国内で行うか、国外で行うかについて、課税がその選択に影響しないことである。これを維持する方法として、外国税控除がある。

資本輸入中立性とは、同一の市場において活動する企業が同一の税率で課税される場合において保たれるものであり、国外所得について免税を求め、国外における競争について中立性が保たれることである。これを維持する方法として、国外所得免除制度がある。

国家的中立性とは、政府と企業によって共有される投資の見返り利益は全体としては投資が国内で行われても国外で行われても同一であることである。このような中立性は、外国税額が費用として企業の所得計算において必要費用として控除されることによって保たれる。

次に、非居住者及び外国法人についての課税は、国内に源泉のある所得についてのみ課税されるのが一般的である。国内源泉所得については、原則として国内法に従って課税が行われるが、租税条約について特段の定めがある場合は、租税条約の定めるところによる(所得税法162条、法人税法139条)。

我が国においては、国内に支店工場その他事業を行う一定の場所たる恒久的施設を有する非居住者または外国法人は全ての国内源泉所得について居住者または内国法人に準じて所得税又は法人税が課される。

逆に、恒久的施設がなければ課税しない、という原則は貿易取引や事業の準備活動などを課税の対象から除外することによって国際的経済取引活動に対する中立性を保持しようとするものであり、今日では国際法の一般原則となっている。
国内で建設作業等を1年を超えて行う非居住者または外国法人および国内に代理人等をおく非居住者又は外国法人の場合等は、国内源泉所得の種類に応じ、建設作業等に係る事業ないし代理人等を通じて行う事業に帰されるものである限り、右と同様に課税される(所得税164条、法人税141条)。

これに対して、非居住者または外国法人が恒久的施設を有しない場合は、その国内源泉所得に対しては源泉徴収による課税がなされる(所得税法169条170条178条179条212条213条)。

ただし、上記のような国内法による課税方法は、租税条約によって修正されている場合が少なくない。例えば、国内法では恒久的施設を有する場合は、全ての国内源泉所得を課税対象とする全所得主義が採られているのに対し、最近の租税条約では、恒久的施設に帰属する国内源泉所得についてのみ居住者または内国法人に準じて課税を行うことにしている(帰属所得主義)。


2.国際課税(所得課税)の基本的仕組み

租税法 金子宏 293頁 国際課税の理論と課題 水野忠恒 3頁 税法入門 144頁
国際課税の意義

国際的経済活動に対する課税

国際租税法の意義

国際課税に関する法

国際課税の必要性

今日、経済活動は一国の範囲にとどまらず、国際的な取引が盛んとなっている。このよう な国際取引に対し、国外における課税問題を考慮しなければならなくなるので、国際取引 上の課税の仕組みたる国際課税が必要となってくるのである。

国際課税の特色

基本的には国家主権に基づく課税権によって課される租税であるが、同時に国家間の租税条 約による定めがあることである。租税条約の特徴は、国家の課税権を制約し、その国内法を 協調させているという特色をもつ。このように、国際課税に関する国際租税法は、各国の国 内法及び租税条約により構成される。

国家の課税権

国家の課税権をどのように考えるか

全世界所得課税主義(world-wide system)

国家の課税権を属人的に捉えて、自国の国民や法人の所得につき、その源泉の場所を問わず、 全世界の所得(the world-wide income)を課税の対象とする

領土内所得課税主義(terrioriality principal)

国家の課税権を属地的に捉えて、領域内に源泉のある所得を課税の対象とする

国際課税の一般的な課税原則

今日においては、居住者もしくは内国法人についてはその全世界の所得に対して課税され、 非居住者および外国法人についてはその国内に源泉のある所得について課税されるという原 則が一般的である(国際課税の理論と課題 水野忠恒 8頁)。

課税権の範囲(課税管轄)の根拠

経済的帰属ないし結び付き(nexus)説
企業が投資家が国家から利益やサービスを受けているという経済的結び付きの存在

国際租税法では、租税利益説が広く妥当する(国際課税の理論と課題 水野忠恒 7頁)

経済的帰属ないし結び付き(nexus)説は公平の基準としても理解される

公平の基準

国家より等しくサービスを受けるものは等しく課税されるべき

能力説(ability to pay )

非居住者の所得の把握は国内法の枠内では困難であることから、能力説を考えることは困 難であり、非居住者に対して能力説を適用することは限界があるといえる。

公平の原則に関するマスグレイブの国家間の公平

多国籍企業などの全世界の所得は、企業の収益に応じて一定の按分基準によって国家間で 配分すべき
担税力に応じて課税すべしとする国内法の一般原則と異なる
非居住者に対する課税は、国家間の公平という従来とは異なったアプローチを考えるべき

国際課税の目的

国際取引において経済的中立性を維持するにはどのような課税がなされるべきか
国際的租税回避、国際的脱税に対応するにはどのような国際租税法上の対応が必要か。

背景

国家はその課税権を広く行使することが認められているのに、国家が課税権の調整をなすため国際課税特有の措置を採用した背景は、国際競争力を維持するというその国自身の利益があったためである(国際課税の理論と課題 水野忠恒 6頁)。

国際的二重課税の排除

国家主権の課税権を調整し、国際的経済活動における中立性を維持するための国際課税特有の措置

経済的中立性の意義

資本輸出中立性の意義

国内企業もしくは居住者がその投資を国内で行うか、国外で行うかについて、課税がその選 択に影響しないことである。
これを維持する方法として、外国税額控除がある。(国外に向けられた投資に対する租税の重複が排除される)

資本輸入中立性の意義(国際的競争における中立性)

同一の市場において活動する企業が同一の税率で課税される場合において保たれるものであ り、国外所得について免税を求め、国外における競争について中立性が保たれることである。
これを維持する方法として、国外所得税免除制度がある。
(オフショア・タックスヘイブンの懸念)

国家的中立性の意義

政府と企業によって共有される投資の見返り利益は全体としては投資が国内で行われても国 外で行われても同一であることである。
外国税額が費用として企業の所得計算において必要費用として控除されることによって保た れる。

非居住者及び外国法人についての課税(税法入門 144頁)

一般的原則

国内に源泉のある所得についてのみ課税されるのが一般的である。国内源泉所得については、原則として国内法に従って課税が行われるが、租税条約について特段の定めがある場合は、租税条約の定めるところによる(所得税法162条、法人税法139条)。

非居住者または外国法人に対する我が国の課税方法(租税法 金子宏 302頁)

全所得主義(entire income princiapl)

1.恒久的施設を有する非居住者または外国法人(所得税法164条1項1号法人税法141条 1号)

全ての国内源泉所得について居住者または内国法人に準じて所得税又は法人税が課される。

恒久施設の意義
国内に支店工場その他事業を行う一定の場所
恒久的施設がなければ課税しない、という原則が国内法上採用されているが、貿易取引や事 業の準備活動などを課税の対象から除外することによって国際的経済取引活動に対する中立 性を保持しようとするものであり、今日では国際法の一般原則となっている。

全所得主義に類する課税

2.国内で建設作業等を1年を超えて行う非居住者または外国法人(所得税164条1項2号、 法人税141条2号)。

建設作業等に帰せられる所得について居住者または内国法人に準じて所得税又は法人税が 課される。

3.国内に代理人等をおく非居住者又は外国法人の場合(所得税法164条1項3号、法人税法 141条3号)

代理人等の事業に帰せられる所得について居住者または内国法人に準じて所得税又は法人税 が課される。

その他の課税

4.その他の非居住者・外国法人(所得税法164条1項4号、法人税法141条4号)

国内にある資産の運用・保有または不動産の譲渡等から生ずる所得、および国内において人的 役務の提供を主たる内容とする事業を行う場合の当該人的役務の対価ならびに国内にある不動 産の貸付などの対価に係る所得に対して課税される。

5.所得税法164条・法人税法141条のいずれにも該当しない場合

非居住者または外国法人が恒久的施設を有しない場合は、その国内源泉所得に対しては源泉徴 収による課税がなされる(所得税法169条170条178条179条212条213条)。

租税条約による修正

ただし、上記のような国内法による課税方法は、租税条約によって修正されている場合が少なくない。例えば、国内法では恒久的施設を有する場合は、全ての国内源泉所得を課税対象とする全所得主義が採られているのに対し、最近の租税条約では、恒久的施設に帰属する国内源泉所得についてのみ居住者または内国法人に準じて課税を行うことにしている(帰属所得主義)。

国際的租税回避に対する国際租税法

移転価格税制
過少資本税制
タックス・ヘイブン対策税制

3.海外進出に対する日本法人の所得に対する我が国における課税、及び日本における外国法人の所得に対する課税について論じなさい。

租税法第5版 金子宏 293頁 租税法入門第三版 137 頁

海外進出する日本法人および日本における外国法人の経済活動に対する課税は、国際課税の仕組みを基準とすることになる。国際課税とは国際的経済活動に対する課税であり、国際租税法とは国際課税に関する法である。
国際課税は基本的には国家主権に基づく課税権によって課される租税であるが、同時に国家間の租税条約による定めに拘束されるという特色がある。租税条約は、国家の課税権を制約し、その内国法を協調させているという特色をもつ。このように国際課税に関する国際租税法は各国の国内法及び租税条約により構成されることになる。
次に、国際課税において国家の課税権をどう考えるかについて、全世界所得課税主義と領土内所得課税主義がある。
全世界所得課税主義とは、国家の課税権を属人的に捉えて、自国の国民や法人の所得につきその所得の源泉の場所を問わず全世界の所得を課税の対象とするものであり、領土内所得課税主義とは、国家の課税権を属地的に捉えて、領土内に源泉のある全ての所得に対して課税の対象とするものである。
各国はこれらのいずれか、もしくはこれを折衷した課税原則を採用するが、今日において一般的であるのは、居住者もしくは内国法人についてはその全世界所得に対して課税され、非居住者および外国法人に対しては、その国内に源泉のある所得について課税されるという課税原則であり、我が国においても採用されている。
海外進出する日本法人の海外における所得は、原則としてその全世界所得について課税されるが、国外源泉所得についてはその源泉地国で所得に対する課税が行われるため、これに対して中立性を維持する観点から二重課税を排除する措置が採られる。ここにあげる中立性とは、資本輸出中立性、資本輸入中立性、国家的中立性があげられる。
資本輸出中立性とは、居住者ないし内国法人が国内で投資するか国外で投資するかについて課税が中立的であることであり、これを維持する二重課税の排除の方法として外国税額控除法がある。資本輸入中立性とは国際競争における中立性と呼ばれ、同一市場において課税が中立的であることを意味し、これを維持する二重課税の排除の方法として、国外源泉所得に対して免税を求める国外所得免除制度がある。国家的中立性とは、政府と企業で共有する投資の利益は国内、国外を問わず同一であることであり、外国税額が費用として必要経費として算入されることによって達成しうる。
我が国の所得税法及び法人税法は、税額控除法によって国外源泉所得を排除することにしている(所得税法95条法人税法69条)。また、外国税額を必要経費ないし損金に算入する方法も選択的に認められている(所得税法46条法人税法41条)。
ただし、外国の租税額のうち、我が国の税負担水準を超えるものについては、二重課税は存在しないから、外国税額控除の対象から除外されている。
日本における外国法人や非居住者で我が国において源泉のある所得は、我が国の所得税法ないし法人税法によって課税される(所得税法5条2項、7条1項3号、法人税法4条2項、9条)。
所得の源泉に関する法原則はソース・ルールと呼ばれるが、我が国のソース・ルールは所得税法161条および法人税法128条は13種類の所得を国内源泉所得としている。但し、ソース・ルールが租税条約の定めと異なる場合は租税条約が優先されることになる。
次に、非居住者および外国法人に対する課税は、国内源泉所得の所得種類およびその発生の形態に応じて区分されている。
支店工場など恒久的施設を有する非居住者及び外国法人は、居住者および内国法人の場合に準じて全ての国内源泉所得が課税対象となる(所得税法164条1項1号、法人税法141条1号)。
次に国内で建設作業などを1年を超えて行う場合、代理人等をおく場合は、建設作業等ないし代理人を通じて行う事業に帰せられる所得に関して、恒久施設を有する場合に準じて課税される(所得税法164条法人税法141条)。
これに対して非居住者ないし外国法人が恒久的施設を有しない場合は、その国内源泉所得に対して源泉徴収による所得税が課される(所得税法169条170条178条179条212条213条)。
但し、我が国の国内法による課税方法は、租税条約によって修正される場合がある。例えば、恒久的施設を有する場合、国内法においては全ての国内源泉所得が課税の対象となるが、租税条約上恒久的施設に帰属する国内源泉所得についてのみ居住者又は内国法人に準じて課税を行うこととしている。

2.国際的租税回避に対する国際租税法



1.タックス・ヘイブン対策税制について

租税法 金子宏 313頁
タックス・ヘイブンの意義

法人の所得に対する税負担がゼロ或いは極端に低い国(スイス・香港・バーミューダなど)の こと

タックス・ヘイブンによる国際的租税回避

タックス・ヘイブンに子会社(tax haven corporation,or base company)を設立し、それを通じて 国際的租税回避を図ること
全世界所得課税主義のもとにおいて、支店を設けて事業活動を行った場合、支店の所得は課税 対象となるが、子会社の所得は親会社に配当がない限り自国の課税対象にはならないという制 度を利用したもの

事例

タックス・ヘイブン国に子会社を設け、特許権を現物出資し、その子会社が外国の企業にその 使用を認めることにした場合、その子会社が利益を内部留保すれば、高い税負担を回避するこ とが可能

我が国のタックス・ヘイブン対策税制

外国関係会社のうち特定外国子会社について、その留保金額のうち我が国の居住者または内国法人である株主の持分数に対応する部分をそれらの者の所得ないし益金に算入して我が国の所得税・法人税を課税する(租税特別措置法40条の4)

外国関係会社

我が国の居住者および内国法人があわせて50%以上の株式を直接・間接に所有している外国 法人

特定外国子会社

本店又は主たる事務所の存在する国または地域において所得に対して課される税の負担が著し く低いもの
著しく低いとは、法人税がない、もしくは実効税率が25%以下であることをいう(租税特例 法施行令39条の14第1項)。


タックス・ヘイブン対策税制の趣旨

タックス・ヘイブン・コーポレーションの留保利益を株主に配当したものとみなして課税し、租税回避の手段としてのタックス・ヘイブン・コーポレーションの機能を実質的に減殺する個別的否認規定である

2.移転価格税制について

租税法 金子宏 305頁 税法入門 149頁
移転価格税制の意義

国家の課税権の適切な調整の観点から、通常設定される対価とは異なる対価で国際取引上取引をなした場合、正常対価で取引がなされたと仮定した場合の各企業の適正所得に対して行う課税

移転価格(transfer-pricing)の問題

親子会社・兄弟会社等の関連企業において、相互に独立した当事者の取引(独立当事者間取引)において通常設定される対価とは異なる対価で国際取引上取引を行った場合、各企業の所得は適正所得と異なることになる。

アメリカにおける移転価格税制

「法人格を有するかどうか、アメリカ合衆国において設立されたものであるかどうか、連結申告をする要件を満たしているかどうかを問わず、同一の利害関係者によって直接・間接に所有され又は支配されている2つ以上の組織・営業または事業のいずれに対しても、財務長官またはその代理人は、脱税を防止し、あるいはそれらの組織・営業または事業の所得を正確に算定するためにそれが必要であると認める場合には、それらの間に、総所得、経費控除、税額控除その他の控除を配分し、割り当て、または振り返ることができる」(内国歳入法典482条)

内国歳入法典482条の適用事例

親会社が子会社に独立当事者価格を超える価格またはそれを下回る価格で資産を譲渡したよ うな場合、独立当事者価格で譲渡が行われたものとして、親会社の所得を計算することがで きる(対応的調整)。

日本における移転価格税制

国際取引に限り、しかも法人間の取引に限って移転価格税制を導入(租税特別措置法66条の4)

趣旨

我が国の法人が国外関連者との間で国外関連取引を行った場合、その法人がその国外関連者に支払を受ける対価の額が独立企業間取引に満たないとき、または対価の額が独立企業間取引価格を超えるとき、その法人の所得の計算においてその取引は独立企業間取引で行われたものとみなす(租税特別措置法66条の4第1項)。

国外関連者
一方の企業が他方の法人の50%以上を直接・間接に所有する関係その他政令で定める関係 (租税特別措置法66条の4第1項租税特別措置法施行令39条の12)

国外関連取引
国外関連者との間で行った資産の販売・資産の購入・役務の提供その他取引

独立企業間価格の計算

独立価格比準法
特殊の関係のない売り手と買い手の間で同様の資産を同様の状況の下で売買した場合の対 価を基準とする

再販価格基準法
国外関連取引における資産の買い手が特殊の関係のないものに資産を販売した場合の対価 から通常の利潤の額を控除して対価の金額とする方法

原価基準法
国外関連取引における資産の売り手の取得原価の額に通常の利潤を加算して計算

国外関連者に対する寄付金の取扱

独立企業間価格で取引がなされ、当該国外関連者に寄付を行った場合もしくは、独立企業 間価格で取引がなされたとみなされた場合において当該国外関連者に寄付を行った場合に、 当該国外関連者になされた寄付金の額が損金に算入されると独立企業間価格と異なる対価 で取引を行ったと同じ事となるため、国外関連者に対する寄付金は法人の所得の計算上損 金に算入されない(租税特別措置法66条の4第3項)。

寄付金には、当該国外関連取引における実際の取引価格と独立企業間価格の差額が寄付金 にあたる場合を含む。

移転価格税制を採用した場合の実際の取引価格と独立企業間価格の差額の取扱

マイナスが生じても損金に算入されない(租税特別措置法66条の4第4項)。

事例
広告・宣伝の目的で低額譲渡を行った場合は実際の取引価格が独立企業間価格にあたると 解すべき

移転価格税制による国際二重課税に対する対応

相手国との協議による合意に従って、国内的な措置として「対応的調整」が行われる

3.過少資本税制について

租税法 金子宏 311頁 
過少資本(thin captalization)の問題

法人所得の計算上、支払利子は損金として控除されるが、配当は控除できないため法人は 株主から必要な資金を調達するにあたって出資ないし増資をできるだけ少なくし、借入を 多くすることによって法人税の負担を減少させること。

アメリカ・ドイツの対応
国内法上の措置として、一定の場合に法人の株主からの借入を出資とみなしてそれに係る 支払利子は損金に算入できない

国際取引における過少資本の問題

過少資本税制

外国の親会社から借入の形態で資金を調達し、所得の金額を減少させる国際的租税回避に 対する対処するため、一定の要件の元に一定の範囲で自国の法人が外国の親会社に支払う 借入金利子の損金算入を認めないことにしている。

我が国における過少資本税制

国際取引に限り過少資本税制を導入(租税特別措置法66条の5)
国外支配株主等の資本持分に対する国外支配株主等に対する利付負債の平均残高の倍率 (借入・資本比率)が3倍を超えている場合、国外支配株主等に支払う負債の利子その他 の額の内その超える部分に対応する金額は損金に算入しない(租税特別措置法66条の5)。

但し、当該法人の自己資本の額に対する利付き負債総額の平均残高の倍率が3倍相当額以 下である場合はその限りではない。
類似法人の借入・資本比率に照らし、妥当な比率を用いることができる。
外国法人の我が国所在の支店に対しても一定の要件下にこの制度が適用可

国外支配株主等
我が国の法人と50%以上の出資その他特別の関係にある外国法人


4.親子会社間取引の課税上の問題点について論じなさい。

親会社とは、他の会社の発行済株式の総数の過半数にあたる株式を保有もしくは50%以上の出資その他特別の関係を有する会社であり、当該会社との関係を親子会社という。
親子会社は、その特別の関係に基づいた企業取引をなすことによって、租税回避や仮装取引行為をなす場合がある。例えば、相互に独立した当事者の取引において通常設定される対価とは異なる対価で取引を行った場合、通常設定される対価で取引を行った場合に比較して、各企業の所得は適正ではなくなる。また、子会社が資金を調達する場合、親会社から借入金の形で資金を調達すれば借入金利子が損金算入されることによって所得の金額を軽減することが可能となる。タックス・ヘイブン国に実体のない子会社を設立し、利益を内部留保することによって税負担を回避することも可能である。
このような親子会社間の特別の関係をもととした行為に対処するため、特に国際取引において数種の規制が存する。
まず、我が国の法人が国外関連者との間で国外関連取引を行った場合、その法人がその国外関連者に支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たない場合もしくは独立企業間価格を超える場合、その法人の所得の計算においてその取引は独立企業間取引で行われたものとみなされる(租税特別措置法66条の4第1項)。国外関連者とは、一方の企業が他方の法人の50%以上を直接・間接に所有する関係その他政令で定める関係であり、国外関連取引とは国外関連者との間で行った資産の販売・購入・役務の提供その他の取引である(租税特別措置法66条の4第一項)。
これは移転価格税制と呼ばれ、国家の課税権の適切な調整の観点から、通常設定される対価とは異なる対価で国際取引上取引をなした場合、正常対価で取引がなされたと仮定して各企業の適正所得に対して行う課税であり、親子会社が独立当事者間取引において通常設定される対価とは異なる対価で取引を行う場合において各企業の適正な所得が異なるという移転価格の問題に対応したものである。また、移転価格の計算方法は、独立価格比準法、再販価格基準法、原価基準法がある。
しかし、独立企業間価格で取引がなされ、もしくは独立企業間価格で取引がなされたとみなされた場合においても、当該国外関連者に寄付を行った場合にその寄付金額が損金に算入されると、独立企業間価格と異なる対価で取引したと同じ効果があるので、国外関連者に対する寄付金は法人の所得の計算上損金に算入しない(租税特別措置法66条の4第3項)。
次に、国外支配株主等に対する利付負債の平均残高に対する国外支配株主等の資本持分(借入資本比率)が3倍を超えている場合、国外支配株主等に支払う負債の利子その他の額の内その超える部分に対応する金額は損金に算入されない(租税特別措置法66条の5)。ここにおいて国外支配株主等とは、我が国内国法人との間に発行済株式の総数又は出資金額の50%を声得る株式の数または出資をする外国法人である(租税特別措置法66条の5第3項)
これは、過少資本税制と呼ばれ、資金調達にあたって出資ないし増資を少なく旨できる限り外国の親会社から借入の形式で資金を調達し、借入金利子を損金に算入することによって法人税の負担を減少させる過少資本の問題に対応したものである。
最後に、外国関係会社のうち特定外国子会社について、その留保金額のうち我が国の居住者又は内国法人である株主の持分に対応する部分をそれらの者の所得ないし益金に算入して所得税・法人税を課税する規定がある(租税特別措置法40条の4)。ここにおいて外国関係会社とは、我が国の居住者および内国法人があわせて50%以上の株式を直接・間接に所有している外国法人であり、特定外国子会社とは、本店又は主たる事業所の存する国又は地域において所得に対して課される税の負担が著しく低いものをいう(租税特別措置法40条の4)。
これはタックス・ヘイブン対策税制と呼ばれ、法人の所得に対する税負担が著しく低い国又は地域に子会社を設け、その子会社に利益を内部留保するなどの手段を用いて国際的租税回避を図る行為を回避するために、タックス・ヘイブン・コーポレーションの留保利益を株主に配当したものとみなして課税するものである。
但し、真正の事業活動を行っている特定外国子会社の場合にはこの規定は適用されない。

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