監査基準委員会報告書第6号(中間報告)「監査計画」
(平成8年3月26日)



目次

* 1 本報告書の目的
* 3 監査計画の意義
* 5 監査計画の立案
* 6 監査の基本的な方針の立案
* 7 内部統制の検証計画の立案
* 8 取引記録及び財務諸表項目の監査手続の立案
* 9 監査計画の立案時期
* 10 監査計画の修正
* 11 監査計画の文書化
* 12 発効及び適用



本報告書の目的

1  本報告書は、監査計画に関する実務上の指針を提供するものであ
る。

2  本報告書における監査計画は、継続監査を前提としている。初年
度監査においても以下に規定する事項に基づき監査計画を立案する
ことは同じであるが、初めて監査が実施される点から、その立案は
特に慎重に行う必要がある。

監査計画の意義

3  監査計画とは、財務諸表の重要な虚偽記載を看過することなく、
監査を組織的、効果的かつ効率的に実施するために、監査の基本的
な方針を策定し、適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範
囲を決定することである。監査計画には、内部統制に依拠して監査
を進めるか否かの決定並びに内部統制に依拠して監査を実施する場
合には、内部統制の検証手続、その実施時期及び検証の範囲の決定
が含まれる。監査計画は監査日程や監査手続の全体を体系的に立案
するものであり、監査の進捗状況の把握、監査手続の重複や脱漏の
防止など、監査の実施過程の適切な管理に役立ち、監査の有効性と
効率性を高めるために必要不可欠なものである。

4  監査の実施に当たっては、監査上の危険性と重要性を十分に考慮
し、監査手続上の危険の程度に応じて取引記録及び財務諸表項目に
ついて適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範囲を決定す
ることが必要であり、周到な監査計画の立案が不可欠である。なお
、監査上の危険性と重要性に関する具体的指針は、既に公表した監
査基準委員会報告書第5号(中間報告)「監査上の危険性と重要性
」で明らかにされている。

監査計画の立案

5  監査計画の立案は、次の項目から構成される。

(1) 監査の基本的な方針

 財務諸表に重要な虚偽記載が含まれていないという合理的な
基礎を得るために、どのように効果的かつ効率的な監査を進め
るかについて基本的な方針を立案する。基本的な方針の立案に
は、事業内容の把握と取引記録及び財務諸表項目の監査要点ご
との固有の危険の程度を評価することが含まれる。また、内部
統制の状況の把握とそれに基づく内部統制の有効性の予備的評
価を実施し、内部統制に依拠して監査を進めることができるか
否かを決定することも含まれる。

(2) 内部統制の検証計画

 内部統制に依拠して監査を進めると決定した場合、内部統制
組織の整備と運用状況の検証計画を立案する。内部統制の検証
計画には、コンピュータによる情報システムの全般統制及び業
務処理統制の検証計画が含まれる。立案に当たっては、取引記
録及び財務諸表項目の監査要点別に内部統制を評価する検証手
続、その実施時期及び検証の範囲を決定し、内部統制の検証手
続書を作成する。

(3) 取引記録及び財務諸表項目の監査手続

 固有の危険及び内部統制上の危険の程度によって取引記録及
び財務諸表項目に重要な虚偽記載がないことを確かめるために
どのような監査手続を選択し、いつ、どの範囲で実施するかを
立案し、監査手続書を作成する。

監査の基本的な方針の立案

6  監査の基本的な方針を立案するに当たっては、次の事項を実施す
る。

(1) 固有の危険の程度の評価

 固有の危険の程度を評価するために会社の事業内容を把握す
る。

 会社の事業内容の把握のために、株主構成及び経営組織、事
業目的、営業の目的、財務状況、人的資源、会計方針等を調査
する。金利、為替相場、商品市況等の動向、政府の政策、税法
等、会社をとりまく外部経営環境についても調査する。

 さらに、固有の危険の程度の評価においては、特定の取引記
録及び財務諸表項目が本来有している特性を理解することも必
要である。

 重要な虚偽記載の要因となる固有の危険の存在を示唆するよ
うな異常値を識別するために、分析的手続を実施する。分析的
手続によって、会社の財務数値の変化に係る理解を得ることに
より固有の危険の程度が高い取引記録及び財務諸表項目を織別
することができる。

(2) 虚偽記載の重要性の基準値の暫定的決定及び監査上の危険性の
評価

 財務諸表において重要であると判断される虚偽記載の金額を
重要性の基準値として決定する。監査計画立案段階における重
要性の基準値の決定においては、専ら量的側面が考慮される。
しかし、監査の実施過程において金額的には重要ではないが、
質的側面から検討を要する虚偽記載が発見された場合には、監
査計画の見直しを検討する必要がある。この重要性の基準値は
、必要にして十分な監査証拠を入手するための試査の範囲を決
定するに当たり重要な要素である。

 監査計画立案段階で決定される重要性の基準値は、監査意見
形成に係る重要性と密接な関係にあるが、監査計画立案段階で
基礎とした財務諸表数値と当該事業年度の財務諸表数値の実績
との間に乖離が生じる場合がある等の理由により必ずしも同一
ではない。

 暫定的に決定された虚偽記載の重要性に基づいて監査上の危
険性が評価され、その一定の水準が決定される。

(3) 内部統制の有効性の予備的評価

 監査計画の立案段階において内部統制の状況把握とその有効
性の予備的評価を行うに当たっては、内部統制組織の整備と運
用状況のみならず、それに影響を与える経営環境の把握を行う
。内部統制組織の整備と運用状況の把握は、コンピュータの利
用状況を含めて主要な取引の会計処理過程と関連させて実施さ
れる。内部統制に依拠して監査を進めるか否かは、取引記録及
び財務諸表項目ごと又は監査要点ごとの固有の危険の程度の評
価や内部統制の有効性の予備的評価の結果及び監査の効率性を
勘案して決定される。内部統制上の危険の程度が高く、内部統
制に依拠することができないと判断した場合や、取引記録及び
財務諸表項目の特性を考慮して内部統制に依拠することが効率
的でないと判断した場合には、内部統制の検証を実施せず、取
引記録及び財務諸表項目の監査手続のみが実施される。

内部統制の検証計画の立案

7  監査の基本的な方針の立案段階において実施された内部統制の有
効性の予備的評価の結果、依拠できると決定した場合にはその内部
統制組織の整備と運用状況の検証計画を立案する。検証計画には、
検証対象とする取引サイクルごと又は業務ごとの監査要点、検証す
る統制手続、実施する質問、閲覧、視察等の検証手続、検証時期及
び検証範囲の決定が含まれる。

取引記録及び財務諸表項目の監査手続の立案

8  取引記録及び財務諸表項目の監査手続の立案に当たっては、次の
事項を実施する。

(1) 監査手続上の危険の程度の決定

 適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範囲は、監査
手続上の危険の程度によって異なる。監査手続上の危険の程度
は、予め監査人が設定した監査上の危険性の一定の水準と監査
人が評価した固有の危険及び内部統制上の危険の程度との相互
の関係によって左右される。監査人は、監査計画立案段階にお
いて、監査基準委員会報告書第5号(中間報告)「監査上の危
険性と重要性」により監査手続上の危険の程度の水準を決定す
る。

(2) 監査手続、実施時期及び試査の範囲の決定

 監査人は、監査手続上の危険の水準の程度に基づいて取引記
録及び財務諸表項目に適用すべき監査手続、その実施時期及び
試査の範囲を決定する。

 監査手続上の危険の程度をより低い水準に抑えるためには、
通常、より強い証拠力を有する監査証拠を得るための監査手続
及びその実施時期の選択、又は試査の範囲の拡大等の対応が必
要となり、監査計画に適切に反映する必要がある。

 監査手続としては、実査、立会、確認、質問、視察、閲覧、
証憑突合、帳簿突合、計算突合、勘定分析、分析的手続等があ
る。取引記録及び財務諸表項目の監査手続の立案に当たっては
、これらの監査手続の中から監査手続上の危険の程度に応じて
特定の取引記録及び財務諸表項目や監査要点について効果的か
つ効率的な監査手続を選択適用する。

 取引記録及び財務諸表項目の監査手続の実施時期の決定に当
たっては、監査手続上の危険の程度のほかに次の項目を考慮し
て決定する。

* 監査対象の取引記録又は財務諸表項目の内容
* 全体的監査日程
* 期中で監査手続を実施することの効率性

 期中に取引記録及び財務諸表項目の監査手続を実施した場合
は、期中の結論を貸借対照表日で確認するための監査手続を実
施する必要があるが、効率性から分析的手続が有効な手続とな
ることが多い。

(3) 実施計画の決定

 適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範囲の決定を
受けて、監査従事者の要員計画、場所別往査計画、時間配分計
画、日程計画等の実施計画が立案される。これらの計画は、監
査の基本的な方針の立案段階から概要が立案されるが、取引記
録及び財務諸表項目の監査手続の立案時までに作成される。

監査計画の立案時期

9  監査計画は、監査の基本的な方針については、監査の最も初期の
段階で立案され、内部統制の検証計画と取引記録及び財務諸表項目
の監査手続の計画については、内部統制の検証手続並びに取引記録
及び財務諸表項目の監査手続の実施に先だって各々立案される。

 また、監査計画は監査の進捗に応じて必要により継続的に見直さ
れ、修正される必要がある。

監査計画の修正

10  監査人は、当初の監査計画に基づいた監査の実施過程において発
見された虚偽記載の疑いのある事項を検討した結果、財務諸表の重
要な虚偽記載を看過する危険性が高いと判断した場合には、監査上
の危険性を一定水準以下に抑えるように適時に監査計画を修正しな
ければならない。

 また、監査人は、当初決定した虚偽記載の重要性の基準値を変更
した場合、経営環境の変化等により固有の危険の程度の評価を変更
した場合及び内部統制組織が変更されたこと等により内部統制上の
危険の程度の評価を変更した場合にも、その変更が監査上の危険性
の水準に及ぼす影響を考慮し、監査計画の見直しの必要性を検討し
なければならない。

監査計画の文書化

11  監査計画は、監査計画書として文書化される必要がある。

 監査計画書には、監査の基本的な方針、内部統制の検証計画並び
に取引記録及び財務諸表項目の監査手続についてその概要を記載す
る。

 また、監査従事者に具体的な監査の実施手続を指示するものとす
るために、内部統制の検証計画は、検証手続書として、取引記録及
び財務諸表項目の監査手続は、監査手続書として文書化される必要
がある。

発効及び適用

12  本報告書は、平成8年3月26日に発効し、平成8年4月1日以
後開始する事業年度に係る監査から適用する。


Home index

[PR]話題の新車を無料プレゼント中:必ず当る抽選会!今すぐ応募で簡単GET