
監査基準委員会報告書第4号(中間報告)「内部統制」
(平成6年3月23日)
目次
1 本報告書の目的
2 内部統制の目的
4 内部統制の有効性の水準
5 内部統制組織と内部経営環境
8 内部統制の有効性の評価過程
10 経営環境の把握
13 内部統制組織の整備及び運用状況の把握
16 内部統制の状況に関する監査調書の作成
17 内部統制の有効性の予備的評価
21 内部統制組織の整備及び運用状況の検証計画の立案とその実施
28 内部統制の有効性の評価結果の検討
31 内部統制の有効性の評価結果に関する監査調書の作成
32 取引記録及び財務諸表項目について適用すべき監査手続、その実施時期及
び試査の範囲の決定
34 発効及び適用
35 付記
本報告書の目的
1 監査基準「第二 実施基準三」は、「監査人は、内部統制の状況
を把握し、監査対象の重要性、監査上の危険性その他の諸要素を十
分に考慮して、適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範囲
を決定しなければならない。」とし、また、監査実施準則五は、「
監査人は、監査計画の設定に当たり、財務諸表の重要な虚偽記載を
看過することなく、かつ、監査を効率的に実施する観点から、内部
統制の状況を把握するとともにその有効性を評価し、監査上の危険
性を十分に考慮しなければならない。」と定めている。さらに、「
内部統制の有効性を評価するに当たっては、内部統制組織の整備と
運用の状況のみならず、それに影響を与える経営環境の把握と評価
を行わなければならない。」ことを規定している。
本報告書は、実施基準及び監査実施準則で規定している内部統制
について、監査人が実施する内部統制の状況の把握とその有効性の
評価に関する実務上の指針を提供するものである。
内部統制の目的
2 内部統制の目的は、適正な財務諸表を作成し、法規の遵守を図り
、会社の資産を保全し、会社の事業活動を効率的に遂行することに
ある。
3 内部統制は、上記の目的を達成するために経営者が自ら設定する
ものであるため、内部統制の確立と維持の責任は経営者にある。経
営者は、内部統制が有効であるかどうかについてこれを継続的に監
視する立場にある。
内部統制の有効性の水準
4 内部統制の有効性の水準をどの程度におくかは経営者の判断に委
ねられており、経営者は、通常、内部統制組織の整備及び運用に伴
う費用とそれから得られる効果とを勘案してその水準を決定する。
内部統制組織と内部経営環境
5 内部統制は、経営者が経営管理全般を対象として構築するもので
あり、内部統制組織とそれに影響を与える内部経営環境から構成さ
れる。このうち監査上対象とされる内部統制とは、適正な財務諸表
の作成に関連する部分である。本報告書は、監査上対象とされる内
部統制を取り扱う。
6 内部統制組織は、適正な財務諸表を作成するために、内部牽制の
考え方を基礎として、組織と統制手続とが相互に結び付き一体とな
って機能する仕組みであり、通常、内部監査もこれに含まれる。統
制手続とは、会社の業務を実施するに当たっての承認制度、業務相
互間の照合手続、査閲、記録の重複や脱漏を防止するための連番管
理などをいい、この統制手続には、他の統制手続が効率的にかつ継
続的に実施されているかどうかを監視する手続も含まれる。
適正な財務諸表の作成に関連する内部統制組織とは、会計取引の
認識、測定、集計、記録及び報告について経営者がこれらの正確性
と網羅性を保持するために設定した仕組みであり、この仕組みには
資産の保全及び負債の管理に関わるものも一部含まれる。
7 内部経営環境とは、経営者の経営理念及び経営方針、取締役会や
監査役の有する機能、社風や慣行など内部統制組織に影響を与える
会社内部の要因をいう。
内部統制の有効性の評価過程
8 内部統制の有効性の評価とは、内部統制によって取引記録及び財
務諸表項目の重要な虚偽記載をどの程度防止又は発見できるかを判
定し、その結果、監査人が内部統制組織に依拠した監査が実施でき
るかどうか又はどの程度依拠するかを決定することである。
内部統制の有効性の評価の過程は、一般的に次のとおりである。
(1) 内部統制の状況の把握とその有効性の予備的評価
* 経営環境の把握
* 内部統制組織の整備及び運用状況の把握
* 内部統制の状況に関する監査調書の作成
* 内部統制の有効性の予備的評価
(2) 内部統制組織の整備及び運用状況の検証計画の立案とその
実施
(3) 内部統制の有効性の評価
* 内部統制の有効性の評価結果の検討
* 内部統制の有効性の評価結果に関する監査調書の作成
(4) 取引記録及び財務諸表項目について適用すべき監査手続、
その実施時期及び試査の範囲の決定
9 監査人の観点からは、内部統制には次のような問題点があるので
、内部統制の有効性の評価に際して十分に留意しなければならない
。
* 担当者の判断の失敗又は不注意により誤謬又は脱漏が生じ
ること
* 内部統制組織を設定した当初は想定していない取引が生じ
ること
* 担当者の共謀が起こり得ること
* 経営者自身が内部統制組織の機能を無効ならしめること
経営環境の把握
10 内部統制の状況の把握の目的は、内部統制組織に依拠した監査が
実施できるかどうか又はどの程度依拠するかの決定に必要な情報及
び資料を入手し、内部統制の有効性の予備的評価を可能にすること
である。
監査人は、内部統制の状況の把握を行うに当たっては、内部統制
組織の整備及び運用状況のみならず、その整備及び運用に影響を与
える経営環境の把握も併せて行わなければならない。経営環境の把
握を行う場合には、経営環境のそれぞれの要因が内部統制組織の整
備及び運用に影響を与えることにより、これに関連する取引記録及
び財務諸表項目に対して具体的にどのような結果をもたらすかを検
討しなければならない。
11 内部経営環境の要因を把握する場合には、次の点に留意する必要
がある。
* 経営者の経営理念や経営方針などの内部経営環境は、通常
、内部統制組織の整備及び運用に重要な影響を与えるため、
監査人は、これらの要因が内部統制組織に対して具体的にど
のような影響を与えるか、また、その結果、どのような取引
記録及び財務諸表項目に対してどのような影響を与えるかを
検討することが必要である。
* 取締役会は意志決定機能や監視機能を通して、また、監査
役は監視機能を通して、内部統制組織の整備及び運用に重要
な影響を与えることがあるため、監査人は取締役会や監査役
が果たしている機能を十分に把握することが必要である。
* 内部統制組織の整備及び運用は、従業員の誠実性と能力に
負うところが大きいので、監査人は、会社が従業員の誠実性
の確保と能力向上にどのような施策を講じているかを十分に
把握することが必要である。
12 外部経営環境は、経営理念や経営方針及び取締役会等の機能を通
して、内部統制組織の整備及び運用に影響を与えるので、それを把
握する必要がある。この場合には、次のような点に留意する必要が
ある。
* 業界を取り巻く経済情勢や景気動向、法令の規制等は、会
社が採択する諸施策と関連して内部統制組織の整備及び運用
に重要な影響を与えることがあるため、監査人はこれらの点
を十分に理解することが必要である。
* 監督官庁による行政監査は、これに対応するための経営者
の姿勢や取締役会等の機能に関連して内部統制組織の整備及
び運用に重要な影響を与える場合もあるため、監査人は行政
監査の目的等を十分に把握することが必要である。
内部統制組織の整備及び運用状況の把握
13 監査人は、内部統制組織の整備及び運用状況の把握を行う場合に
は、会社の事業内容を十分に理解した上で、内部統制組織に関する
資料を入手し、必要に応じて担当者への質問、関係書類の閲覧又は
業務の視察を実施する。具体的には、まず、組織図、権限規定、職
務分掌規定、人員配置表等を入手して、会社の組織及び担当部署の
職務等の概要を把握するとともに、経理規定等を入手して閲覧し、
また、帳簿体系や会社が採用する会計処理方法を質問することによ
って会計処理過程の概要を把握する。次に、会計処理過程と関連さ
せて内部統制組織の機能を把握するが、その把握に当たっては、販
売取引、購買取引、出納取引など主要な取引サイクルごとに実施す
る。また、取引サイクルを業務ごとに分けて実施することが合理的
な場合もある。この場合、例えば、販売取引においては、受注、出
荷、売上計上、請求及び代金回収などの業務区分ごとに実施する。
さらに、内部監査の実施状況についても資料を入手し、内部監査の
有効性を把握する必要がある。
これらの把握に当たっては、内部統制組織が有する機能を取引記
録及び財務諸表項目の監査要点と関連付けながら、以下の手続を実
施する。
* 内部統制質問書、内部統制に関するチェックリスト及び業
務のフローチャート等を活用し、必要に応じて担当者への質
問や業務の視察を実施する。
* 諸規程や業務実施手続、承認制度等を検討し、取引の開始
から財務諸表の作成に至るまでの間における会計記録の正確
性と網羅性が、内部統制組織によってどの程度保証されてい
るかを把握する。
14 継続監査の場合においては、前年度に実施した内部統制の状況の
検討結果を活用することができるため、前年度の検討結果をもとに
、会社の担当者への質問等により内部統制組織に重要な変更がない
ことを確かめることで足りる。内部統制組織に重要な変更が生じた
場合には、当該変更部分については改めて把握を行う必要がある。
なお、経営環境については、会社のおかれている状況が年度ごとに
異なるため毎年度その把握を行うことが必要である。
15 会計処理の過程がコンピュータによる情報システムに依存してい
る場合には、コンピュータによる情報システムの内部統制の状況の
把握が必要となる。把握の方法はコンピュータに依存していない内
部統制の場合と基本的に異なることはないが、コンピュータによる
情報システムの業務処理ごとの内部統制とその機能を間接的に保証
する全般的な統制を把握し考慮する必要がある。
内部統制の状況に関する監査調書の作成
16 監査人は、監査計画立案の資料とするために、把握した内部統制
の状況について監査調書を作成することが必要である。当該監査調
書には、内部統制の状況の把握に際して活用した内部統制質問書、
内部統制に関するチェックリスト及び業務のフローチャート等を含
める。
内部統制の有効性の予備的評価
17 監査人は、内部統制の状況を把握した後に、内部統制組織の整備
及び運用状況の検証計画の立案のため、内部統制の有効性の予備的
評価を行わなければならない。内部統制の有効性の予備的評価にお
いては、主要な取引サイクルに区分された取引記録及び財務諸表項
目の監査要点ごとにこれに関連する内部統制組織にどの程度依拠す
るかを決定する。監査人は、それぞれの監査要点を内部統制組織と
関連付け、これらの内部統制組織が有効に機能しているかどうかを
確かめることにより、監査要点ごとに内部統制組織に依拠できる程
度を判定する。販売取引を例にとれば、売上伝票に記載されている
売上はすべて出荷の事実があるという監査要点に関連する内部統制
組織が1つ又は複数存在し、これらが十分有効に機能していると評
価した場合には、売上の実在性という監査要点については、これに
関連する内部統制組織に依拠できる程度は高いと判断することにな
る。また、すべての売上が売上伝票に記載されているという他の監
査要点に関連する内部統制組織が1つ又は複数存在し、これがある
程度有効に機能していると評価した場合には、売上の網羅性という
監査要点については、これに関連する内部統制組織にその程度に応
じて依拠できると判断することになる。さらに、売上の期間帰属の
適正性という別の監査要点に関連する内部統制組織も1つ又は複数
存在するが、これらが有効に機能していないと評価した場合には、
期間帰属の適正性については、これに関連する内部統制組織に依拠
できないと判断することになる。
18 特定の監査要点に関連する内部統制組織にどの程度依拠するかと
いう依拠の程度は、相対的なものであり、画一的な尺度を設けるこ
とはできない。したがって、依拠する程度がどの程度であるかは、
監査人の専門的判断に委ねられる事項である。
19 予備的評価は、取引記録及び財務諸表項目の各監査要点ごとに行
われることになるが、実務上は、このような前提を考慮した上で、
販売、購買、出納などの主要な取引サイクルごと又は取引サイクル
の業務ごとに総合的に評価することも可能である。
20 予備的評価の対象は、主として内部統制組織の機能の有効性であ
る。経営環境については、これを直接的に評価の対象とするのでは
なく、これが内部統制組織の整備及び運用にどのような影響を与え
るかという観点から検討されるべきものである。したがって、経営
環境は、内部統制組織を対象として予備的評価を行う際に、内部統
制組織の整備及び運用に与える影響要因として考慮することになる
。
内部統制組織の整備及び運用状況の検証計画の立案とその実施
21 内部統制の有効性の予備的評価の結果に基づいて、監査人は、内
部統制組織の整備及び運用状況の検証計画を立案しなければならな
い。検証計画の立案に当たって検証の対象とする内部統制組織は、
監査人が予備的評価において依拠できると決定した内部統制組織に
限られる。
22 内部統制の有効性の予備的評価において、特定の監査要点につい
て内部統制組織に依拠できると決定した場合、当該監査要点に関連
する内部統制組織が複数存在するときには、このうちその機能が最
も効果的であると判断される内部統制組織を選択し、これを検証の
対象とすることが効率的である。例えば、ある会社の売掛金計上の
実在性に関連する内部統制組織として、第一に「売掛金の計上は、
出荷の事実と照合した記録のある出荷報告書に基づいて行う」とい
う統制手続が存在し、第二に「売掛金の計上に際しては、注文請書
の写しと照合する」という統制手続が存在し、また、第三に「毎月
末、得意先元帳に記載されている金額を得意先との間で照合し、そ
の後、得意先元帳の金額欄に照合印を捺印する」という統制手続が
存在していると仮定する。この場合において、売掛金計上の実在性
に関連する内部統制組織の有効性の検証手続を実施する対象は、上
記3つのすべての統制手続ではなく、このうち最も効果的と監査人
が判断した統制手続を選択することになる。
ただし、それぞれの内部統制組織の機能が単独では十分に発揮さ
れないと判断した場合には、上記の2つないし3つの統制手続につ
いて検証を実施しなければならない場合もある。
また、複数の取引記録及び財務諸表項目の監査要点に共通して、
同時に統制手続の有効性を検証できる場合がある。例えば、上記の
例において、「売掛金の計上は、出荷の事実と照合した記録のある
出荷報告書に基づいて行う」という統制手続を、売掛金計上の網羅
性に関する検証の対象として選択することにより、売上計上の網羅
性についても同時に検証することが可能となる。
したがって、検証の対象とする内部統制組織は、できるだけ多く
の監査要点に共通して検証が可能なものを選択することが、効率性
の観点から望ましい。
23 内部統制組織の整備及び運用状況の検証を実施する目的は、内部
統制組織の有効性を監査人自らが直接検証することによって、内部
統制の有効性の予備的評価の当否を確かめることにある。また、検
証を実施することにより得られた結果に基づいて、取引記録及び財
務諸表項目の監査要点について適用すべき監査手続、その実施時期
及び試査の範囲を決定する。
監査人は、予備的評価の段階で依拠できると決定した内部統制組
織について、主要な取引ごとにその主要な業務を対象として検証手
続を実施するが、具体的には、質問、閲覧、視察、会社の統制手続
を監査人自らが跡付ける方法等の検証手続の中から、状況に応じて
これらを選択して実施する。例えば、主要な取引サイクルとして販
売取引を対象とし、このうち売掛金の計上業務についてその網羅性
が確保されているかどうかを検証する場合には、売掛金の計上業務
を行う責任者等に対し、売掛金の計上がどのような書類に基づいて
行われているかを質問し、また、計上の基礎となっている当該書類
を閲覧して作成状況を吟味し、当該書類の作成担当者に対しては、
当該書類が出荷の事実に基づいて作成されていることを質問等によ
って確かめる。さらに、必要な場合には、出荷から売掛金計上の基
礎となっている書類の作成及び売掛金管理台帳への記入に至る一連
の業務について、会社の担当者が行った手続を監査人自らが跡付け
て確かめるなどの方法により、その整備及び運用状況を検証する。
なお、検証手続の一部が内部統制の状況の把握の段階で既に実施さ
れている場合には、検証手続の重複を避けるため、この実施結果を
活用することができる。
24 内部統制の有効性は、監査対象年度を通して継続的に確保されて
いる必要がある。したがって、監査人は、監査対象年度の途中にお
いて検証手続を実施した場合、実施した時点から事業年度末までの
間に、内部統制組織に重要な変更が行われていないかどうか、また
、その整備及び運用に重要な影響を与える要因が生じていないかど
うかを確かめなければならない。
その結果、重要な変更が行われている場合、又は重要な影響を与
える要因が生じている場合には、当該期間において、内部統制が有
効であるかどうかを確かめるため、変更内容や影響要因を考慮した
上で、再度、内部統制の有効性の予備的評価を行い、これに基づい
た検証計画を立案して検証手続を実施することが必要である。
中間監査を実施している場合において、監査対象年度の上半期に
内部統制の有効性を評価したときは、下半期において内部統制組織
に重要な変更が行われていないことなどを質問等によって確かめる
ことにより、上半期の内部統制の有効性の評価結果を活用すること
ができる。
また、前年度の検証結果から判定すると、内部統制組織が十分に
整備及び運用されている場合には、上半期においては、内部統制組
織の検証手続を実施せず、前年度の検証結果を活用し、下半期にお
いてその検証手続を実施することもできる。
25 継続監査の実務において、内部統制の有効性の評価を行うに当た
り、過去の検証結果から判定すると、内部統制組織が十分に整備及
び運用されており、かつ、取引記録及び財務諸表項目に重要な虚偽
記載の発生の可能性が低いと判断され、内部統制組織に重要な変更
が行われていない場合には、監査要点ごとに関連付けられる内部統
制組織の整備及び運用状況の検証を取引サイクルごと又は業務ごと
に数期間に配分して循環的に実施することができる。しかし、過年
度に実施した内部統制組織の検証結果の信頼性は、時間の経過とと
もに低下していくので、検証計画の立案に当たっては、その点を考
慮する必要がある。
26 内部統制組織の検証手続は、取引記録及び財務諸表項目の監査計
画の立案に資するために実施されるものであるから、本来、取引記
録及び財務諸表項目の監査手続の実施前に実施されるべきものであ
る。しかしながら、監査の効率的な実施の観点から、内部統制組織
の検証手続の計画立案に当たって、その検証手続が取引記録及び財
務諸表項目の監査手続としても利用できるように計画し、検証結果
を内部統制の有効性の評価に用いると同時に、取引記録及び財務諸
表項目に対する監査証拠として利用することもできる。
27 コンピュータによる情報システムによって業務処理が行われてい
る場合には、業務処理の正確性の確保やデータファイル間の整合性
の確保などのコンピュータによる情報システムに組み込まれた機能
を配慮した内部統制組織の検証を実施しなければならない。
コンピュータによる情報システムが、内部統制組織の検証に必要
な情報を出力していない場合や監査証跡が十分でない場合にあって
は、監査人が監査証拠を入手するために、コンピュータ利用監査技
法を用いることが効率的な場合もある。
内部統制の有効性の評価結果の検討
28 内部統制の有効性は、検証手続の実施結果によって決定される。
内部統制組織の整備及び運用状況を検証した結果、内部統制組織が
当初判定したとおりに機能していないことが判明した場合は、その
内容、発生の頻度及び原因等を総合的に勘案して内部統制の有効性
を評価しなければならない。内部統制の有効性の評価結果は、取引
記録及び財務諸表項目について適用する監査手続の計画立案に際し
、取引記録及び財務諸表項目の監査要点と密接に関連する内部統制
組織に依拠する程度を決定する基礎となる。
29 内部統制組織の整備及び運用状況の検証手続を実施した結果、予
備的評価の段階では依拠できると判断した水準を支える検証結果が
得られなかった場合には、予備的評価の段階で判断した結果による
のではなく、検証結果に基づく評価に是正しなければならない。
30 内部統制組織の整備及び運用状況の検証手続を実施した結果、予
備的評価の段階で依拠できると判断した水準を上回る水準で依拠で
きると判断するに足る検証結果が得られる場合があるが、この場合
、このことだけで依拠の程度を高める方向に予備的評価の結果を改
めることはできない。なぜならば、内部統制組織の整備及び運用状
況の検証手続の計画立案は、予備的評価の結果に基づいて策定され
たものであり、予備的評価の結果いかんによって、検証手続の実施
対象として選択する内部統制組織が異なることもあり、また、検証
手続の範囲も異なることがあるからである。監査人が、予備的評価
で依拠できると判断した水準を上回る水準に評価を改めるためには
、予備的評価を再度実施して依拠できる水準を改めた上で、検証計
画を再度立案し、見直し後の検証計画に基づいた検証手続を実施す
るか、又は当初実施した手続に追加して検証手続を実施することが
必要となる。したがって、このような場合に、監査人は、依拠の程
度を改めるために検証計画を見直して、検証手続を再度実施するか
若しくは追加して検証手続を実施するか、又は当初の予備的評価の
結果を踏襲するかのいずれかに決定することになるが、その選択に
当たっては、検証手続に要する費用等を十分に考慮することが必要
である。
内部統制の有効性の評価結果に関する監査調書の作成
31 監査人は、内部統制の有効性の評価結果につき、監査調書を作成
保管しておくことが必要である。監査調書の記述に当たっては、そ
れぞれの取引記録及び財務諸表項目の監査要点との関連が明らかに
なるように配慮しなければならない。
取引記録及び財務諸表項目について適用すべき監査手続、その実施時期
及び試査の範囲の決定
32 監査人は、内部統制の有効性の評価結果に基づき、取引記録及び
財務諸表項目の監査手続の計画立案を行う。内部統制の有効性の評
価結果が高い場合には、相対的に低い場合に比べて、試査の範囲を
狭めることが可能であり、また、適用すべき監査手続又はその実施
時期についても選択の幅が拡がる。
監査人は、取引記録及び財務諸表項目の監査手続に関する監査計
画の立案に当たっては、内部統制の有効性の評価結果に基づき、そ
の評価水準に応じて、監査要点ごとに適用すべき監査手続、その実
施時期及び試査の範囲を決定し、効率的な監査の実施が可能となる
ように配慮しなければならない。
33 特定の監査要点に関連する内部統制組織に依拠しないと判断する
場合には、当該監査要点については取引記録及び財務諸表項目の監
査手続の実施によって重要な虚偽記載が発見できるように、監査計
画の立案を行わなければならない。
発効及び適用
34 本報告書は、平成6年4月1日に発効し、平成6年4月1日以後
開始する事業年度に係る監査から適用する。
付記
35 監査基準「第二 実施基準三」が「監査人は、内部統制の状況を
把握し、監査対象の重要性、監査上の危険性その他の諸要素を十分
に考慮して、適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範囲を
決定しなければならない。」と規定しているとおり、適用すべき監
査手続、その実施時期及び試査の範囲は、内部統制の有効性の評価
結果のみによって決定されるものではなく、種々の要素を勘案して
総合的に決定されるものである。内部統制の有効性の評価結果は、
監査人の監査計画設定に影響を与える一要素である。監査計画の設
定に影響を与える諸要素及びそれらの間の関係は、今後公表する監
査基準委員会報告書で別途明らかにする予定である。
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