
■ 第7講 株式の相互保有 会社法の基礎P88
● 1我が国の企業集団はどのような法構造となっているか。
六大企業集団
旧財閥系三グループ
三井、三菱、住友
銀行系三グループ
富士、三和、第一勧銀
特徴は、各メンバー企業が独立性を保ちつつ社長会を構成して、水平型のムラ構造を形
成している
● 独立系企業集団
六大企業集団に属するが、傘下に加工・部品系列を中心とする垂直型の企業集団
トヨタ自動車、新日本製鐵、松下電器産業
国際語のいう「ケイレツ」は直接的にはこの企業集団を指す場合が多い。
● 企業集団の支配構造
相互持ち合いの目的
安定株主の確保、集団内取引の維持強化
安定株主の確保
経営者支配説に傾斜
集団内取引の維持強化
相互支配説に傾斜
相互持ち合いの理論
経営者支配説
株式の相互持ち合いによって支配力を相互に相殺し合い、結局のところ経営者ないし管理労働者が企業を支配する
株主支配説
相互支配説
社長会が大株主会と同様の機能を果たし、社長相互間の信任関係の存在が相互支配を成立させる。
企業集団ないし系列の形成を説明するための理論であると位置づけられる
● 商法は親子会社をどのように規制しているか
過半数持株支配基準(211条の2第1項)
孫会社も子会社(間接所有の子会社その1)c.f.早4-1 p20
結合会社が過半数以上を支配する場合は結合会社内の支配会社が親会社(間接所有の子会社その2)
親子会社規制の趣旨
自己株取得禁止(211条の2)の規制範囲を拡大するため
監査役の監査権限を拡張強化するため(274条の3)
その意味では商法による親子会社規制は企業集団規制ないし企業結合規制と直接関係しているわけではない
親会社株式の子会社株式による取得禁止
自己株式取得による弊害防止を目的とし、株式相互保有規制(241条3項)とは規制の次元を異にすると考えられる。
監査役の子会社調査権同様、実質的経済的一体性に着目した規制であるから。
親会社監査役の子会社調査権
監査役の兼任禁止(276条)、会計監査人の欠格事由(商特4条2項2号)、取締役議事録の閲覧・謄写の許可(260条の四第5項)、子会社株式の評価(285条の6第2項)などの親子会社規定と同じく技術的
監査の実効性確保に力点
● 株式相互保有規制は企業集団にどのような意味を持つか
取得制限型規制(原始独禁法、19世紀アメリカ会社法、フランス会社法)
資本の空洞化防止を目的
議決権制限型規制(日本)
総会議決権の歪曲化防止
取得制限型規制の採用の困難
先着主義に対する批判
いずれにしても株式の相互持ち合いが資本の空洞化を招き、経済のバブル構造を形
成する一つの原因となっている以上、立法論的には、現在の6大企業集団の株式持ち
合い率を考慮して、1集団20%以下に押さえる方法を検討すべき
2.自己株式取得と株式相互保有の規制についてその相互関連に留意しながら検討しなさい。
参考文献 会社法の基礎p89
p232 類題.株式の相互保有規制と企業集団規制の相互関係につき論ぜよ。
自己株式とは、自分の会社が発行する株式のことであり、法は、会社は原則として自己株式の取得および質権の設定をなすことができないことを定めている(210条、489条2号)。理論上は、自己株式も株式として財産的価値を有するひとつの有価証券であり、会社はこれを取得することは可能であると解するが、取得を認めた場合の弊害が大きいため、政策的に取得を禁止したと解する。その弊害とは@自己株式の取得は株式の発行と逆の経済的効果を与え、実質的に資本の空洞化をもたらすこと、A自己株式を適当に取得することによって株主総会における多数派工作など会社支配の不公正となる危険性があること、B内部情報を利用した投機的取引に利用される恐れがあること、C特定の株主から自己株式を取得することになると株主平等原則に違反することなどである。そして、その中でも特に@資本維持とB支配の公正が重要であると言える。
このような自己株式取得禁止の範囲は、弊害のない場合には及ぶ必要がない。無償で自己株式を取得する場合、会社の名義であっても例えば問屋業をいとなむ証券会社が自己の名前をもって他人の計算で自己株式を取得する場合のように、自己の名前をもってしても、他人の計算によって自己株式を取得する場合には自己株式禁止の範囲に当たらないと解する。また、自己株式の質受け、子会社による親会社株式の取得についても同様の弊害があるので法は同様の趣旨でこれに制限を設けている(210条、211条の2)。また、他人の名義であっても会社の計算において行われる場合同様の弊害があるので範囲に該当すると解する。
次に自己株式取得の例外は法の定める態様に従う。即ち、@株式の消却の場合、A合併、営業全部の譲渡によるとき、B会社の権利の実行に当たりその目的を達成するために必要なとき、C合併、営業譲渡など株主が株式買い取り請求権を行使した場合などである(210条)。そして平成六年改正法により、新たに以下の例外規定がおかれた。まず、全ての株式会社に共通するものとして、使用人に譲渡するための自己株式の取得(210条の2)、および利益による株式の消却をするための定時総会の決議による自己株式の取得(212条の2)が存する。また、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する株式会社(204条1項但書)については、株式の先買権者定請求に応じて会社が先買権者に指定された場合の自己株式の取得(210条5号、204条の3第1項、204条の3の2、204条の5)および、株主の相続人からの自己株式の取得(210条の3)を認めている。しかしこれらの自己株式は早期に処分することが求められる(211条)。
禁止に違反して取得した自己株式についての効力につき、関係者指に刑事罰が科せられるが(489条2号)、取得の私法的効果には争いがあり、株式取引の安全と自己株式取得の弊害とを考慮する必要がある。株式会社は社会に散在する多数の遊休資本を結集する要請から、間接有限責任(200条1項)をとり、会社債権者保護の立場から持ち分の絶対的消滅に当たる退社制度として、投下資本の回収方法を確保することができず、実質的に唯一の投下資本回収方法は、株式の譲渡(204条1項本文)である。従って株主、及び会社の利益保護の観点から株式の取引安全を強く保護する必要があり、違反して取得した自己株式について、会社の名義によって取得される場合は無効であるが、会社の名義以外で取引が行われた場合は有効であると解する(相対的無効説)。また、無効の主張権者は、210条により保護されるのが会社、株主、会社債権者であることから、相手方は無効を主張できないと解する。
そして、争いあるも自己株式取得規制の実質的拡大として、子会社の親会社株式の取得が禁止されている(211条の2)。ここで親会社とはある会社の発行済株式数の過半数の株式を所有する会社であって(211条の2第1項)、子会社とは被支配会社を指す。そして@親会社および子会社の持ち株合計が過半数の場合、A子会社の持ち株が過半数の場合(孫会社)は、当該会社は子会社とみなされる(211条の2第3項)。そして解釈上これら子会社の範囲を曾孫、玄孫等に拡張することができる。
次に、親会社株式の子会社による取得禁止の趣旨は、他方が一方の株式を50%を超えて取得する場合には、後者は前者の株式の取得を禁止されるわけであるから、株式相互保有規制の一環として位置づけるべきであるという説があるが、監査役の子会社調査権(274条の3)は、親子会社の法人格の独立性を前提として、他方ではその実質的経済的一体性に注目した規制を行っているのであり、企業集団規制というよりはむしろ親子会社間の株式の相互保有を禁止するといった側面が強いと考えるべきであり、主として自己株式取得規制の一環であると解すべきである。
次に株式相互保有とは一般に会社間ないし企業集団でお互いの株式を相互に保有することであるとされるが、株式相互保有規制とは、これらの株式相互保有に一定の規制をするものである。本来、支配会社、被支配会社等が相互に株式を取得することは株式譲渡自由の原則(204条1項本文)から考えても許容されるはずである。そして相互保有は安定株主を確保し、企業集団内での取引の維持強化を図ることができるといわれる。しかし、被支配会社は、支配会社の経営者の意思に沿って議決権を行使しなければならなくなり、それによって支配会社が被支配会社を通じて株主総会を支配し、議決権行使を歪曲化することが考えられ、また、支配会社、被支配会社相互で増資をなすことにより、資本の空洞化を生むおそれがある。その他にも、会社間または企業集団における経済的なつながりから、例えば、社長会と呼ばれる企業集団の社長の密室の会合により、我が国の市場の閉鎖性の一つである系列取引が生まれているという国際的な非難があることなど、株式の相互保有には弊害があるため一定の規制がおかれている。
このような株式相互保有の規制類型としては、会社の他会社株式取得を全面的に禁止するといった取得制限型規制と、一定の株式を保有する会社は、被保有会社は保有会社の議決権を行使できないとする議決権制限型規制がある。我が国においては、他の会社の株式数の四分の一を超える株式を保有している会社の議決権を被支配会社が行使してはならないことが定められており(241条3項)、我が国の相互保有規制は議決権制限型規制に属すると言うことができる。そして我が国は相互保有自体は制限していないのであるが、このように取得制限型規制に踏み切れなかった理由として、いわゆる先着主義に対する批判があったことがあげられる。いわゆる先着主義とは、相互持ち合い関係にある会社のいずれか一方が他方の株式の一定数を先に取得すると、後者は前者の株式を取得できないことになるため、これが不合理であるということによる。
このように株式相互保有規制と自己株式取得規制、特に子会社株式による親会社株式の取得禁止は、互いに異なる目的のため設定された規制であるということができる。しかしながら、資本充実・維持の観点を考えてみるならば、両者の規制を接近させることが必要であると考えられる。すなわち、親子会社の決定基準を拡張し、他方、株式の相互保有規制としての議決権制限をさらに拡張することによって、一方では個別企業の体質強化につながり、他方では企業集団規制の適正化につながるものと考えられる。
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